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ラグビー コラム 2025年11月17日

【ハイライト動画あり】貫禄見せた花園常連。持ち味出したチャレンジャー。第1地区「桐蔭学園×日大藤沢」。第2地区「東海大相模×関東学院六浦」。全国高校ラグビー大会(花園)神奈川県予選決勝

ラグビーレポート by 多羅 正崇
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花園常連校は貫禄を見せた。

チャレンジャーも持ち味を出した。

第105回全国高校ラグビー大会(花園)の神奈川県予選決勝2試合が、11月16日(日)、ニッパツ三ツ沢球技場(神奈川)で行われた。

第1地区「桐蔭学園×日大藤沢」

序盤から貫禄を見せたのは花園2連覇中の桐蔭学園だ。

十八番でもあるボールキープの連続攻撃を繰り出すと、強烈なキャリアーたちが躍動した。

「(桐蔭学園は)どこにスペースがあるかなど、全員に考える力があるチームだと思います」(桐蔭学園HO堂薗尚悟主将)

まず約190cmの大型CTB古賀啓志が開始3分で先制トライを奪う。さらにHO堂薗主将がダブルタックルを弾いて2本目。ワイド展開からCTB古賀が抜け出し3本目。そして前半16分にはFB曽我大和が次々にタックラーをかわし、オフロードパスが通って4本目。

ハーフタイムの円陣においても選手主体で課題抽出・改善をする「考える力のある」チームが、ワイドを中心にボールキープでスペースを攻略。20分で28点のリードを奪った。(28-0)

一方のチャレンジャーは、35年ぶりに決勝進出を果たした日大藤沢だ。

NTT関東でプレーしたOBの向淳造監督は、35年ぶりの快挙の理由として「ベーシックなことを徹底的にやってきたこと」を挙げた。その努力は随所に見られた。

LO阿部遵介は、全国トップクラスのキャリアーを一発で止めるタックルを連発。FL金子幸弘も背番号7としてディフェンスに身体を張り続けた。

だが日大藤沢は、桐蔭学園が強みとするブレイクダウン、そしてラインアウトでプレッシャーを受けてボール保持率が伸びない。劣勢のなかでスティール(旧ジャッカル)も決めたNO8林遥陽主将が言った。

「ディフェンスの時間が多くなることは分かっていました。アタックになったら継続しようと言っていましたが、相手のタックル、気迫に押され、すぐターンオーバーされて継続できませんでした」

日大藤沢はボール展開後のブレイクダウンでたびたびターンオーバーを受けた。ここでボールを守ろうとする意識が裏目に出てしまい、ラックのペナルティも取られた。

前半さらに2トライを加えた桐蔭学園はFB曽我がゴールをすべて成功。桐蔭学園リードの42-0で試合を折り返した。

後半も桐蔭学園がカウンターラックからの堅守速攻が続いた。後半開始2分で攻守交代から7本目を奪取。さらにペナルティからモールでも20m以上前進してトライを奪い、さらに1本追加でリードを59点に伸ばした。

日大藤沢の応援団が沸いたのは後半15分だ。

スピードのあるSH和田舟が中盤からボックスキック。これを捕球したWTB矢島悠晴がショートキック。相手に当たり、敵陣22mラインアウトの好機を迎えた。

ここまで苦戦していたラインアウトは後方で勝負。無事に確保。モールで勝負を仕掛ける。モール最後尾でボールを受けたのはSH和田だった。

第105回全国高等学校ラグビーフットボール大会 神奈川県予選 決勝-1(11月16日)

【ハイライト動画】桐蔭学園 vs. 日大藤沢

「フォワードが(モールで)前に出てくれると信じて、最後は自分が取りきるという思いでした。最後は絶対にノックフォワードしないという思いで勝負しました」(日大藤沢・SH和田)

ユーズイットのコールが掛かる前にショートサイドへ走った。滑り込んでグラウンディング成功。卒業後は日本大学でプレー予定という俊足9番が、35年振りの決勝でチームのトライを刻んだ。

「今年はみんなが三ツ沢(決勝)に立たないといけないチームだと自覚していました」(日大藤沢SH和田)

セットプレーを安定させてボールを持てれば、王者相手でもトライができる。日大藤沢の実力がいかんなく披露された瞬間だった。

日大藤沢は勢いづいた。

CTB三橋弘宜がノックフォワードを誘うタックルを浴びせれば、SH和田がループから仕掛けてロングゲイン。だが桐蔭学園のプレッシャーからラックのペナルティが続いてチャンスを失う。

一方の桐蔭学園は、途中出場したU17日本代表の2年生木俣蒼司郎がキャリーで再三突破。反撃にあいながらも高い遂行力でトライを重ね、最終スコアは78-7。桐蔭学園が3大会連続23回目の花園出場を決めた。

桐蔭学園の藤原秀之監督は、自軍について「今日の試合で位置的に分かったことが随分あるので、かなり準備をしないと大変かなと思います。あと一か月くらい準備の時間がありますので、例年通りとはいかないかもしれませんが一試合でも勝てるようにしていきたいと思います」と花園への意気込みを語った。

一方、敗れた日大藤沢の向淳造監督は「選手は100パーセントを出してくれました。これから先は、今回だけで終わらず、来年、再来年へと繋げていけたら」と感慨深げに話した。

第2地区「東海大相模×関東学院六浦」

記念大会のため2校が出場できる第105回大会の花園神奈川県予選。第2地区決勝では、東海大相模と、初の決勝進出を果たした関東六浦がぶつかった。

3大会ぶり11回目の花園を狙う東海大相模の看板は大型フォワードだ。

「フォワードのボールキャリー、セットプレーを起点にスコアできるので、フォワードが今年の武器です」(東海大相模CTB中尾思主将)

先制トライはそのフォワードが獲った。

序盤ディフェンスで粘った関東六浦だが、前半6分、相手ペナルティで後退。ここからモールを組んだ東海大相模。先発フォワード唯一の2年生であるFL細田大和が、巧みなコンタクトスキルで突進。先制点を挙げた。(7-0)

東海大相模はハンドリングスキルも高い。中盤ラインアウトのルーズボールをSH上條雄大が拾うと、3本のオフロードパスを繋いでゲイン。数的優位を取り切って2本目を奪った。

一方、決勝初進出の関東六浦。

チームの強みは、関東六浦中学からの主力が多いことによる結束力。そしてSO花田琉晏のキックだ。付属中卒のHO豊川道主将が言った。

「主力はほとんどが中学(関東六浦中)上がりで団結力が持ち味です。今日は6年間の集大成でした。戦い方としては(スタンドオフの)花田のキックが良いので、今日は空中戦を制していこうと選手同士で話していました」(関東六浦・HO豊川主将)

そんな関東六浦の初得点は前半12分だ。

相手のペナルティからペナルティゴール選択。約25mのプレースキックを成功させて3点を奪取し、ビハインドを9点(3-12)とした。

第105回全国高等学校ラグビーフットボール大会 神奈川県予選 決勝-2(11月16日)

【ハイライト動画】東海大相模 vs. 関東学院六浦

SO花田を擁する関東六浦としてキックゲームは歓迎。その土俵にフォワードを前に出したい東海大相模が乗り、キックの応酬を続けたことによってスコアが停滞した。

「スコアが12-3になってからは攻め続けられました。自分たちのやりたいラグビーをできたので、そこの10分間は良かったです」(関東六浦・HO豊川主将)

関東六浦は堂々たる戦いぶりをみせる。前半16分には高さのある相手ラインアウトをスティール。敵陣で順目の高速ピック&ゴーを見せるなどして押し込んでいく。

「関東六浦さんの鋭いディフェンス、キックでなかなか陣地が取れなかった部分はかなり苦しみました」(東海大相模・三木雄介監督)

だが流石の東海大相模もスティール(旧ジャッカル)などで対抗。トライが欲しかった関東六浦だが、逆にペナルティを犯したところからふたたび大型フォワードに押し込まれ、モールなどで被2連続トライ。東海大相模リードの26-3で試合を折り返した。

東海大相模は後半8分に高校日本代表候補のFB福岡遼がラック最後尾からピック。一瞬のスキを突く試合巧者ぶりで、リードを30点(33-3)に広げる。

だが、しぶとい関東六浦は後半20分、SO花田のキック「50:22」から敵陣へ。敵陣でもトライエリアにハイパントを上げるなど「選手主体で考えた」(HO豊川主将)という戦略で初トライを狙う。

すると後半25分だった。

東海大相模がゴール前のクイックスタートでノックフォワード。敵陣ゴール前スクラムのチャンスが舞い込んだ。

ここでスクラム最後尾に入ったのはFB遠山瑠海。すばやいピックでショートサイドへ疾走。相手スクラムハーフを振り切ってグラウンディング成功。関東六浦初となる「決勝戦でのトライ」をFB遠山がマークした。

さらに右奥からのコンバージョンもSO花田が成功。得点差を23点(10-33)とした。

関東六浦の攻勢が続いた。FL永井直純がチームを勢いづける強烈タックル。さらにSO花田がインターセプト。が、ここで東海大相模がトライを防ぐアンクルタップ。

だが最後は東海大相模がゴール前のフォワード戦からダメ押しのトライを決め、40-10でノーサイド。東海大相模が3大会ぶり11度目の花園出場を決めた。

「今日は、選手たちがよく前を見て空いているスペースにボールを動かしたのがよかったです。フォワードはこの一年間身体を大きくして、セットプレーを安定させてくれるフォワードになりました」(東海大相模・三木監督)

一方、敗れたものの決勝初進出という成果は残した関東六浦。関東学院大学で優勝も経験している林広大監督はどこか穏やかだった。

「後半は戦えていたので、悔やまれるのは前半です。でも大きい相手にスタミナを奪われることなくやっていましたし、やりたいことは出来たと思います。去年はベスト8でしたので、よくここまで持ち上げてくれたなと。いまの3年生は中学1年から6年間一緒にやってきた仲なので、6年間の集大成でひとつ歴史を創ってくれたことはよかったです」

初の決勝進出については「これが第一歩です。ここからまた次をどうやっていくかを考えなければいけません。僕としては、このジャージ(関東学院大学のスカイ×ネイビー)でここに出られたことが嬉しいです」と話した。

得意のキックで活躍した司令塔のSO花田は「自分のキックで陣地をとってアタックするのがチームの戦略でしたが、そこは満点だったと思います」と評価。

中学時代に「蹴り続けていたら感覚を掴んだ」というキックが武器の司令塔は、関東学院大学でのプレーが有力な選択肢だという。主力複数名も引き続き大学でもスカイ×ネイビーを着る予定。関東学院大学の復活に一役買いそうだ。

神奈川県代表2校となった桐蔭学園と東海大相模は、約1カ月後、花園へ乗り込む。夢の全国大会は12月27日、東大阪市花園ラグビー場で開幕する。

文: 多羅 正崇

多羅正崇

多羅 正崇

スポーツジャーナリスト。法政二高-法政大学でラグビー部に所属し、大学1年時にスタンドオフとしてU19日本代表候補に選出。法政大学大学院日本文学専攻卒。「Number」「ジェイ・スポーツ」「ラグビーマガジン」等に記事を寄稿.。スポーツにおけるハラスメントゼロを目的とした一般社団法人「スポーツハラスメントZERO協会」で理事を務める。

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