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スーパーラグビー・パシフィックで豪チーム最高位(3位)だったブランビーズが、7月9日(水)、4年に一度結成される英愛ドリームチーム「ブリティッシュ&アイリッシュ・ライオンズ」を地元キャンベラで迎え撃った。
最初に大歓声を浴びたのは、同舞台(GIOスタジアム)で12年前にライオンズ撃破の快挙を達成したことがあるブランビーズだ。
ブランビーズは序盤、キック処理やラックで連続ペナルティを重ねたライオンズを攻め立てた。ラインアウトから一度はモール、二度目はPRリース・ヴァン・ネックを走らせるサインプレーでトライエリア目前へ。
最後は前半4分、NO8トゥアイナ・タイイ・トゥアリマが片手でグラウンディング。幸先良く5点(ゴール失敗)を先制した。
ブランビーズは守備でも奮闘した。パスミスなど細かいエラーを重ねるライオンズにも助けられ、開始10分間を5点リード(5-0)のまま通過。
ライオンズには敵わない――そんな感触のブランビーズの選手は一人もいなかっただろう。むしろ「やれる」の手応えを掴んでいた。
「選手を誇りに思います。私たち(ブランビーズ)の守備は質の高いものでしたし、このユニフォームにどれだけ誇りを持っているかが伝わってきました」(ブランビーズ、SHライアン・ロナ-ガン主将)
しかし前半は明らかな差もあった。スクラムだ。
前半14分にブランビーズが自陣22m内で精度不足のパス。みずから相手投入スクラムのピンチを招くと、ここでライオンズがスクラムを制圧。「破壊的」とも言える強烈スクラムでペナルティを誘うと、ここから連続攻撃。
ブリティッシュ&アイリッシュ・ライオンズ2025 オーストラリア遠征(7月9日)
【ハイライト動画】ブリティッシュ&アイリッシュ・ライオンズ vs. ブランビーズ
だがブランビーズは押し切られない。
前半20分にはブランビーズFBアンディ・ミュアヘッドが、相手WTBジェームズ・ロウのグラウンディングを脚で阻止するスーパープレー。一方のWTBロウは決定力が不安視される結果となった。
さらにSHロナ-ガン主将のスティールも飛び出したブランビーズだが、1対1のフィジカル勝負で押し込まれ、ライオンズがモメンタムを得る。
確実にエリア隅を余らせたライオンズは前半28分、WTBロウが2本目を奪取。勝ち越しトライ(ゴール)で、ライオンズが開始約30分でこの日初めてリードを奪った。(12-5)
だがブランビーズは取られても取り返した。
SHロナーガン主将のロングキックからエリア前進。ここでLOケイダイン・ネヴィルがスティールを披露。ゴール前に入ると、モールは止められたがバックドアから左大外へ展開。
大きなスペースを与えられた俊足WTBコーリー・トゥールが左隅へ。爆発的な歓声を浴びながらチーム2本目を奪った。
ブランビーズは前半終了前にゴールライン・ドロップアウトからのカウンターで1トライを奪われ、9点ビハインド(10-19)となったが、健闘ムードで試合を折り返した。
だが後半スタートは、セットプレーの安定性を欠いたブランビーズが劣勢に。
後半立ち上がり、自軍投入ラインアウトでボールを確保できず、スクラムでもペナルティ。ボールを保持できず自陣方向へ後退すると、ライオンズが攻撃開始。
CTBガリー・リングローズ(アイルランド代表)の突破が生まれ、途中出場したマーカス・スミス(イングランド代表)のショートキックを再獲得したCTBリングローズがスコア。
前戦ワラタス戦でもセットプレーが光ったライオンズが、後半は快調に滑り出した。
このままライオンズが一方的に押し切るのか。しかしそうはならなかった。
ブランビーズはコリジョン(衝突局面)で劣勢。アタックでフェーズを重ねても突破口が見えない。
ここでWTBトゥールがショートキック。ライオンズがこの処理に手こずった結果、ゴール前スクラムのチャンス到来。ここでペナルティを回避したブランビーズが、一次攻撃で鮮烈なクリーンブレイク。
CTBオリー・サプスフォードが鋭いカットインで飛び込み、チーム3本目。取られても取り返すブランビーズは、この日初のコンバージョン成功で17-26と食らいつく。
すると後半20分にはトライエリア目前に迫ったライオンズが、この日初めてペナルティゴール(PG)を選択。
確実に3点を取りにいったライオンズに対し、会場からはブーイング。ライオンズに逆にPGを“選択させた”とも言える展開で、ブランビーズの実力が際立つシーンとなった。(17-29)
フォワード戦、フィジカル勝負で上回るライオンズは、その後にモールで追加のトライ。スコアは残り約5分で36-17。ブランビーズは敗色濃厚だ。
しかし、ラストシーンの主役はブランビーズだった。
まず後半34分、ブランビーズはペナルティを重ねたライオンズに対して小細工なしのラックサイド勝負。フォワードが地道にじりじりと前進する。
ここで1トライをもぎ取ったブランビーズは、ふたたび12点差(24-36)とする。さらに最終盤、自陣で粘り続けるブランビーズ。80分経過後のレッドゾーンでライオンズもトライを狙う。
81分49秒。ライオンズのLOチェサムがトライエリアを割った。ここでレフリーはトライのコール。しかし――TMO判定に入ってトライを再チェック。
ここでしぶとく体を割り込ませたのは、前半に一度同様のトライセーブがあったFBミュアヘッドだった。
判定はノートライ。結果としてライオンズは36-24で遠征4連勝を飾ったが、豪代表8人を欠きながら健闘したブランビーズに、地元ファンからの大きな拍手が送られた。
ブランビーズの指揮官、元豪代表でリコー(BR東京)でもプレーした経験のあるスティーブン・ラーカムHCは、選手の健闘を誇った。
「前半はいくつかミスがありましたが、全体的には素晴らしいプレーだったと思います。ベンチから出場した選手たちも素晴らしい働きを見せ、全員が貢献しました」(ブランビーズ、ラーカムHC)
一方で、ワラタス戦に続いて「快勝」とはならなかったライオンズのLOマロ・イトジェ主将は「ブランビーズは非常に良いチームで、試合を通して我々にプレッシャーをかけてきました」と相手を讃えつつ、同時にチームの前進を強調した。
「接戦になりましたが、正しい方向へ一歩を踏み出したと言えます。敵陣22m内での精度など改善すべき点はいくつかありますが、前進です」
「私たちは、個人が集まってチームを作り上げています。一緒にプレーすればするほど、チームは良くなります。それを加速させる必要があるだけです」(ライオンズ、LOイトジェ主将)
ライオンズの次戦は7月12日(土)の「オーストラリア&ニュージーランド連合」戦。その一週間後の19日(土)には、いよいよ全3戦あるオーストラリア代表「ワラビーズ」とのテストマッチが始まる。
文: 多羅 正崇
多羅 正崇
スポーツジャーナリスト。法政二高-法政大学でラグビー部に所属し、大学1年時にスタンドオフとしてU19日本代表候補に選出。法政大学大学院日本文学専攻卒。「Number」「ジェイ・スポーツ」「ラグビーマガジン」等に記事を寄稿.。スポーツにおけるハラスメントゼロを目的とした一般社団法人「スポーツハラスメントZERO協会」で理事を務める。
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