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白いジャージーの15番が力強いランニングでパーティーの始まりを知らせた。
FBエリー・キルダンはこの日、前半8分にトライを挙げ、それ以外にも何度も好走からチャンスを作った。
9月27日(土)、イングランドで開催されていたワールドカップ2025(女子/8月22日に開幕)のファイナルがアリアンツスタジアム(トゥイッケナム)でおこなわれた。
スタンドを埋め尽くした8万1885人の観客の前でイングランドがカナダに33-13のスコアで勝ち、頂点に立った。
2014年大会以来3大会ぶり、3度目のワールドカップ(W杯)優勝は、パワフルに手に入れた。
前半5分、ラインアウトでのターンオーバーから攻められ、カナダのWTBエイジャ・ホーガン=ロチェスターに先制トライを許すも、その数分後、冒頭のようにキルダンが走った。コンバージョンキックも決まり7-5と逆転すると、その後は一度もリードを許すことなく歓喜の時を迎えた。
華麗なヒロインがキルダンなら、イングランドラグビーのど真ん中を貫いているものを世界に発信したのは1番、PRのハンナ・ボッターマンだ。
170センチ、105キロのフロントローは、スクラムでぐいぐい前に出た。ブレイクダウンにタトゥー入りの逞しい腕を突っ込み、何度も相手ボールを奪う。そんなシーンが画面に大きく映ることが、試合が進むほど多くなった。
イングランドは逆転した後、前半19分、モールを押し切る。26分にはスクラムを押し込み、最後はNO8アレックス・マシューズがトライラインを越えた。21-8のスコアでハーフタイムに入った。
後半10分、LOアビー・ウォードがトライを挙げて28-6。勝敗はそこで決したが、実はカナダを絶望させたシーンは前半にあった。
前半27分からの6分強。その時スコアは21-5。追う側は差を詰めようと必死に攻め続けた。
今大会、FWのピック・ゴーの連続×クリエイティブなBKのアタックで対戦国を圧倒し続けたカナダは、その時間帯、積み上げてきたものを全員で出した。フェーズアタックを繰り返し、何度もトライラインに近づいた。
しかし、イングランドの選手たちが繰り出すタックルは重く、正確でボールキャリアーを押し戻した。カナダは最終的にPGで3点を得るのが精一杯だった。
女子ラグビーワールドカップ2025 イングランド大会 決勝(9月27日)
【ハイライト】カナダ vs. イングランド
20回のタックルに成功したFLのサディア・カベアがプレーヤー・オブ・ザ・マッチ(POM)に選ばれたことからも、イングランドがこの試合をディフェンスで制圧したことが分かる。王者はスクラムも含め、相手との接点を制して頂点に立った。
POMのカベアは試合後、「最高の気分です。きょう、ここに来てくれた全員に感謝したい。観客は私たちにとって16人目の選手だった」と話し、世界王者になったことについて、「夢のよう。自分をつねりたくなるほど。長い年月をかけて積み上げてきた結果。それを実現できたことが本当に嬉しい」と続けた。
カナダについて「素晴らしいチーム」と称えながらも、相手の体力を削り、「必要なことはすべてやり遂げた。その成果が試合にあらわれた」とした。
戦前、セミファイナルで大会2連覇中のニュージーランドを圧倒し、高い攻撃力と好調さを感じさせたカナダを推す声も多かった。
しかし、イングランドはそれをねじ伏せた。
ジョン・ミッチェル ヘッドコーチ(以下、HC)は、「カナダには大きな敬意を払っている」と、しっかり準備を重ねてファイナルに臨んだことを伝えた。
「彼女たちはピック・ゴーを得意としていましたが、我々はその対策を徹底的に準備し、実行できた。カナダが勢いを失ったと思います」
描いていたゲームプランをやり遂げた。
「チームが潜在能力を出してくれたことが嬉しい。長く優秀な集団だったが、今日から、偉大なチームと呼ぶにふさわしい。彼女たちは本当に特別なグループ」と続け、選手たちを愛でた。
カナダのケヴィン・ルエHCは、「イングランドは大会を通じて最高の試合を決勝で見せた。素晴らしく組織されたチームで、きょうは単純に相手の方が上でした。イングランド相手に得点すべき場面で決められなければ勝てない」と完敗を認めた。
ただ、スタンドを埋めた大観衆は知っている。カナダが渾身のアタックをし続けたからこその好ゲームだった。赤いジャージーは勝者の倍近い176回のボールキャリーを見せ、イングランドは209回のタックル(カナダは108回)。
その数字に、この試合の面白さとラグビーの深みが詰まっている。
文: 田村 一博
田村一博
前ラグビーマガジン編集長。鹿児島県立鹿児島中央高校→早稲田大学。早大GWラグビークラブでラグビーを始める。ポジションはHO。1989年、ベースボール・マガジン社に入社。ラグビーマガジン編集部に配属される。1993年から4年間の週刊ベースボール編集部勤務を経て、1997年からラグビーマガジン編集長に就く。2024年1月に退任し、現在は編集者、ライターとして活動。
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