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明大がスクラム&モールで機先制す
関東大学対抗戦の上位対決。注目のファーストスクラムは紫紺ジャージーの明大に軍配が上がった。
前半3分。慶大が一発ダウンの好タックルからNO8中野誠章らがスティール成功。敵陣ラインアウトを呼び込んだが、ノックフォワードでスクラムの機会がきた。
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ここでPR田代大介、HO西野帆平、PR山口匠を最前列とする明大のスクラムがプレッシャー。加納孝紘レフリーは慶大からペナルティを取った。
だが、黒黄ジャージーの慶大が、伝統のディフェンスで対抗する。
敵陣22mでボールを展開する明大。だが慶大WTB伊吹央が大外展開を防ぐ絶妙なタックルを連発。前半7分に11フェーズ目でターンオーバーを起こした。
ここで明大が二の矢を繰り出す。ラインアウトモールだ。
西野帆平(明治大学)
前半10分のモールでペナルティを誘って手応えを掴むと、敵陣22m侵入後に2連続のモール。相手フォワードが全員コミットした瞬間にHO西野がキャリーに切り替え、先制トライを奪取してみせた。
FL申驥世らルーキー擁する慶大FWが奮闘!
だが慶大がフォワード戦でやりかえす。
フォワードに下級生が多い慶大だが、明大が凌駕しなければならないフィジカルバトルで一歩も引かず。ルーキーFL申驥世が前半19分にセットプレーからの一次攻撃で鋭く刺さる。
明大はテンポが出ず、2次攻撃目でHO藤森貴大にドミネートタックルを食らう。直後のスクラムでもペナルティを取られてエリア後退。
チームが劣勢に立たされると、フラストレーションが溜まる。その気持ちが悪い形で表れるのが、結果的に自分たちを苦しめることになる「ペナルティ」や「精度不足のオフロードパス」だ。
慶大の抵抗に遭った明大は、自陣でのオフロードパスをミスをしたり、ハイタックルで自陣に押し込めれる時間が続く。すると前半25分に右奥に進んだラインアウトで、ルーキーFL申を走り込ませるサインプレー。
ラグビー 関東大学対抗戦2025(11月2日)
【ハイライト動画】慶應義塾大学 vs. 明治大学
これが見事に決まり、昨年度の花園優勝キャプテンがトライエリアへ。ゴールは不成功で試合は振り出し(5-5)に戻った。
しかし明大は自陣ショートキックの再獲得からロングゲイン。その後のキックカウンターは慶大FL申の絶妙なカバーディフェンスで一時トライは防いだものの、近場のFW勝負とみせかけての展開攻撃で、明大CTB平翔太主将が2本目。
明大がハイスキルと連携力でリードを奪うと、さらに先制トライと同様に2連続のラインモールから3本目。明大の14点リード(19-5)でハーフタイムを迎えた。
慶大が魅せたビッグスクラム
このまま明大が押し切るのか。
そのムードを変えたのが後半8分のスクラムだ。
明大は直前にアーリープッシュを取られており、スクラムのヒット勝負で勢いを出しにくい状況に見えた。ここで慶大が1番側から押し込んで明大がペナルティ。やや角度がついたかに見えたが、慶大PR井吹勇吾らがヒットで相手の姿勢を崩した事は確かだった。
ここでペナルティを誘った慶大は、このスクラムからワイド展開。
橋本弾介(慶應義塾大学)
前半からエッジまでボールを運べていた展開力でゴール前に迫ると、最後は慶應義塾高出身のSH橋本弾介がパスダミーから歓喜の後半初トライ。ゴール成功で7点差(12-19)に迫り、雰囲気を接戦ムードに一変させた。
さらに慶大はゲームチェンジャーが躍動。
後半開始から入ったFB小野澤謙真。父・宏時さんは日本代表81キャップのトライゲッターだ。そのFB小野澤がキックカウンターから相手を弾いて突破を創出。
ここを足場にしてワイド展開すると、CTB今野椋平主将が抜け出して2連続トライ。同ポジションの両主将がトライを奪い合う展開で、またしても試合は振り出し(19-19)に戻った。
スクラムからのモール攻勢で明大が逆転!
同点となり、後半直後にあった明大の優勢ムードは消えた。
さらに慶大は後半22分にペナルティーゴール成功で3点リード(22-19)。明大は肝心のスクラムで反則を続け、敵陣アタックでもロングゲイン後にノックフォワード(後半24分)。全般的に「焦り」を感じる展開が続く。
だが、明大の選手層が終盤戦で物をいった。
明大、慶大共にフロントローが大きく替わった後半25分。ここで慶大側にペナルティ。明大が久しぶりのスクラム勝利で右奥へ。
古賀龍人(明治大学)
ここでこの日効果てきめんのモールで前進。慶大もしぶとく対抗してトライは防いだが、明大で途中出場したSH田中景翔の一人飛ばしのロングパスから、最後に仕留めたのはこちらも途中出場の明大ルーキー・古賀龍人。
紫紺が黒黄の壁を破り、2点差(24-22)のリードを奪い返した。
100回目の「慶明戦」という舞台
このまま明大が逃げ切るのか。
明大はスクラムのペナルティから終盤、ふたたび敵陣へ。時間消費も視野に入れてラックサイドの肉弾戦で勝負する。だが、25フェーズ目でパイルアップ。慶大が見事にトライエリアを守り切った。
ボールを確保した慶大は自陣からフェーズを重ねる。
10フェーズ目で中盤まで侵入。明大もペナルティをせずに規律正しくディフェンスを続ける。ここで加納孝紘レフリーから「あと一分」の声。守り切れば明大勝利。慶大は逆転に懸ける。
ハーフウェイラインまで入って17フェーズ。ランニングタイムで83分40秒頃に加納レフリーが「もうないよ(ノータイム)」とコール。
ここでボールを保持していた2点ビハインドの慶大。ラック後方に陣取ったCTB今野椋平主将が、ドロップゴールを狙うかと思いきや、ボールをタッチに蹴り出した。
この判断について、慶大CTB今野主将は試合後「勝っていると思ってゲームを進めていた」と反省のコメントをした。
ピッチを斜め上から俯瞰し、心拍数も安定し、勝利へのプレッシャーもない本稿筆者のような傍観的立場の者は、戦況判断において選手よりも圧倒的に有利だ。
一方で、選手は15対15のカオスに放り込まれている。
そんな選手の心境、見えている世界は、選手にしか分からない。誰より勝利を願っていたはずのキャプテンが判断ミスをするほどの舞台、それが伝統の慶明戦なのだろう。
紫紺は「辛勝」。黒黄は「充実」
試合は明大2点リードのまま、ノーサイドを迎えた。
意外な結末となった100回目の慶明戦だが、重要な事実は、CTB今野主将率いる慶大が明大に肉薄したことではないだろうか。
慶大は、この日先発したルーキーSO小林やWTB江頭駿もスタメンだった9月のジュニア選手権で、明大に17-85の大敗を喫している。
チーム全体に「格上」のイメージが刷り込まれてもおかしくない2ヶ月前の大敗から、Aチーム同士の対決で、2点差に迫った。フィジカル対決で引かず、ゴール前で25次攻撃を止め、要所のスクラムでペナルティを誘い、エリア両端でロングゲインを繰り返した。秋のベストゲームであることは間違いないだろう。
思わぬ形で勝利を手にした明大だが、内容は「辛勝」。序盤から肉弾戦でやや圧力を受け、モールで活路は開いたものの、フォワードの近場勝負で獲りきれない場面もあった。
注目の次戦、11月16日の帝京大戦(日)で、明大の現在地が浮き彫りになるに違いない。共に4勝1敗。対抗戦の優勝争いの観点からも必見の大一番だ。
文: 多羅 正崇
多羅 正崇
スポーツジャーナリスト。法政二高-法政大学でラグビー部に所属し、大学1年時にスタンドオフとしてU19日本代表候補に選出。法政大学大学院日本文学専攻卒。「Number」「ジェイ・スポーツ」「ラグビーマガジン」等に記事を寄稿.。スポーツにおけるハラスメントゼロを目的とした一般社団法人「スポーツハラスメントZERO協会」で理事を務める。
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