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勝っても涙、負けても涙――。今年も2枚の花園切符をかけた東京都予選決勝2試合は、熱き闘いとなった。
第105回全国高校ラグビー大会(花園)の東京都予選が11月9日(日)、雨模様の東京・秩父宮ラグビー場で行われた。
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第1地区決勝「目黒学院×東京朝鮮中高級学校」
目黒学院は準決勝で明大中野に10-0と苦戦した。竹内圭介監督はその準決勝を振り返って「準備段階が甘かったので、この一週間はそこを徹底してやりました」とコメント。
CTB及川拓巳主将も決勝戦へ向け、入念な準備をしたと語った。
「花園で日本一を取ることが目標ですが、まず都予選をしっかり勝ち抜かないと足下をすくわれるということで、今週はそこを声がけしながらやってきました」(目黒学院CTB及川拓巳主将)
その準備が奏功したのか、6大会連続24回目の出場を狙う目黒学院は最高のスタートを切った。
キックオフ直後にFLラトゥ・カヴェインガフォラウが強烈タックルを見舞う。すぐにカウンターラックでペナルティを誘った。ここから敵陣左コーナーへ入ると、モール勝負ではなくスローワーにキャリーさせる奇襲攻撃。
だが東京朝鮮も粘りのディフェンス。こぼれたボールを一度は2年生PR金大仁がセービング。しかしこれを強引にもぎ取ったのが目黒学院の大砲、NO8ロケティ・ブルースネオルだ。
だが、この全国屈指のキャリアーも東京朝鮮は止めた。しかし二の矢のHO阿部史門が高速のピック&ゴーでスコア。開始直後に先制トライを奪ってみせた。(5-0)
だが、東京朝鮮も鍛錬を重ねてきたディフェンスで魅せる。
序盤、モール勝負を挑んできた相手をフォワード陣が止めると、反撃を受けた目黒学院が展開。ここで運動豊富なFL朱梨貴が好タックルを浴びせる。ラックにWTB梁潤生も仕掛けると、目黒学院がノックフォワード。青いジャージの東京朝鮮が雄叫びをあげた。
だが、直後に目黒学院に2本目が生まれる。
起点は前半6分のファーストスクラムだ。ヒットから優勢だった目黒学院が、スクラムを押し込んで相手ボールを奪取。ボールはNO8ロケティ・ブルースネオルへ。
強さとしなやかさを兼備するランナーが、ワンステップでギャップを突破。そのまま豪快なグラウンディング。セットプレーでも優位に立った目黒学院が連続トライを挙げた。(12―0)
だが東京朝鮮も地力を見せる。
中盤のラインアウトでNO8河俊輝主将がサック成功。相手の展開攻撃ではLO金彰臣が相手10番に鋭いプレッシャー。続いてLO許志遠がタックルを放ってノックフォワード。東京朝鮮の守備力が光る。
だがCTB及川主将が「目黒学院はディフェンスのチーム」と語る通り、激しい守備は目黒学院のストロングポイントでもある。
モール起点に3トライ目を奪って17-0とリードしていた前半18分。ハイパントを上げた目黒学院が、CTB及川主将とFLラトゥで2人掛かりのチェイス。好キッカーのFB金柚基にパスを許さず、カウンターラック。
この攻守交代直後の展開から左サイドを攻略。NO8ロケティがショートサイドをピックで速攻してダイビング・トライ。守備力と攻撃力が噛み合った4本目。さらに前半2トライを追加した目黒学院が、34-0と大きくリードして試合を折り返した。
第105回全国高等学校ラグビーフットボール大会(11月9日)
【東京都予選 第1地区 決勝 ハイライト動画】目黒学院高等学校 vs. 東京朝鮮中高級学校
「前半から体をしっかり当てて、安定したゲームができたかなと思います」(目黒学院・竹内監督)
後半の先制点も目黒学院だった。
バックドアを駆使した複雑なサインプレーを繰り出す東京朝鮮。しかし連携ミスでボールロスト。ここから目黒学院がミスなくボールを展開し、後半開始1分で7本目。WTB中村理応が獲り切った。(41-0)
だが、負ければこの試合がラストゲームとなる東京朝鮮。
肉弾戦でも粘った。前半にボールを引き抜くプレーもあった2年生PR申旻恒、NO8河俊輝主将が2人掛かりでパイルアップ寸前に追い込む好守備。
さらに後半3分、WTB梁潤生がハイパントを追う。果敢なトップスピードのチェイスでノックフォワードを誘う。ファイティングポーズを崩さぬ東京朝鮮の好プレーが続く。
だが総合力は目黒学院。
後半7分にはFLラトゥが起点となった突破から、クイックスタートで大型PR阪井麟太郎が突進。相手のダブルタックルを突き破り、会場にどよめきを起こす豪快トライ。リードを48点に伸ばした。
東京朝鮮は途中出場の梁佑龍が自陣ゴール前のピンチで、相手ボールを引き抜くターンオーバーを見せるなどしたが、大量リードの目黒学院の集中力が落ちなかった。
終盤に1トライを追加し58-0とリードしながら、ランニングタイムで後半30分過ぎになって横一線の美しいチェイスをみせる。1トライを返そうとする無得点の東京朝鮮に対し、ハードワークで圧倒する。
だが、最後の最後に東京朝鮮が意地を見せた。
東京朝鮮はNO8河俊輝主将のスティールから攻撃開始。CTB孫竜銖がパスダミーからしぶとく前進。応援団から声援が飛ぶ。
ここで目黒学院が相手スクラムハーフに仕掛けるペナルティ、さらにモールのコラプシング、ハイタックルが続いた。東京朝鮮に最後のトライチャンス。
最後はラックからモールを組み直し、全員でトライエリアに飛び込むようなトライ。最後のコンバージョンはポールに当たったが、花園に初出場した2015年以来10年ぶりの決勝戦で、貴重な5点を奪った。
鉄壁のディフェンスを誇る目黒学院は予選2試合で無失点。東京朝鮮の最後のトライは、目黒学院の“予選完封”を阻む一本となった。
58-5で勝利した目黒学院は、見事に6大会連続24回目の出場を果たした。
「目黒はディフェンスのチームなので、(花園では)しっかりディフェンスで接点に全部勝って、しっかり越えてアタックに繋げていく、という目黒らしさ全開のラグビーをみせたいです」(目黒学院・CTB及川主将)
大型キャリアーに注目が集まるが、大きな強みの一つは終盤まで続いたハードワークの文化だろう。一貫性のあるディフェンスから主導権を握るスタイルで、花園に“目黒旋風”を起こしたい。
第2地区決勝「東京高等学校×早稲田実業学校高等部」
第2地区決勝は最後まで勝敗の分からない死闘になった。
準決勝で全国常連・國學院久我山を破り、高校ラグビーファンを驚かせた東京高校。勝てば6大会ぶり14回目の花園出場となる決勝戦で、2大会ぶり9回目の出場を狙う早稲田実業とぶつかった。
早稲田実業にとっても、この東京高校との決勝戦には並々ならぬ思いがあった。
「今年のチームは新人戦で東京高校に負けたところからスタートして、春にうちがリベンジして、3回目、ここで決着をつける(という思い)。ずっと1年間積み上げてきたものを確認して、精度を上げて、キャプテンの河村(和樹)を中心にこの決勝で全部出す、という一週間を過ごしてきました」(早稲田実業・大谷寛HC)
序盤はその早稲田実業がチャンスを確実にモノにした。
まず早稲田実業は敵陣中盤でハイパント攻撃。ウェットなコンディションも考慮した一手で早々にペナルティを誘発する。早稲田実業はこの日、ハイボールの攻防戦で主導権を握った。
敵陣のアタックは精度が高かった。
CTB中山大翔を中心に展開攻撃を仕掛けると、開始直後の相手ペナルティからの敵陣22mラインアウト。モールからパスアウトしてCTB中山が突進。
2名のタックラーを引きつけて、内側へ技ありのオフロードパス。守備の切れ目を意識したアタックをHO村山康剛が仕留めて先制トライ。狙い通りの一本を奪った。
さらに早稲田実業はスクラムで優勢に立った。
2年生のPR水田謙壮、HO村山、3年生PR岩崎壮志を前列に置いたスクラムで、前半8分にペナルティ。ここから敵陣に入った早稲田実業は、東京高校伝統の鋭いディフェンスを熟知したアタックを仕掛ける。
前半9分、ミサイルのように突っ込んできた相手タックラーの裏側へCTB中山がグラバーキック。東京高校が捕球したが、チェイスしたFB河村主将がさらに押し込む。ここへフォワードも殺到。
トライライン上で争奪戦が起きると、トライエリアにこぼれたボールをNO8齋藤俊太がおさえた。ショートキック&カウンターラックから最高の結果(トライ)を引き出し、連続スコア。しかしゴールキックは連続不成功でリードは10点に留まった。
第105回全国高等学校ラグビーフットボール大会(11月9日)
【東京都予選 第2地区 決勝 ハイライト動画】東京高等学校 vs. 早稲田実業学校高等部
ここで敵陣22m内に入れなかった東京高校にチャンス。
中盤からSO後藤深山が2対1をつくりオフロードパス。ラインブレイクを生み出して敵陣に入ると、スクラムからCTB工藤蒼大が力強くゲイン。トライエリアに迫るが、ここで痛恨のノックフォワード。
ここでさらに1トライを追加したのは早稲田実業。モール勝負で取りきれなかったが、パスアウトからCTB小川が突進。フットワークを駆使して守備網を裂くと、またも狙い澄ましたオフロードパス。
パスを受けたCTB稲木新太が飛び込んで3本目。先制トライと同じパターンで3本目を奪った。(17-0)
この劣勢において、東京高校は伝統のモールで活路を開いた。
エリア端でのスティールから攻守交代。敵陣に入るとドライビングモールで攻勢。前半24分にモールで押し込み、HO今村太一がキャリーに切り替えてグラウンディング。ゴールは失敗も12点差(17-5)に詰め、試合を折り返した。
後半最初の得点は、勝負強い早稲田実業だった。
セカンドハーフ開始3分のスクラム。PR岩崎が雄叫びをあげるスクラム・ターンオーバー。ここで冷静にショットを選択して成功。リードを2トライ2ゴールでも逆転できない15点(20-5)に広げた。
このまま早稲田実業が逃げ切るのか。
だが東京高校は後半7分には相手ペナルティから、ふたたびモール勝負。ここでトライエリアに迫ると、途中出場の松本朝陽が殊勲の2本目。こだわりのモールから獲り切った。(10-20)
まだ勝負は分からない。
早稲田実業が途中出場の藤森政紀のスティールで敵陣に入り、相手のお株を奪うようなドライビングモールでトライを奪う。(27-10)
ここで東京高校が起死回生の勝負手を繰り出す。9番経験豊富なSO後藤深山をスクラムハーフに入れたのだ。
するとその後藤とのコンビネーションからNO8杉田陽悠が中盤から突破。大きく前進すると、9番に入った後藤がパスダミー。勝負強い後藤の一撃で3トライ目。しかしコンバージョンが3回連続不成功で得点は伸びず15点。それでもビハインドは12点(15-27)となった。
追いかける東京高校。早稲田実業の大谷HCは相手の勢いを感じていた。
「(後半は)とにかく東京高校の粘りとプレッシャーが凄かったという印象です」
諦めない東京高校。自陣から展開する相手に対してWTB矢後泰一が強烈なタックルを放った。エナジーは落ちず、敵陣に居座り続けていると、後半28分だった。
相手のハンドリングエラーで敵陣左の自軍投入スクラム。
ここでNO8杉田主将がスクラムからキャリーと見せかけ、“ガット”でパスを受けたFL千野哲平がショートサイドへ回り込んだ。観客も解説陣もアッと驚くサインプレー。無人となったショートサイドをそのまま駆け抜け、FL千野がトライエリアへ。
大一番で会心のプレーを決める勝負強さをみせた。
さらに、ここまで3本連続で外れていたコンバージョンキック。ポールに当たって4本連続と思いきや――内側に入って初成功。ついに1トライ1ゴールで逆転可能な5点差(22-27)に詰めた。
さらに早稲田実業はここでキックオフボールが直接タッチに出る痛恨のミス。
ここから逆転圏内の東京高校が、猛攻をしかける。ボールをワイドに振る。しかしセカンドマンが遅くなりカウンターラックの危機が続く。ここで東京高校はラックからモールを組み直す「リモール」を試みる。しかし早稲田実業はモール先頭に激しいタックルを浴びせリモールを阻む。
5点を追う東京高校。5点を守る早稲田実業。と、ここで敵陣で攻めていた東京高校がショートキック。しかしこれが裏目に。捕球されロングキックで大きく蹴り返される。
ラストワンプレー。大きく戻った自陣からも展開する東京高校。ここで相手キャリアーに強烈な出足で迫ったのが――早稲田実業のFB河村主将。ここでFB河村を視界に捉えたか、東京高校がノックフォワード。
そして、ノーサイド。
仰向けに倒れて動けない東京高校メンバー。勝ったはずの早稲田実業メンバーの中にも、なかば呆然とした表情の者もいる。しびれる5点差(27-22)の死闘を制したのは、2大会ぶりの花園出場となる、早稲田実業だった。
最後に殊勲のタックルを放ったFB河村主将。
「今まで一年間積み上げてきたものが結果として出て、凄く嬉しいです。後半に苦しい時間がありましたが、やってきたことを徹底できたことが勝利につながったのだと思います」
東京の代表2校は目黒学院と早稲田実業。首都の代表として、12月27日に東大阪市花園ラグビー場で開幕する第105回全国高校ラグビー大会、「花園」に乗り込む。
文: 多羅 正崇
多羅 正崇
スポーツジャーナリスト。法政二高-法政大学でラグビー部に所属し、大学1年時にスタンドオフとしてU19日本代表候補に選出。法政大学大学院日本文学専攻卒。「Number」「ジェイ・スポーツ」「ラグビーマガジン」等に記事を寄稿.。スポーツにおけるハラスメントゼロを目的とした一般社団法人「スポーツハラスメントZERO協会」で理事を務める。
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