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ラグビー コラム 2025年12月22日

【ハイライト動画あり】リザーブも躍動。東京サントリーサンゴリアスが魅せた「23人の戦い」。ジャパンラグビーリーグワン2025-26第2節

ラグビーレポート by 多羅 正崇
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現代ラグビーは23人でするもの――。

それを一般的に周知させる世界的なトレンドを生み出したのは、「ボム(爆弾)スコッド」でW杯連覇を達成した南アフリカ代表だっただろう。

2019年W杯日本大会。南アフリカ代表は通常より1人多い6人の控えFWを投入し、一気に流れを引き寄せた。

最近“W杯4連覇”を見据えて2031年米国大会まで契約を延長したラシー・エラスマスHCは、その破壊力を誇示するようにこの編成を「ボム・スコッド」と呼んだ。その後6人だった控えFWは7人まで増えた。

そして、5年目のジャパンラグビーリーグワン第2節。「東京サンゴリアス(東京SG)」×「トヨタヴェルブリッツ(トヨタV)」。

開幕白星同士の対決となった一戦で、充実した“23人の戦い”を披露したのは今季初ホストゲームのサンゴリアスだった。指導2季目の小野晃征HCが言った。

「どの選手も『スタートから出たい』という気持ちはあると思うんです。ただ『23人で80分の戦い』と考えたときに、最後にグラウンドに立ってゲームをフィニッシュさせることがいかに大事か」

「先週に引き続き、リザーブにいる8人が点差、時間帯も関係なく自分たちのラグビーを信じ切って、その結果、ラスト20分で28点取ることができたかなと思います」(東京SG、小野晃征HC)

試合の大部分は、お互いの「らしさ」が展開される好勝負だったろう。

ヴェルブリッツは「シンプルにフィジカルを前面に出すことが自分たちらしさ」(NO8姫野和樹主将)だ。

 

ラグビーの根本で真っ向勝負する――。そんな「トヨタらしさ」を徹底する今季ヴェルブリッツは開始6分、まずはキャプテンのNO8姫野主将がスティール成功。前進後にSO松田力也がショット成功。“帝京大学同期コンビ”の活躍もあって3点を先取した。(0-3)

さらにNO8姫野主将が2連続スティール成功。前節も立ち上がりが課題だったサンゴリアスの行く手に、暗雲が立ちこめる。

ジャパンラグビー リーグワン2025-26(12月20日)

【D1 第2節 ハイライト動画】東京サンゴリアス vs. トヨタヴェルブリッツ

「ヴェルブリッツさんのブレイクダウンのディフェンスのプレッシャーは素晴らしかったと思います」(東京SG、小野HC)

しかしサンゴリアスは臨機応変だった。

中盤からキック(ハイパント)も織り交ぜながら敵陣攻撃。ハイボールキャッチは南アフリカ代表WTBチェスリン・コルビが好捕を連発した。

すると前半16分だ。キックカウンターからの連続攻撃から、今季古巣復帰のNO8テビタ・タタフがショートステップ&オフロードでWTBコルビの突破を創出。世界NO1フィニッシャーが逆転トライを奪った。(5-3)

サンゴリアスのDNAである泥臭さも光った。

象徴としてラックサイドに君臨したのはFL山本凱だ。しつこいファイトでヴェルブリッツの配球を混乱させる。イーブンボールに日本代表PR小林賢太が飛び込む。地を這うプレーの連続でターンオーバーを起こした。

さらにヴェルブリッツがシンビンで14人になると、サンゴリアスがモール攻勢で2トライ目を奪取(ゴール成功)。さらに前半32分のPG加点でリードを12点(15-3)とする。

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だがヴェルブリッツは崩れなかった。

前半にシンビンをもらって14人で戦い、守備でも圧力を受けた。それでも前半に最大限と思える成果を出した。

サンゴリアスのペナルティから敵陣左ラインアウト。ここでラインアウトのショートサイドに残ったSHアーロン・スミスを走らせるサインプレー。少ないチャンスをトライに変える一撃で7点差。さらにPG追加で4点差(11-15)とし、前半を終えてみせた。

ヴェルブリッツは(10位に沈んだ)昨季との明確な違いが見て取れる。

アタックの遂行力だ。

WTBコルビのハイタックルでサンゴリアスが14人だった後半9分。キックカウンターから自陣から攻め上がる。オールブラックスWTBマーク・テレアが小刻みな“ダンス・ステップ”で相手を翻弄。

さらに右隅でWTB高橋汰地がゲイン&オフロードパス。7フェーズ目で内返しで2連続のショートパス。構えていたWTB高橋が狙い通りに抜け出して後半1本目。

自陣からのアタックをトライで締めくくる遂行力――。スキルの高い連動性を見せたヴェルブリッツが、逆転トライ(ゴール)で3点リード(18-15)を奪った。

さらに後半16分には「トヨタらしさ」でリードを広げる。エリア中央付近のスクラムから左展開で突破すると、敵陣の近場戦でフォワード勝負。

ルーキーFL青木恵斗が巧みなボディコントロールで前進。南アフリカ代表LOピーターステフ・デュトイ、最後はNO8姫野主将が熟練のキャリーでグラウンディング成功。トヨタらしい縦方向へのフィジカル勝負からリードを広げる後半2本目で、10点リード(25-15)とした。

だが、ここからサンゴリアスが反撃に転じる。

シンビンから戻ったWTBコルビのトライで3点差(22-25)に詰め寄ると、開幕節でも局面を変える仕事をしたサンゴリアスのリザーブ陣が躍動。

まずは3点ビハインドの後半24分に投入された箸本龍雅だ。直後にボールを引き抜く好守備。さらに中盤でキックチャージ。次々に好プレーを繰り出す。すると後半31分だった。

こちらも途中出場、パス名手のHO宮崎達也からSO高本幹也、FB松島幸太朗、途中出場の中村亮土から、最後はこちらも途中出場の日本代表・福田健太がフィニッシュ。「サントリーらしい」アタッキングラグビーでお返しの逆転トライを奪った(29-25)。

さらに痛めた様子のWTBコルビに代わって、8人目の交代選手、ルーキーの安田昂平(明治大学)が4点リードの場面で登場。リーグデビューを果たすと、その直後だった。

WTB尾崎晟也が自陣からロングゲイン。ここから敵陣ラインアウトのチャンスを得ると、途中出場のショーン・マクマーンが豪快な突進。そして最後にSO高本がボールを託したのは――左隅に構えていた安田。

突っ込んできた相手をショートステップでいなし、なんとリーグデビュー戦のファーストタッチでリーグ初トライ。チーム全員に笑顔が弾ける一本を加えると、左隅からのコンバージョンも中村亮土が決めてリードは11点(36-25)に。

「彼(安田)は本当にプレシーズンからハードワークしていて良い状態を保っていました。チャンスが来た時にチャンスをものにできたのは、彼の努力が報われた瞬間。素晴らしいファーストキャップだったと思います」(東京SG、流大ゲームキャプテン)

まだ逆転の可能性は残されていたヴェルブリッツだが、この勝負所でペナルティに泣いた。敵陣侵入のきっかけを得たサンゴリアスは、残り時間も消費できるモールを選択。

トライ差を「3」に広げるモールのフィニッシュは箸本。23人全員で走りきったゲームの最終スコアは43-25。ゲームキャプテンのSH流は言った。

「試合前、僕からチームに伝えたメッセージは二つです。一つは、80分必ずかかるゲームになるけど、80分先のことを見ずに、目の前のことに集中しようと。もう一つは、恐れずにアタックしようと。この二つのメッセージを1週間を通してチームに伝えてきました」

「本当にその通りになったと思いますし、最後までどちらが勝つかわからないゲームの中、特にフィニッシャーが良い仕事をしてくれて、最後にボーナスポイントも取れたので、結果としては満足しています」

後半30分過ぎまで4点差の接戦だったが、終盤の被2トライで今季初黒星を喫したヴェルブリッツ。スティーブ・ハンセンHCは「今日の試合内容は非常に良いパフォーマンスでした」とポジティブな言葉から始め、それから課題を語った。

「しかし最後は勝利を手にすることができませんでした。選手たちは後半最初の20分までは粘り強く戦い、すごく前向きに努力する姿勢を見せてくれました。しかし、そのあとの試合の流れではコントロールを失ってしまう展開となり、最終的に得点で相手チームが上回った、というところです」

「今日の試合の60分までは試合に勝てる地点にいたはずですが、無意識の中でチームとしてはアタックスタイルをやめてしまい、雑にプレーしてしまったり、キックを不必要に蹴ってしまったり、仕掛ける姿勢が消極的になっていたことが見えてしまいました」

 

ヴェルブリッツのNO8姫野キャプテンも「まだ若い選手もたくさんいましたし、ちょっと焦りが出てしまったのだと思います」とマインドセットの課題感を示した。

だが「トヨタらしさ」も発揮し、リーグ全体としても稀有な日本人3名の先発バックロー(FL青木、FL三木皓正、NO8姫野主将)は、随所で攻守に存在感を示した。

熾烈なリーグ戦はまだ序盤戦だ。ヴェルブリッツは12月27日の第3節、1勝1敗のコベルコ神戸スティーラーズから今季2勝目を狙う。

一方、2試合連続で最大勝点5を奪い、第2節終了時点でディビジョン1の首位に立ったサンゴリアス。

次戦は2戦全勝同士の注目カード。昨季準々決勝で敗れたクボタスピアーズ船橋・東京ベイに12月27日(土)、東京・秩父宮ラグビー場でチャレンジする。

文: 多羅 正崇

多羅正崇

多羅 正崇

スポーツジャーナリスト。法政二高-法政大学でラグビー部に所属し、大学1年時にスタンドオフとしてU19日本代表候補に選出。法政大学大学院日本文学専攻卒。「Number」「ジェイ・スポーツ」「ラグビーマガジン」等に記事を寄稿.。スポーツにおけるハラスメントゼロを目的とした一般社団法人「スポーツハラスメントZERO協会」で理事を務める。

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