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リーグワンでは優秀なヘッドコーチによる長期指導がトレンドのひとつだ。今季3連覇に挑む東芝ブレイブルーパス東京は、トッド・ブラックアダーHCの就任5季目でリーグワン初優勝を手にした。
そして早稲田大学の太田尾竜彦監督も就任5季目。
早大OBであり、ヤマハ発動機(静岡ブルーレヴズ)でもレジェンド司令塔として名を馳せた指揮官の下、早大のラグビーが今、驚くべき精度に達している。
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攻撃のたびに下がる――。立ちはだかる「アカクロの壁」
10月26日(日)に行われた早大(3勝)と青山学院大学(3敗)の一戦。まず昨季大学準優勝の早大が披露したのが鉄壁のディフェンスだった。
フェーズを重ねる度に攻撃側が後退していく光景はディフェンスの圧力を象徴するシーンだが、わずか2フェーズで約20mも戻される場面はそう見られるものではないだろう。
早大は開始2分で、「それ」を見せた。
さらに2フェーズ目。パスを読んでいたCTB福島秀法が間合いを詰めてタックル一発。青学大はハーフウェイライン付近から約20m後方に押しやられた。
「早稲田らしさ」の極地
早稲田ラグビーの「らしさ」と言えば、1927年に敢行した前代未聞の豪州遠征に象徴される創造性や進取の精神。プレー面では「ヨコの早稲田」と称される展開力ではないだろうか。
青学大戦で早大が堅守に続いて見せたのは、そんな「らしさ」の極地と思える超高速ラグビーだった。
先制トライは2年生バックスで切り取った。
ここから早大の超高速ラグビーがさらに火力を増す。
確実に前進するキャリー。的確なポジショニングからのボールセキュリティ。監督指導5季目の早大がブレイクダウンを連取していく。
ラグビー 関東大学対抗戦2025(10月26日)
【ハイライト動画】青山学院大学 vs. 早稲田大学
ラック到着からのパスアウトも速いSH糸瀬真周のパスは、距離も出るうえに鋭い。さらに鋭く仕掛けるSO服部がパスを放ると、ディフェンスの外側はもう整備が間に合わない。早大がアタックスピードで圧倒していた。
前半10分には対人能力の高いWTB田中健想が2本目。LO新井瑛大の突破から3本の高速パスを繋いで獲り切った。早大は前半15分にSO服部がランで3本目を奪い、早々に17点をリードする。(17-0)
青学大が逆襲
ここまで圧倒されていた青学大だが、早大が2度目のアーリープッシュでペナルティ。前半17分にようやく敵陣へ。
ここでも早大が守備線を譲らず粘り勝ったが、倒れているプレイヤーへのタックルなどがあって自陣を脱出できない。青学大は桐蔭学園出身のPR相川拓也のスティールを見せ、ふたたび敵陣22mでのラインアウトを迎えた。
なんとか初得点を刻みたい青学大。
勝負をかけたのはゴール前のラインアウトモール。早大も真っ向からフォワードで対抗するが、塊を前進させたのは青学大。HO田中太陽がチーム初得点を奪い、FB井上晴生のコンバージョン成功で10点差に詰め寄った。(17-7)
モールでもトライ量産。早大の充実
青学大に地力を示すトライを奪われた早大だったが、驚異的な高速ラグビーは変わらず。
展開攻撃からU23代表のHO清水健伸が1トライを追加すると、4分後にはふたたび敵陣で攻撃開始。右隅からSH糸瀬&SO服部が矢のようなパスを送る。
2本のパスで中央付近までボールを回すと、FB植木太一が切り込んでラック。順目にSO服部がナナメに走ってギャップを突くと、WTB田中が早々にハットトリックを達成した。(31-7)
ここまでのトライはすべて展開攻撃によるものだったが、前半終了前にはモールでも獲り切った。HO清水は39-7で折り返した後半4分にもモール最後尾からトライを奪取。(44-7)
この日の早大はフォワード(HO清水)とバックス(WTB田中)でそれぞれハットトリックを決める充実ぶりだった。
青学大のエナジーは尽きず。後半38分に意地の一本
早大の高速展開に振り回された場面もあった青学大だが、ファイトは続けた。
FL松ザキ(山に竒)天晴が早大のテンポを断絶させるスティールをみせれば、後半20分にはFB井上晴生がキック「50:22」を披露。強豪校出身者が揃うチームらしく数々の見せ場をつくった。
すると、さらに2トライを奪われて42点ビハインド(7-54)となっていた後半37分。
敵陣奥でLO荒川真斗がスティール。ここから速攻を仕掛けると、FL松ザキ(山に竒)らが近場で力強く前に出る。そしてSO袖山がショートサイドへ移動攻撃。
ボールを受けたWTB山本啓太がライン際を疾走し、後半初得点となるチーム2本目。意地の一本を奪ったものの、最後は早大がラインアウトモールから3本目。
トータルでは10トライ59得点を挙げた早大が、4勝目を挙げた。
一方、4連敗となった青学大。
上位校との対戦経験を活かし、初勝利を奪いたい。次戦は11月9日(日)、東京・スピアーズえどりくフィールド。相手は同じく4敗の立教大学だ。
文: 多羅 正崇
多羅 正崇
スポーツジャーナリスト。法政二高-法政大学でラグビー部に所属し、大学1年時にスタンドオフとしてU19日本代表候補に選出。法政大学大学院日本文学専攻卒。「Number」「ジェイ・スポーツ」「ラグビーマガジン」等に記事を寄稿.。スポーツにおけるハラスメントゼロを目的とした一般社団法人「スポーツハラスメントZERO協会」で理事を務める。
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