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2025-26シーズンの開幕約2か月前。選手たちにとっては自分の存在を印象付けたい時期である。ファンにとっては、プレシーズンマッチで、新シーズンのチームの飛躍を想像できる予告編を見たい頃。
新大会『ジャパンラグビー リーグワン ライジング』は、選手とファンのそんな思いを実現するものだ。若手選手やこれまでプレータイムが限られていた選手たちに出場機会を与え、新シーズンに新しく台頭する目的で創設された。
その『ライジング』が早くも最終節を迎え、10月11日(土)、東大阪市花園ラグビー場では花園近鉄ライナーズ×レッドハリケーンズ大阪がおこなわれた。
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リーグワン、ディビジョン2の大阪ダービーの結果は、ホストチームのライナーズが快勝する80分となった。
太田春樹新監督が率いる新チームは、今季のチームスローガンとして、『TNT』(Takes No Talent)という言葉を掲げている。「才能はいらない。必要なのは姿勢と努力」との思いが込められている。
新しい指揮官は選手たちに、「ボールを持っていないときの動き」とディフェンスをセレクションポリシーの柱にすると伝えて準備を進めてきた。そして、それを実現させるためのトレーニング、チームの結束を強くする仕掛けをしてきた。
『TNT』には、「生まれ持った才能に頼らず、一人ひとりが自らを律し、自らをコントロールできる部分で100%の努力を惜しまないチームになる」との覚悟も秘められている。
ディビジョン1昇格だけを全員で見ている。
レッドハリケーンズ戦は、ファンへ、自分たちがどんな絵を描いて日々を過ごしているのか伝える機会となった。
61-26の勝利は、試合を見つめた2120人のファンを喜ばせた。前後半合わせて9トライを挙げた。
ライナーズが挙げた先制トライは、今季のチームが大切にする、オフ・ザ・ボールの動きが奏功したものと言ってもいい。レッドハリケーンズのアタックを止め続けていた先に訪れたチャンスをものにした。
ジャパンラグビー リーグワン2025 ライジング(10月11日)
【ハイライト動画】花園近鉄ライナーズ vs. レッドハリケーンズ大阪
タックルシチュエーションでこぼれたボールを手にしたのは藤原恵太。豊田自動織機シャトルズ愛知から移籍、今季からチームに加わったSHが判断よく防御の裏に空いたスペース、相手トライライン前のエリアにキックを蹴り込んだ。
そのプレーに誰よりもはやく反応してチェイスしたのは、昨季途中にアーリーエントリーで入団の中川湧眞。快足WTBがボールを拾い、トライラインを越えた。
ライナーズは8分、中川とは逆側のWTB木村朋也もトライを奪った(この日2トライでプレーヤー・オブ・ザ・マッチに選出)。右ラインアウトからの攻撃でCTBステイリン・パトリックが前に出て出したボールを、SO丸山凜太朗、FB雲山弘貴のコンビネーションでチャンスメイク。昨季は先発での出場機会がなかった丸山にとっては、いいアピールの場にもなった。
持ち前のハードなプレーをベースに、後半に入っても積極的にボールを動かし続けたライナーズからは、各ポジションで競争が激化していることが伝わってきた。
経験豊富な選手たちとブレイクスルーしたい若手のバランスもよく取れているように見えた試合だった。
敗れたレッドハリケーンズは、後半に3トライを返した。自分の存在をアピールすることができた選手もいた。
印象に残るプレーで敗者側のプレーヤー・オブ・ザ・マッチに選ばれたのはWTB川村祐太。関西学院大から昨季途中にアーリーエントリーで加わった22歳は、すでにリーグワンデビューは果たしているものの、途中出場でわずかな時間ピッチに立っただけだ。
ディフェンダーのタックルを跳ね飛ばしてトライを挙げたこの日のパフォーマンスは首脳陣にもファンにも、インパクトを残した。
後半からNO8に入ったロトゥ・イニシも2トライを奪い、パワーのあるところを見せた。
トンガ代表の経験もあり、スーパーラグビーのモアナ・パシフィカで実績を残してきた弾丸は、まだ26歳。シーズン中も爆発力でチームに勢いを与えそう。
またレッドハリケーンズはこの日、スクラムで優位に立ち、積み上げてきたものを出した。特に終盤は相手を圧倒する押し。敗戦の中でもファンは、スクラムタイムが来るたびに腕を突き上げ、溜飲を下げたことだろう。
文: 田村 一博
田村一博
前ラグビーマガジン編集長。鹿児島県立鹿児島中央高校→早稲田大学。早大GWラグビークラブでラグビーを始める。ポジションはHO。1989年、ベースボール・マガジン社に入社。ラグビーマガジン編集部に配属される。1993年から4年間の週刊ベースボール編集部勤務を経て、1997年からラグビーマガジン編集長に就く。2024年1月に退任し、現在は編集者、ライターとして活動。
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