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試合開始から20分までに10-0と先行した。しかし、後半に入って13-19と逆転される。
最終的には32-19と勝ったのだから積み上げてきた力があることは証明した。約1か月後にワールドカップ(以下、RWC2025)の舞台に立つ女子日本代表、サクラフィフティーンにとっては、勝って課題も得られるいい機会となった。
7月19日(土)にミクニワールドスタジアム北九州(福岡)でおこなわれた『太陽生命JAPAN RUGBY CHALLENGE SERIES 2025』、女子日本代表×女子スペイン代表で勝ったサクラフィフティーンは、7月26日(土)にも同じカードを秩父宮ラグビー場で戦う。
スペインはRWC2025でも同じプールBに入り、9月7日、ヨークでプールステージ最終戦を戦う相手だ。
試合前の時点でワールドランキングは日本が11位、スペインが13位。ともに自分たちの現在地を得られる顔合わせとなった。
この試合、サクラフィフティーンはスペインの走力+パワーがあるランナーに走られ、不安定な時間帯もあった。
しかし、高い集中力で試合の入りを自分たちの時間とし、攻守で規律高く戦ったから最終的に勝利を得ることができた。
先制トライは前半8分。相手ゴール前、左サイドのラインアウトから。モールを組んだ。その後、何度か近場を攻め、最後はPRの小牧日菜多が低いボールキャリーでディフェンダーの圧力を突き破る。トライラインを越えた。
2つ目のトライは17分。スペイン陣に入っての、安定したスクラムから攻めた。
バックスが縦に走り、ゴール前のエリアに近づいた後、スクラムを終えたFWの選手たちがアタックシェイプを作り、攻め立てる。最後はSH阿部恵の動きに反応した小牧がタックルを受けながらも再びトライラインの先にボールを置いた。
この試合、サクラフィフティーンのスクラム、ラインアウト、モールは安定していた。
長い合宿の間にFW陣は、マイク・ベイクウェル アシスタントコーチのもと、地道なトレーニングを繰り返した。
特別なことはしていない。ベテランの齊藤聖奈は、「本当に基礎的なことを何度も何度も繰り返すんです。そして、全員でまっすぐ押すことだけを徹底する」。それが実を結んでいる。
その成果が出たのが最終盤、残り15分の時間帯に入ってからだ。ここでも小牧がチャンスを作った。
ラグビー女子日本代表テストマッチ2025(7月19日)
【ハイライト動画】日本 vs. スペイン
後半24分、相手のトライラインドロップアウトのボールを受けた後、サクラフィフティーンは攻撃に転じる。SOの位置に入っていた山本実のパスを受けた背番号1は約30メートルを走ってチームを敵陣深くに前進させた。
その後の攻撃でゴール前に殺到した選手たちは、精度高く何度もボールをキャリーし、途中出場のHO谷口琴美がゴールポスト下に5点を刻む。山本のコンバージョンキックも決まり、後半29分に20-19とした。
その後の10分間もスペイン陣で過ごしたサクラフィフティーンは、32分、39分とトライを重ねた。
両方ともモールを押し切ったもの。正確なラインアウトスローイング+キャッチ→モールから、低く、まっすぐ、全員で押して背番号16がグラウンディングするシーンが2度続いた。
この日の5トライすべて、フロントローが得点者となった。試合の2日前、ベリック・バーンズ アシスタントコーチは「(国際舞台で戦う)相手はどこも、スクラムやモールで崩そうとフォーカスしてくる。そこを強化してきたから、もともと得意としてきた日本のはやいテンポがより生きる」と話した。
この日もその要素が多く見られた。
チームが勝ち切った要因の一つに、この日キャプテンを務めた向來桜子の存在も挙げたい。
レスリー・マッケンジー ヘッドコーチはキャプテンのコミュニケーション能力を「うるさいくらいに声を出す」と高く評価。そのリーダーシップを称えた。
試合開始直後、スペイン代表に自陣でボールを動かされ続けた際、向來が鋭い一撃で相手の勢いを止め、反則を誘発。PKを得たプレーも、その後の先制機に結びついたことを考えれば価値のあるプレーだった。
スペインとの第2戦はメンバーを変えて臨むことになるだろう。しかし初戦同様、チームとして積み重ねてきたものが秩父宮でも再現されるはずだ。
文: 田村 一博
田村一博
前ラグビーマガジン編集長。鹿児島県立鹿児島中央高校→早稲田大学。早大GWラグビークラブでラグビーを始める。ポジションはHO。1989年、ベースボール・マガジン社に入社。ラグビーマガジン編集部に配属される。1993年から4年間の週刊ベースボール編集部勤務を経て、1997年からラグビーマガジン編集長に就く。2024年1月に退任し、現在は編集者、ライターとして活動。
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