早稲田大学、優勝に向けて負けられない伝統の「早慶戦」。ラグビー関東大学対抗戦

円陣を組む早稲田大学フィフティーン

毎年11月23日に行われてきた、1922年から続く伝統の一戦「早慶戦」。これまでの戦績は早稲田大学の74勝20敗7分。

また、2014年に引き分けて以降、早大はこの早慶戦で10連勝を積み上げてきた。戦績から見れば因縁の相手・慶應義塾大学に大きく勝ち越している状態だが、何が起こるかわからないのが早慶戦の醍醐味。102回目を迎える今季はどんな一戦になるのだろうか。

昨年の早慶戦はディフェンスとセットプレーに注力してきた早大の強さが存分に発揮され、57-3と圧倒的な差をつけて勝利。規律のよい守備で猛虎を沈黙させ、勢いに乗った早大はそのまま明治大学を撃破。17年ぶりとなる関東大学対抗戦の全勝優勝を達成した。

今季の早大はここまでの対抗戦で4勝1敗、勝ち点は26と現時点で3位となっている（上位の明大、帝京大は1戦多く消化）。前節の帝京大戦ではアンラッキーな形での失点が重なり、5点差での敗北。ボーナスポイントは獲得しながらも、真紅のジャージに屈することとなった。

しかし、収穫も多い。スクラムではいくつもペナルティを奪い、ゴール前でのモールディフェンスでも明らかな成長を感じさせた。PG（ペナルティゴール）や、DG（ドロップゴール）など、トライだけではない得点の重ね方も見せつけ、どこからでも点を取る姿勢は相手にとってプレッシャーになることだろう。

対する慶大はここまで3勝2敗の5位。現時点で全国大学選手権への出場は確定している。筑波大学、明大に敗戦した2試合に目を向けると、そのどちらもが1トライ差以内での黒星であった。守備を伝統とする慶大らしいロースコアな展開に持ち込み、試合終了間際まで結果がわからない接戦を見せていた。

特に明大に肉薄した前節は、圧巻のディフェンスを見せつけた一戦であったと言える。紫紺のジャージにゴール前まで侵入されながらも、決死のタックルで前進を食い止め、ボールを奪い返すシーンは何度も見られた。慶大の『魂のタックル』はこの早慶戦で早大に襲い掛かるに違いない。

帝京大戦、ラックからパスするSH糸瀬

注目したいマッチアップを紹介する。まずはSH（スクラムハーフ）対決。早大のファーストチョイスは糸瀬真周（スポ4＝福岡・修猷館）。高速なパスで相手を翻弄する超攻撃型SHだ。SO服部亮太（スポ2＝佐賀工）との連携は試合を重ねるごとに進化しており、大学ラグビー随一のハーフ団となりつつある。

一方、慶大の9番は橋本弾介（慶大）。小柄ながらもフィジカルが強く、積極的なコンタクトプレーが武器の戦うSH。慶応中等部時代からたたき込まれた、タイガージャージを象徴するタックルでチームのピンチを救ってきた。攻守の要を担う9番の対決はまさに勝負のカギを握っている。

帝京大戦にて力強くヒットするFL田中勇

さらにFL（フランカー）の真っ向勝負にも注目したい。赤黒の7番は早大が誇る燃える副将、田中勇成（教4＝東京・早実）だ。低く鋭く、何度も突き刺さるタックルは田中勇のまさに代名詞。ラストイヤーもいよいよ終盤を迎え、田中勇の炎はさらに勢いを増している。試合の流れを変えるタックルで早慶戦を制圧するその姿に期待したい。

対する慶大はスーパールーキー、申驥世が7番を着用。1年生とは思えない強力なボールキャリーで、いくつものチャンスを生み出してきた。高校日本代表の主将を務めたキャプテンシーも持ち合わせており、高校王者の貫禄を見せつけている。ブレイクダウンをはじめとする密集での攻防戦が重要になる早慶戦ではFLの働きに注目したい。

早大としては対抗戦優勝に向けてなにがなんでも勝利し、勝ち点6を奪い取りたい今節。慶大は2008年に8-10の僅差で赤黒のジャージを下して以降、15年もの間勝利から遠ざかっていることから、並々ならぬ思いで臨んでくるだろう。

伝統校のプライドがぶつかり合う一戦は、ラグビーの聖地・秩父宮ラグビー場で行われる。例年にない混戦状態で盛り上がりを見せている対抗戦。その熱狂を現地で体感せずにはいられない。

文：村上結太／写真：村上結太、大林祐太、伊藤文音、高木颯人（早稲田スポーツ新聞会）