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今季、明治大学は春季大会Aグループで4勝1敗の2位。大会における唯一の敗戦は帝京大戦のみだが、完封(0-31)での力負けだった。『ハイブリッド重戦車』が勝負の夏でどう成長するのかが楽しみだ。
一方の筑波大は、春季大会Bグループを5戦全勝で制した。春の東日本セブンズも明大を36-14で下して優勝しており、目標の日本一へ着実に成果を積み上げている。
公表された両軍の先発メンバーを見てみると、両軍ともに主力が並んだ。
筑波大はPR小澤一誠(4年)、HO前川陽来(4年)、PR茨木海斗(2年)、LO磯部俊太郎(3年)、LO白丸智乃祐(3年)。バックローはFL茨木颯(4年)、FL大町尚生(4年)、NO8浜浦幸太郎(2年)。
バックスはSH高橋佑太朗主将(4年)、SO楢本幹志朗(4年)、CTB今村颯汰(3年)、CTB東島和哉(4年)。そしてバックスリーはWTB内田慎之甫(1年)、WTB濱島遼(4年)、FB増山将(2年)となった。
一方の明大は、フォワードがPR田代大介(3年)、HO西野帆平(4年)、PR山口匠(3年)、LO亀井秋穂(3年)、LO物部楊大朗(3年)。バックローも3年生が多くFL大川虎拓郎(3年)、FL中川功己(3年)、NO8藤井達哉(3年)となった。
バックスはゲームキャプテンのSH柴田竜成(4年)、そしてスタンドオフには萩井耀司(2年)を起用。伊藤龍之介(3年)は東海隼(4年)とセンターコンビを組み、バックスリーはWTB海老澤琥珀(3年)、WTB白井瑛人(2年)、FB古賀龍人(1年)という布陣となった。
前半に高い総合力を示したのは明大だ。
序盤こそアタックの連係ミスが目立ったものの、前半4分のファーストスクラムでは強烈なプレッシャーでペナルティ。自慢のセットプレーから自陣を脱出した。
大学ラグビー 菅平合宿 2025 練習試合(8月14日)
【ハイライト動画】明治大学 vs. 筑波大学
すると直後のラインアウトからの攻撃でファーストトライが生まれる。
アタックの連携ミスでボールがこぼれたが、中盤付近から再アタック。高精度の複層攻撃を繰り出して、俊足のCTB東海隼が右隅で2対1をつくる。
パスダミーからさらにゴール前に迫ると、最後はハイブリッド重戦車を象徴する一人、パワーと運動量、スピードも備えるFL中川功己が右隅で片腕トライ。先制点を奪って5-0とした。
一方の筑波大は直後、ファイターのLO白丸智乃祐が敵陣ラックでプレッシャー。相手ペナルティを誘って敵陣ラインアウトの好機を呼び込んだ。
しかし前半はフォワード戦で劣勢気味。明治大がFWバトルで高い圧力を見せつけ、筑波大のモールを止めた後、ゴール前のフォワード戦でもノックフォワードを誘ってみせる。
危険エリアを脱した明大は、今度はモールで2本目。展開攻撃とモールによる2連続トライを奪取し、10ー0とリードを広げる。
さらにモールで1本を追加した明大が15-0とリード。ただ筑波大もスクラムを修正して2連続のペナルティを誘い、一進一退の攻防が続く。
ここで押し切ったのが明大だ。2年生SO萩井耀司から桐蔭学園同期のWTB白井瑛人へ内返しのパス。
ここからWTB白井の独走が生まれ、筑波大FB増山将が2連続の果敢なタックルでトライを防ごうとするものの、明大が押し切って4本目。22-0の明大リードで前半が終わった。
後半になって明大は14人を交替させる。筑波大はフロントロー、ハーフ団などの主軸は残した編成で後半に臨んだ。
すると開始2分、筑波大に鮮やかなトライが生まれる。
SH高橋主将のパスアウトから、右隅から左隅へ一気にボールを運ぶ。途中出場のルーキーWTB深田衣咲(東福岡)が柔らかいステップでタックルを振り切り、数的優位を生む。ここから筑波大がワイドアタックで1トライを返した。
そして半年間のリハビリから復帰したSO楢本幹志朗が難しいコンバージョンを決めて7点追加。
さらに15点差(7-22)で迎えた後半8分だ。
キックカウンターから敵陣に入ると、こぼれ球を拾ったSH高橋主将が、ケガから復帰した途中出場のルーキー、新里堅志(桐蔭学園)のランに反応。4年生とルーキーの連携から突破が生まれ、そのまま新里がゴール下へ。コンバージョン成功で8点差に迫った。
後半メンバーがほぼ入れ替わった明大はラインアウトが不安定。前半優勢ムードだったスクラムでも主導権を握れず、セットプレーという土台がぐらついた。
アタックは筑波大の激しい守備もあってミスで終わる事が多く、チームとしての総合力に課題を残す結果になった。
一方の筑波大は再三にわたりエリア隅を攻略。的確なラインの深さ、パス技術も光った。後半18分には規律面の乱れに乗じて敵陣に入ると、敵陣ラインアウトからボール展開のスペシャルプレー。
途中出場のボンダレンコ イーゴリ(武蔵野RS-都立武蔵高)が相手を弾いてゴール前に迫ると、モメンタムを生かして3連続トライ。ゴールは失敗もこれで3点差(19-22)。
明大にとってショッキングな失点は後半25分だ。
敵陣で近場のフォワード戦を仕掛けていたが、筑波大が前半から圧力をかけていたブレイクダウンでターンオーバー。
直後に右大外を急襲。ルーキーWTB内田慎之甫が2段階のステップで突破すると、日本代表合宿にも招集された2年生LO中森真翔にパス。最高のランナーにボールが渡り、仲間の歓声を受けながら大きなストライドでインゴールへ。
筑波大が後半怒濤の4連続トライで、ついに逆転。
前半の貯金を失い、逆に4点ビハインド(22-26)を背負ってしまった明大だが、大勢は変わらず。ラインブレイクもあるがノックフォワードなどで攻撃権を失う。
一方の筑波大はセットプレーからの洗練されたアタックを起点に、さらに途中出場の林勇太が5本目(31-22)。筑波大が華麗なる逆転劇で、1ヶ月後の前哨戦を制した。
筑波大は昨年も菅平で明大に勝利しているが、本番である対抗戦は6位に終わり選手権出場を逃した。昨季と同じ轍を踏むことだけは避けたい。
一方の明大だが、前半は筑波大を完封する大学トップクラスの攻守を披露した。しかし前後半で真逆の展開になったことで、一貫性に課題を残した。
果たして一か月後の再戦で、両校はどんな姿で現れるのか。対抗戦の開幕が今から待ち遠しい。
文: 多羅 正崇
多羅 正崇
スポーツジャーナリスト。法政二高-法政大学でラグビー部に所属し、大学1年時にスタンドオフとしてU19日本代表候補に選出。法政大学大学院日本文学専攻卒。「Number」「ジェイ・スポーツ」「ラグビーマガジン」等に記事を寄稿.。スポーツにおけるハラスメントゼロを目的とした一般社団法人「スポーツハラスメントZERO協会」で理事を務める。
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