人気ランキング

メルマガ

お好きなジャンルのコラムや
ニュース、番組情報をお届け!

メルマガ一覧へ

コラム一覧

ラグビー コラム 2025年12月15日

【ハイライト動画あり】サンゴリアス、反撃の狼煙。ジャパンラグビーリーグワン2025-26開幕節

ラグビーレポート by 多羅 正崇
  • Line

チェスリン・コルビ(東京サンゴリアス)

東京サントリーサンゴリアス(東京SG)が反撃の狼煙を上げた。

前身トップリーグでは5度の優勝を誇る名門サンゴリアスだが、リーグワンでは優勝がない。昨季はプレーオフ進出を果たしたものの最終順位は6位だった。

果たして今季サンゴリアスの実力は? 2025年度は名門復活のシーズンになるのか?

12月13日(土)のディビジョン1開幕節――。リコーブラックラムズ東京(BR東京)との2025-26シーズンの開幕戦は、そんな問いに示唆を与えてくれる一戦になった。

前半の主役はブラックラムズ

前半の主役はブラックラムズだった。ホストを務めた開幕戦における観客1万4441人はチーム過去最多という。バックスタンドやゴール裏は最上段まで埋まっていた。

「両チームに開幕戦の緊張感がありました」

松島幸太朗(東京サンゴリアス)

そう語ったのはサンゴリアスの新主将、ニュージーランド代表のスキッパーだったFLサム・ケインだ。だが就任2季目の小野晃征HC率いるチームは、開始3分で躍動感溢れるワイドアタックをみせ、いきなりFB松島幸太朗の突破を創出した。

FB松島はこの日ゲインメーター(ボールを持ってゲインラインを越えてプレーした距離)でチーム最長の88メートルを記録。このゲインからブラックラムズがペナルティを犯し、PGのチャンス。だがキックは外れて先制に失敗する。

さらにサンゴリアスは昨季安定感のあったラインアウトで2連続の反則(ノット・ストレート)。攻めてはボールの狩猟名人、ブラックラムズのNO8リアム・ギルにスティールを食らい攻撃が続かない。

だが、低気温の影響も重なったのか、スロースタートはブラックラムズも同様だった。

「リアルのプレッシャーを初めて感じる開幕戦は、普通とは違うプレッシャーがあります」

この言葉の主はブラックラムズのSHTJ・ペレナラ新主将。その言葉通り、ブラックラムズもラインアウトの確保などに苦戦。お互いにチャンスを生かしきれずスコアボードに時間だけが刻まれていく。

ジャパンラグビー リーグワン2025-26(12月13日)

【D1第1節 ハイライト動画】ブラックラムズ東京 vs. 東京サンゴリアス

膠着打破は20分が経過した後だった。

ブラックラムズは日本代表デビューしたSO中楠一期が前半22分にPG成功。この3点で緊張が和らいだのか、ここからブラックラムズはセットプレーからのサインプレーを次々に成功させる。

先制直後の23分にラインアウトから攻撃開始。ショートサイドでLO山本嶺二郎が決定的な後方のパスを送ると、広いスペースをもらったFBアイザック・ルーカスが疾走してトライゾーンへ。両軍最初のトライで8-0とリードを広げた。

「今日のセットピースからのトライについては良い実行力でした。ディフェンスについても長いあいだ良かったです」(BR東京、タンバイ・マットソンHC)

一方のサンゴリアスも反撃。

3季ぶり復帰のNO8テビタ・タタフ浦安DRから新加入のPR竹内柊平ら、強いキャリアーを近場で当て続ける。

この日ブラックラムズは特にフィジカルを意識していたというが、ここは真っ向勝負で押し切ってNO8タタフがチームのシーズン初トライ。ビハインドを1点差(7-8)に縮め、後半へ向かった。

J SPORTS 放送情報

苦戦を予期していた小野HCの「シンプルなメッセージ」

ラグビーに限らない。ある突然の事態が「想定内」か「想定外」かで、メンバー・組織へのインパクトは大きく異なるだろう。

1点差に詰め寄ったサンゴリアスは後半さらに苦戦を強いられたが――、それはサンゴリアス、少なくとも指揮官にとっては「想定内」の状況だった。

1点差に詰められたブラックラムズだが、後半8分、華麗な一撃を決める。

ラズロー・ソード(ブラックラムズ東京)

スクラムからの一次攻撃。極少スペースに配置したランナー3人を同時に走り込ませるサインプレー。守備線を貫く弾丸となったのは22歳のCTBラズロー・ソードだった。

そのままWTBチェスリン・コルビ、FB松島を振り切ってゴールラインまで独走。会心の一撃でリードをセーフティな8点(15-7)に広げた。

50分経過して8点のビハインド。傍目からみれば「サンゴリアス危うし」だ。だが小野HCはこうした苦戦を予期し、試合前から「シンプルなメッセージ」を伝えていたという。

「7名の代表メンバーが10日前に合流しました。そのメンバーと共生しながら自分たちのラグビーを80分間やりきる――そのなかでカオスが起きるのは当然だと思っていました。選手には『絶対に勢いはサンゴリアスにくると信じて80分間戦ってほしい』ということはシンプルなメッセージとして伝えていました」(小野HC)

ラスト20分でサンゴリアスが4連続トライ

勢いは絶対にサンゴリアスにくる――。

その言葉を現実にするための一助として後半10分に投入されたのが、打開力に長けた2人、ショーン・マクマーンと元明大主将の箸本龍雅だ。

「今日は途中出場した選手が良いモメンタムも生んでくれました」(東京SG、小野HC)

突撃隊長となったマクマーンが激しい衝突を繰り返す。ゴール手前10m付近に迫る。すると、ここから大外展開。まずは右隅でWTB尾崎晟也が獲り切った。(ゴール失敗で12-15)。

その4分後にはWTBコルビのデコイ(おとり)が効いてマクマーンがチーム3本目。あっさり逆転(19-15)すると、後半27分には福田健太のショートキックからカウンターラック成功。

途中出場のHO宮崎達也のロングパスを受けたWTBコルビが4本目。途中出場メンバーが的確なプレー選択でチームを勢いづけていく。ブラックラムズの主軸は“魔の20分間”ともいうべき60分以降の出来を悔やんだ。

「課題はラスト20分の1人1人の精度ですね。たぶん相手の22mに入ったのが一度しかなくて、それもミスで終わりました」(BR東京、FL松橋周平

「60分くらいまでは良くディフェンスできていました。あとは、最後のタフさ、我慢強さ、そういったところが足りていませんでした」(BR東京、CTB池田悠希

最終盤、追いかけたい状況でハイタックル判定のSHペレナラ主将を含む2名がシンビンに。13名となって窮地に追い込まれ、こちらも途中出場の中村亮土のトライでダメ押し。29-15でサンゴリアスが開幕白星を飾った。

昨季開幕2連敗だったサンゴリアスにとって、開幕戦の白星は少なくない意味があるだろう。“本格的な復活”と呼ぶのはもちろん時期尚早だが、サンゴリアスの選手層、チームとしての経験値、小野HCの手腕が感じられた一戦となった。

「15週間練習してきたラグビーを見せたかったですが、今日は波がいったりきたりした80分でした。最後に23人が自分たちのラグビーを信じ切ったところが勝利に繋がったと思います」(東京SG、小野HC)

一方のBR東京は粘り強いディフェンス、セットプレーからの攻撃精度で会場を沸かせたが、ハイボールが終始サンゴリアスに入るなど課題も明確になった。

「残念な結果になりました。相手の最後30分のプレーをリスペクトしています。プレッシャーを受けてそれがイエローカードになり、最後は良い相手に13人で戦うことになりました。ファイトはしましたが、試合の中盤でチャンスを掴みきれませんでした」(BR東京、マットソンHC)

勝利したサンゴリアスの次戦は、今季初のホストゲーム。相手は三重ホンダヒートに勝ち切った1勝のトヨタヴェルブリッツ。12月20日(土)の東京・味の素スタジアムが熱戦の舞台だ。

敗れたブラックラムズは次週、今季初勝利をかけて昨季準Vのクボタスピアーズ船橋・東京ベイと激突。開幕節でスティーラーズに競り勝った強敵に同20日、千葉・フクダ電子アリーナでチャレンジする。

文: 多羅 正崇

多羅正崇

多羅 正崇

スポーツジャーナリスト。法政二高-法政大学でラグビー部に所属し、大学1年時にスタンドオフとしてU19日本代表候補に選出。法政大学大学院日本文学専攻卒。「Number」「ジェイ・スポーツ」「ラグビーマガジン」等に記事を寄稿.。スポーツにおけるハラスメントゼロを目的とした一般社団法人「スポーツハラスメントZERO協会」で理事を務める。

  • Line

あわせて読みたい

J SPORTS IDを登録すれば、
すべての記事が読み放題

J SPORTS IDの登録(無料)はこちら

ジャンル一覧

人気ランキング(オンデマンド番組)

J SPORTSで
ラグビーを応援しよう!

ラグビーの放送・配信ページへ