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ラグビー コラム 2025年11月25日

【ハイライト動画あり】劇的勝利!課題残るも「バンド2」で27年W杯へ!解説陣の“予言”もあった「男子日本代表×ジョージア代表」リポビタンDツアー2025

ラグビーレポート by 多羅 正崇
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1点ビハインド(22-23)で迎えたラストプレー。

ラグビー男子日本代表の10番李承信が、夕闇迫るミヘイル・メスヒ・スタジアム(Mikheil Meskhi Stadium)のHポールを見上げていた。

このペナルティゴールを決めれば、逆転サヨナラ勝利。世界ランキングは13位から12位に浮上し、12月3日の2027年W杯「組分け抽選会」を、上位国との対戦が減る「バンド2」で迎えることができる。

しかし外せば、上位国との対戦が増える「バンド3」に入る。4年に一度の大舞台で、より厳しい戦いを強いられることになる。

その重大さを意識すれば巨大なプレッシャーとなるであろう、運命のプレースキック。この日キック好調の李承信は、いつもと同じ様子で、右脚を振り抜いた。放物線を描く楕円球を、全員が見つめた。

日本代表の欧州遠征「リポビタンDツアー2025」の最終第4戦が11月22日(土)、敵地ジョージアで行われた。ここまで5連敗の日本代表は、年内最後のテストマッチを白星で飾り、組分け抽選会を12位で迎えたいところだった。

「中盤のディフェンスはかなり成長を感じています」(SH齋藤直人

SH齋藤が惜敗したウェールズ戦後にそう語っていた通り、日本代表は序盤戦からジョージアを中盤でシャットアウトした。肉弾戦を強みの一つとするジョージアに対して奮闘した。

ワーナー・ディアンズ

「フィジカル的に互角だった」とは、LOワーナー・ディアンズ主将のコメント。この日はFLタイラー・ポールらと何度もチョークタックルで相手を締め上げ、相手の攻撃をスローダウンさせた。

するとお互いにペナルティゴールを決め、3-3の同点で迎えた前半10分だ。

ジョージアが日本のペナルティからゴール前へ侵入。モール勝負を仕掛けたが、ここは日本が5mラインで粘り続けた。手詰まりとなったジョージアが展開。ここでパスミスが起こり、こぼれ球をCTBチャーリー・ローレンスが蹴り返した。

リポビタンDツアー2025 ラグビー日本代表テストマッチ(11月22日)

【ハイライト動画】ジョージア vs. 日本

ディラン・ライリー

チェイスしてドリブルしたのはウイングとしても起用可能なスピードスター、CTBディラン・ライリー。ドリブルでトライエリアに残したボールを押さえ、堅守速攻で7点(ゴール成功)を奪った。(10-3)

ここまで日本は「規律が課題」(SH齋藤)でもあったが、この日深刻な反則が目立ったのはジョージアだ。突破したSH齋藤のパスを妨害したPRイラクリ・アプツィアウリにイエローカード。日本は前半19分に数的有利(15対14)となった。

ただホームのジョージアも「負けられない一戦」であることは同じだった。

FLトルニケ・ジャラゴニアがスティールを決めれば、エッジのブレイクダウンでプレッシャーをかけた前半21分、日本のオフフィートを誘ってピンチ脱出。日本は数的有利の敵陣アタックでスコアできず、引き続き「決定力」に課題を残した。

ここからはテストマッチらしいPG合戦に。前半26分に日本が、同28分にジョージアが、それぞれラックでのペナルティから3点ずつを取り合う。

ジョージアのリチャード・コリクルHCは試合前、選手に対して「一つひとつの瞬間を大事にしようと伝えた」という。「このレベルの試合は細部の精度が勝敗を決める」(コリクルHC)という認識があったからだ。

ただ結果的には、試合前に言葉で伝えることの限界を示してしまった。ジョージアはこの日、最後まで自陣での不要なペナルティに苦しんだ。

李承信

前半32分、ジョージアはファイトしながらラックのボールを蹴るという不要なペナルティ。ここで李承信がPG成功。日本が10点リード(16-6)を奪い、試合を折り返した。

ただ日本にもペナルティがあったことも確かだ。

後半4分にはスクラムで、ジョージアが角度をつけて押すペナルティ(アングル)。ここでPG成功。相手のプライドであるスクラムで逆に加点したが、その1分後に日本がラック周辺で反則を犯してしまう。ここで3点を追加され、リードは10点(19-9)に戻った。

さらに日本は何度もピンチを迎えるが、後半10分にはNO8ジャック・コーネルセンが相手の独走トライを阻むアンクルタップ。同17分にはPR小林賢太がスティール。10点リードを守ったまま後半20分を越えた。

後がないジョージアは終盤、フォワードの近場勝負に徹してきた。

後半28分。フォワードのユニットで押し込んでくるジョージア。止める日本。ゴール前からの大外一気の展開に対しては、SO李承信が飛び込むようにタックル。初先発のWTB植田和磨も外を捨てて体を当て、ランナーを止めた。

だが直後のゴール前のラックから相手がピック&ゴー。日本の抗議もあったがトライが認められ、ジョージアがこの日初トライ。プライドと意地を感じる一本からコンバージョンも成功し、日本のリードは3点(19-16)に縮まった。

ただ日本は後半33分にPGを加えてリードを6点(22-16)に広げる。残り時間は約5分。6点ビハインドのジョージアにPGを重ねる時間はなく、トライを狙うしかない――。

ここで日本が気をつけたいのはペナルティだったが、リスタート直後にラックで痛恨のペナルティ。

テストマッチ経験の不足を感じるペナルティから勝負所で後退すると、ジョージアがふたたび近場のフィジカル勝負。さらに日本がノット・ロール・アウェイ(ペナルティ)を重ねると、アドバンテージをもらったジョージアがワイド展開。

ここは小村真也、SH齋藤が必死に止める。後半から途中出場の池田悠希もトライエリアに迫る相手を止めた。だが、アドバンテージが続く中で最後はジョージアが展開。

WTB長田智希がオフロードを防ぐ好守をみせたが、ノーラックで繋がれてCTBトルニケ・カホイゼが渾身のトライ。さらにSOテド・アブジャンダゼのコンバージョン成功で、ジョージアが歓喜の逆転を果たした。(22-23)

すると、その直後だった。

J SPORTS解説の沢木敬介氏(元キヤノンHC)と藤島大氏(スポーツライター)の冷静なコメントが冴え渡った。

「まだ全然分からないですよ」(沢木氏)
「ジョージアはもう一回、変なことをしそうな気がする」(藤島氏)
「そうそう」(沢木氏)

そのやりとりは、まさしく“予言”だった。二人の言葉通りのことが起きたのだ。

最終盤でついに1点リードのジョージア。ボールキープを選択せず、ラックからのボックスキック。これがダイレクトの痛恨ミス。日本に敵陣左でのラインアウトというチャンスが舞い込み、さっそく「まだ全然分からない」状態となった。

日本はここから福田健太の配球で攻撃開始。

と、ここで途中出場のサンドロ・ママムタヴリシュヴィリが、ラックでプレーできない状態でボールを引き抜くペナルティ。前述のまさしく「変なこと」に該当する、不要なペナルティによって、日本に逆転のチャンスが転がり込んできた。

時間はレッドゾーン。

ラストプレーで日本に約30mのPGチャンス。全員が見守った楕円球の放物線は――、Hポールの間をすり抜けた。

ファイナルスコアは25-23。

2025年最後のテストマッチで、日本代表は世界ランキング12位に押し上げる貴重な勝利を手にした。

「前回のウェールズ戦と似たような終盤となりましたが、今回は最後3分のところでしっかり対応して、勝ちを取れたことは非常に嬉しく思いますし、チームの成長も感じます。ワーナーの最後のところでのキャプテンシーも、本当にずば抜けたものがあると思います」(ジョーンズHC)

ただ過小評価はすべきでないが、過大評価もすべきではないだろう。

「アタックに関しては、自分たちが考えていたプランはなかなかできませんでした。相手のフィジカルに対し受けていましたし、22mに入った中でもキャリーが乱れ、結果ワントライしかできませんでした」(SO李)

トライ数はジョージアが「2」で、日本の「1」を上回った。日本は10点リード(19-9)の後半24分など、敵陣でスティールを浴びて得点できない場面も目立った。敵陣22mの決定力は依然として課題だろう。

最後にやってきたPGチャンスも、猛攻を仕掛けてペナルティをさせたというよりジョージアの自滅に近かった。それはLOディアンズ主将の「最後のペナルティはラッキーで勝つことができました」というコメントが物語る。

だが勝ち切ることができたことも事実だ。これで通算対戦成績は6勝2敗に。昨年の惜敗(23-25)の借りも返した。

「チームにとっても日本のラグビーにとっても大事な1戦で、この7週間チームとして本当にハードワークしてきました。結果がでないゲームや自分たちで勝利を手放してしまうゲームがあった中でも、チームとして毎週毎週前進しようと、僕たちが一番心が痛いし体も痛かったですが、その中でも勝とうと準備してきましたので、本当に最後に勝てて良かったです」(SO李)

そして舞台は、12月3日の抽選会へ。

ジョージア戦の勝利によって「バンド2」(6~12位)に入った日本。果たして、2027年W杯オーストラリア大会のプールステージで、どの3チームと対戦することになるのだろうか。

文: 多羅 正崇

多羅正崇

多羅 正崇

スポーツジャーナリスト。法政二高-法政大学でラグビー部に所属し、大学1年時にスタンドオフとしてU19日本代表候補に選出。法政大学大学院日本文学専攻卒。「Number」「ジェイ・スポーツ」「ラグビーマガジン」等に記事を寄稿.。スポーツにおけるハラスメントゼロを目的とした一般社団法人「スポーツハラスメントZERO協会」で理事を務める。

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