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レスリー・マッケンジー ヘッドコーチ(以下、HC)と選手たちが繰り返し口にしてきた、「サクラフィフティーンのやってきたこと、日本のラグビーを出し切る」の言葉を体現した最終戦となった。
イングランドで開催中のワールドカップ(女子/以下、W杯)の第3節、プールステージ最終日の9月7日、サクラフィフティーンの愛称で親しまれる女子日本代表がスペイン代表に29-21のスコアで勝ち、大会での戦いを終えた。
同チームのW杯での勝利は、2017年大会の(順位決定戦の)香港戦以来だ。
掲げていたトップ8入り(準々決勝進出)には届かなかった。しかし、アイルランド(14-42)、ニュージーランド(19-62)と戦う中で、ナイーブさを払拭し、自分たちの強みを再認識した。3戦目は、自分たちから仕掛けて先制し、後半に突き放す戦いを実現できた。
FBで先発してキックの攻防で活躍、先制トライも挙げるなどよく働いた西村蒼空は、プレーヤー・オブ・ザ・マッチに選ばれるパフォーマンスを見せた。
西村は試合直後の場内インタビューで、「自分たちのやってきたラグビーを出し切って勝てた」と話し、勝利という結果だけでなく、チームが存在価値も示すことができた嬉しさを伝えた。
選手たちの誰もが「未来の日本の女子ラグビーのためにも絶対に勝ちたい」と強い意志で臨んだ試合。その勝利は、観客の大きな声援からも、日本スタイルの魅力に富んでいた。
穏やかな天候の中で、12時のキックオフ。サクラフィフティーンは立ち上がりからよく動いた。
先制点は前半6分。スクラムで反則を誘って得たペナルティキック(以下、PK)で敵陣に入り込む。そこからチャンスをつかんだ。
最初の5点はスクラムが起点。グイッと押し込み、SH阿部恵と、FWのうしろにいた今釘小町が左に動いて攻め、最後はタッチライン際を駆け上がったFB西村にラストパスを送った。
自信を持つセットプレーと、コンビネーションを使って挙げた5点だった。
女子ラグビーワールドカップ2025 イングランド大会 プールC(9月7日)
【ハイライト動画】日本 vs. スペイン
日本の前半の得点は、実はそれだけ。スペインに反則から速攻を仕掛けられてトライを返されたのは11分。38分には自陣でのラインアウトから攻められ、オフロードパスをつながれてトライラインを越えられた。
全員が積極的に動いたが、ブレイクダウンなどで反則をして、なかなか自分たちに流れを持ってくることができなかった。
しかし、ハーフタイムにあらためて自分たちがすべきことを確認し合って後半を自分たちの時間にした。
前回大会から3年の間に積み上げてきたものがあるから、立ち返る場所があった。ロッカールームで相手より動くことを誓い合ってビッチに出た。
後半に追撃のトライを挙げたのはFL長田いろは主将だ。敵陣でのラインアウトをしっかり確保して、しつこく攻め続ける中でもコミュニケーションを密に保った。背番号7はわずかなスペースに入り込みながらパスを受け、走り切った。
コンバージョンキックも決まり、12-14と迫ると、試合の流れは日本に傾き始めた。
特に後半10分過ぎからの時間帯に流れをつかんだのが大きかった。
強みを出して戦った。
ラインアウト後のモールでPKをもらい、敵陣に入るとフォワードが圧力をかけ続けた。
後半17分の逆転トライは相手ゴール前でしつこく攻め続けて反則も誘い、チャンスエリアに居座った。ボールをねじ込んだのはPR北野和子。17-14とした。
その5分後の逆転トライはWTB今釘が挙げた。その場面でもフォワードがゴール前で攻め続けておいて、最後は空いたスペースにバックスでボールを運んだ。
そのトライも、モールで反則を誘って攻め込み、自分たちのスタイルに持ち込んだ。
22-14とした後も集中力高く戦い続け、またもや相手反則から攻め、モールを組む。今度はそのまま押し込んで27-14と差を開く。コンバージョンキックも成功させ、29-14として試合を決めた(後半30分)。
その後スペインに1トライを許すも、地力で相手を上回って勝った。
試合後のチーム全体で組んだハドルの中でマッケンジーHCは、「このチームを誇りに思う」と話した。
世界ランキング5位と3位のチームには届かなかったが、その相手に通じる武器を作り、見る人を惹きつけるスタイルの実現を、試合を重ねるごとに長くした。
次は、ワールドカップのような大舞台でも初戦の最初から全開で戦えるチームにならないといけない。
ただ学ぶだけでなく、勝利したことによって、歩んでいくべき道を照らした3試合だった。
文: 田村 一博
田村一博
前ラグビーマガジン編集長。鹿児島県立鹿児島中央高校→早稲田大学。早大GWラグビークラブでラグビーを始める。ポジションはHO。1989年、ベースボール・マガジン社に入社。ラグビーマガジン編集部に配属される。1993年から4年間の週刊ベースボール編集部勤務を経て、1997年からラグビーマガジン編集長に就く。2024年1月に退任し、現在は編集者、ライターとして活動。
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