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ラグビー コラム 2025年9月26日

初戴冠にまっしぐらのカナダ。イングランドもホームの大観衆の前で、3大会ぶりワールドカップ優勝狙う

ラグビーレポート by 田村一博
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8月22日に開幕したワールドカップ(女子/イングランドで開催)が9月27日に幕を閉じる(いずれも現地時間)。
イングランドとカナダが激突するファイナルは、同日の16時にキックオフ。日本時間の24時、女子ラグビー史上最高レベルの戦いがアリアンツスタジアム(トゥイッケナム)で始まる。

1991年の第1回から数えて10回目の開催となる今大会は、入場者の数で過去のワールドカップ(以下、W杯)を大きく上回っている。
開幕戦のイングランド×アメリカに足を運んだ観客は4万2723人。ブリストルでおこなわれた準決勝には2試合で4万9870人が集まった(スタジアムの収容人員/2万6000人)。
大会全体で44万枚のチケットが売れており、その数は前回大会(2022年、ニュージーランド開催)の3倍以上となっている。

ファイナルのチケットは早々にソールドアウトとなっており、スタンドは満員の8万2000人のファンで埋まると予想されている。
熱が渦巻く中で開催される試合(12時30分キックオフで3位決定戦のニュージーランド×フランスも実施される)は、間違いなく大会史上最高レベルのものとなるだろう。

前回大会、前々大会で準優勝のイングランドは、今回のファイナルで勝てば3大会ぶり3度目のW杯王者となる。
前回(2度目)の優勝は2014年大会。その時のファイナルの相手は、今回頂上決戦を戦うカナダ。再び撃破し、ホームで歓喜の時を迎えられるだろうか。

前回大会4位だったカナダが勝てば初優勝となる。決勝進出は前述の2014年大会だけも、4強進出は過去に4回ある。今大会で歴史を変えたい。
そして、同チームが歴史の中でもっとも世界王者に近いところにいるのは間違いないだろう。準決勝では大会2連覇中だったニュージーランドに34-19と快勝してファイナリストとなった。

その準決勝のパフォーマンスを見る限り、カナダは、チームの力をピークに引き上げてイングランドと対峙できそうだ。
前大会王者に勝った前戦、試合開始直後から見せた集中力はとても高かった。前半だけで4トライを挙げて、ハーフタイムまでに24-7とリードを奪う。後半開始直後にも加点して勝負を決めた(31-7)。

特筆すべきは、FWの強さと柔軟性のあるBKが噛み合っているバランスの良さだ。
先制トライはディフェンス裏へのショートキックから、BK陣がオフロードパスと的確な判断で攻め切った。ハードワーカー揃いのFWたちがトライライン前で激しくぶつかり、そのまま攻め切ることもあれば、最後に外で攻略するシーンも。

この試合でトライを決めた、セブンズ代表としても活躍するWTBアシア・ホーガン=ロチェスター、今大会通算6トライのFBジュリア・シェルの走力が魅力も、チーム快進撃の中心人物はLOのソフィー・デグッディーだ。

デグッディーはワールドラグビーが選ぶ女子15人制の年間最優秀選手賞にノミネートされている。同選手は、ハードワークでチームを前に出すとともにキック力も魅力。今大会は5試合に出場し、3トライ+20ゴール+1PG=58得点と大会通算得点で2位という成績を残している。
この背番号4が自由に動くなら、カナダの勢いはさらに高まるかもしれない。

対するイングランドも充実した戦力を持っている。好調すぎるカナダの印象が強いだけで、秘める実力は世界一の座に就くにふさわしいものだ。特にFW、セットプレーの安定感はチームの基盤となっており、今大会でも他を圧倒する要因となっている。

カナダ同様、イングランドも準決勝のフランス戦(35-17)と同じ先発15人でファイナルに臨む。イングランドの場合、その15人は開幕戦でアメリカを69-7と圧倒した時のスターター15人とすべて同じ。
開幕戦で膝を痛めたFLゾーイ・オルドクロフトも準々決勝以降戦列に戻り、チームに安心感を与えている。

ワールドラグビーが選ぶ女子15人制の年間最優秀選手賞ノミネートのCTBミーガン・ジョーンズ、準決勝で2トライを挙げた好ランナーのFBエリー・キルダンら才能ある選手が揃いながらも、カナダを追っているような情勢に見えるのは、今大会ここまで、同チームの「ベスト」と言える戦いを見せることができていない点にある。
FWとBKの噛み合った攻守は、ファイナルで見られるか。アウトサイドのディフェンスにも整備が必要だ。

チームを率いるジョン・ミッチェル ヘッドコーチは、大会での足取りを振り返り、「私たちがこの大会で素晴らしかったのは、試合ごとに相手をしっかり分析し、その特徴に応じて戦ってきたこと。完璧である必要はありません。優勝するために必要なのは完璧であることではなく、チームをどう仕上げるか」と話し、「カナダとの戦い方はしっかりとイメージできている」とした。

どちらが勝つにしても、大観衆のボルテージが最高潮に達する局面が何度もある試合になるだろう。
女子ラグビーの進化が詰まった80分が人々を惹きつける。

文: 田村 一博

田村一博

前ラグビーマガジン編集長。鹿児島県立鹿児島中央高校→早稲田大学。早大GWラグビークラブでラグビーを始める。ポジションはHO。1989年、ベースボール・マガジン社に入社。ラグビーマガジン編集部に配属される。1993年から4年間の週刊ベースボール編集部勤務を経て、1997年からラグビーマガジン編集長に就く。2024年1月に退任し、現在は編集者、ライターとして活動。

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