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コンバージョンキックを蹴るCTB野中
雨の中にも関わらず、大和スポーツセンター競技場は満席であった。多くの観客が足を運んだのは全勝対決の行方を見届けるため。例年通り着実に白星を重ねる早稲田大学と対戦したのは、明治大学、慶応義塾大学を破って2連勝と波に乗る筑波大学。
対抗戦後半戦に向けて大きな意味を持つ一戦は早大に軍配が上がった。PG(ペナルティゴール)による先制点を許したが、『先手』というテーマを掲げていた早大は、その後すぐに今試合最初のトライをマーク。
3点を重ねながら点差をじわじわと広げ、20-3でファーストハーフを終えた。続く後半は、ピンチを迎えながらも堅牢なディフェンスで筑波大をはね返し、連続トライで試合を決定づけると、39-13でノーサイド。筑波大を下し、関東大学対抗戦無傷の3連勝を飾った。
筑波大の左足のキックオフで始まった今試合は、いきなりターンオーバーを許し、早大は立ち上がりで痛恨のペナルティ。ショットを選択した筑波大は中盤からのキックを難なく決め、早大は3点の先制を許すかたちとなった。
『先手』というテーマのもと、先にトライをマークし、試合を優位に進めたい早大はCTB(センター)福島秀法(スポ4=福岡・修猷館)とFB(フルバック)矢崎由高(スポ3=神奈川・桐蔭学園)の前進をきっかけに好機を得る。
ラインブレイクするLO栗田
5分、敵陣相手ボールスクラムを一次攻撃でターンオーバーした早大は、LO(ロック)栗田文介(スポ4=愛知・千種)の豪快なラインブレイクでゴール前まで侵入。筑波大のペナルティを誘い、今試合最初のトライチャンスへ。
『One Shot』という部員たちの掛け声とともに開始されたラインアウトはスティールを許すものの、早大FW(フォワード)陣の間髪入れないプレッシャーで筑波大のボールキャリアーをインゴールへ運び込む。
ラックからこぼれたボールを杉本安伊朗(スポ3=東京・国学院久我山)が抑え、今試合最初のトライを生み出した。
続く14分、早大は敵陣10mライン付近で組んだマイボールスクラムを大きくプッシュ。筑波大スクラムを破壊しながら前進すると、BK(バックス)ラインのオフサイドを誘発した。
グラウンド中央で得た反則をCTB(センター)野中健吾主将(スポ4=東海大大阪仰星)が3点へ変え、10-3と着実に流れを掴む。
その後もフェーズアタックでSH(スクラムハーフ)糸瀬真周(スポ4=福岡・修猷館)やWTB山下恵士朗(スポ2=早稲田佐賀)がラインブレイクに成功し、筑波大ディフェンスを崩しにかかる。
敵陣で粘り強くFWがアタックを継続したことでノットロールアウェイの反則を得ると、早大が選択したのはまたもショット。さらに3点を追加し、点差を広げていく。
30分にはPR前田麟太朗(スポ2=神奈川・桐蔭学園)が渾身のスティールでチャンスを創出するものの、ラインアウトのミスで得点に繋げることができない。逆に早大はここから2連続の反則で自陣22mラインまで戻されてしまう。
モールを組まれ、ピンチを迎えた早大だったがこの窮地を救ったのはWTB田中健想(社2=神奈川・桐蔭学園)。強烈なタックルでターンオーバーに成功すると、矢崎がすぐに攻撃に転じ、中央でラインブレイク。
矢崎からのキックパスをドリブルでインゴールまで持ち込んだ山下だったが、惜しくも筑波大のキャリーバックの判定。
依然、早大のチャンスは続く。37分、ゴール前でのスクラムを得た早大は矢崎が二次攻撃で前進。タックルされながらもボールを離して再び立ち上がり、フィジカルの強さを見せつけながらトライラインを叩き割った。キックも決まり、20-3で前半を終えた。
ラグビー 関東大学対抗戦2025
【ハイライト動画】筑波大学 vs. 早稲田大学
続く後半も先制点を挙げたのは筑波大。スクラムで早大は反則を犯し、PGで3点を返された。中盤での激しいボールの奪い合いが続く中で11分、早大は自陣でのノックフォワードからピンチに陥る。筑波大にゴール前のラインアウトを献上し、モールを形成される。
しかし、ここで光ったのは早大の見事な守備。「ブレイクダウンでプレッシャーをかけることができた」とFL(フランカー)田中勇成(教4=東京・早実)が振り返ったように、強烈なタックルと密集地帯での素早いリアクションでペナルティを獲得。
力強くゲインするLO新井
一気に陣地を回復して難を逃れた後の19分、LO新井瑛大(教3=大阪桐蔭)が守備の隙間に走り込み、インゴールをこじ開けた。
続く、25分にはスクラムで反則を奪い、流れを完全に奪った早大だったが、続くラインアウトのアタックで痛恨のノックフォワード。ボールを相手に渡してしまうものの、そのスクラムでFWがまたもペナルティを獲得。
攻撃のリズムに乗る早大は29分、前田の巧みなオフロードパスからインゴールに飛び込んだのは、またも矢崎だった。連続トライで34-6とさらにリードを広げ、試合は残り10分となった。
筑波大の再開のキックオフからノーホイッスルトライを許してしまった早大だったが、35分にはNO8(ナンバーエイト)粟飯原謙(スポ4=神奈川・桐蔭学園)がインゴールを叩き割って勝負あり。39-13と26点のリードを奪って全勝対決を制して見せた。
「相手の勢いに飲まれないように、自分たちにフォーカスして自分たちから仕掛けていこうと話した」と試合後の記者会見で野中主将が語ったように、容易にキックを蹴らず、積極的に攻撃を仕掛けてテンポをつかんでいった早大。
先週行われた関東大学ジュニア選手権で、東海大学Bを相手に立ち上がりで苦戦を強いられたことも影響しているだろう。シーズン中に見つかった課題に正面から向き合い、修正を重ねていく姿勢は試合中にも表れていた。
ラインアウトでプレッシャーを受けながらもスクラムとフェーズアタックを中心に立て直し、先制点を奪われながらも焦ることなくトライを量産した今試合の早大からはこれまで以上の安定感が見えた。
『荒ぶる』へのピースを1つずつ集めながら、シーズンの深まりとともに完成度を高めていく早大。昨季掴めなかった栄光に向け、赤黒の戦士たちは歩みを止めない。
文:村上結太/写真:清水浬央、大林祐太、伊藤文音(早稲田スポーツ新聞会)
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