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トップ国を迎える喜びと誇りがいろんなところから感じられた。
スタジアムに足を運んだ人々の表情が上気している。鮮やかな色の光で空間を装飾し、華やかさも見られた。そして、ナショナルアンセムを歌うヒゲの戦士たちの叫び。
7月5日にトビリシでおこなわれたジョージア×アイルランドには、テストマッチの空気が充満していた。
雨の降るミヘイル・メスヒ・スタジアムには、世界ランキング3位のチームを、自国の戦士たち(世界ランキング11位)が倒してくれると期待する多くのファンが訪れていた。
しかし来征者は、同国ラグビーの充実を伝えるパフォーマンスを見せて地元ファンの夢を砕いた。
中核選手16人がブリティッシュ&アイリッシュ・ライオンズのオーストラリア遠征に参加していても、グリーンのジャージーを着る者として変わらぬスタイルを実践。最終的には34-5のスコアを残した。
勝者が見せた立ち上がりの集中力と遂行力は、世界上位国の充実を伝えるものだった。
キックオフから僅かな時間で先制点を挙げ、8分で14点のリードを奪って流れを自分たちの方に寄せた。
キックオフのボールを蹴り上げたのはアイルランドの10番、サム・プレンダーガスト。22歳の司令塔はこの日、あふれる才能を見せつけた。
キャプテンを務めたSHクレイグ・ケーシーとのコンビネーションでゲーム全体を思うように動かす時間帯を作った。
試合開始直後に得たハーフウェイ付近右のラインアウトから攻めたアイルランドは、ピッチ中央で意図的なラックを作り、直後にSHケイシー主将がコンテストキックを蹴り上げる。
それをCTBのスチュアート・マクロスキーがキャッチし、あっという間に敵陣に攻め入った。
そして、ここからの9番、10番の球の動かし方と攻める方向の選択が抜群で、それに呼応する周囲の選手たちの動きも的確だった。
次々にディフェンダー間に走り込んでチャンスを広げる。最後はアドバンテージの出る中でSOプレンダーガストが防御裏にショートキック。それを初キャップのWTBトミー・オブライエンが受けてトライを挙げた。試合開始から1分36秒後のことだった。
ラグビー テストマッチ2025(7月5日)
【ハイライト】ジョージア vs. アイルランド
オブライエンは8分にもトライを挙げた。この時のきっかけはキックレシーブからのカウンターアタックだった。
自陣から攻めたアイルランドは、ブレイクダウンから出たボールをSOプレンダーガストが再び防御裏にショートキック。それをオブライエンが足にかけてジョージア陣トライラインに迫った。
その地点で得た自ボールスクラムではFWが力を集約して爆発させた。
スクラムに命を懸ける相手を押し込んでアドバンテージを得る中、右へ出る。ディフェンダーが内側に寄る中、ロングパスが外で待つ14番へ。オブライエンが再度5点を追加し、プレンダーガストもゴール成功。先制パンチを繰り出した。
序盤にリードされ、最終的にも点差をつけられて敗れたジョージアだったが、そのスコアから想像する以上に持っている力は高いと感じさせた。
一人ひとりの当たりの強さ。モールを組んだ時の前への推進力。通用するところがたくさんあった。結果、その後なかなか得点は動かなかった。
ジョージアはバックスにも高い才能があることを示した。
トライはTMOを経てキャンセルとなったけれど、12分過ぎに見せたFBダヴィト・ニニアシヴィリの加速と、パスを受けたWTBアカキ・タブツゼの走りは一級品だった。
ハーフタイム直前(44分33秒)、ジョージアは粘りに粘り、自陣から泥臭く相手トライライン前まで前進し、ついにモールを押し切って5点を得てハーフタイムを迎えた。
しかしアイルランドは後半が始まってすぐの時間を制して、再びモメンタムを得た。
キックレシーブ後、中盤から左サイドを駆け上がったのは途中出場のカルヴィン・ナッシュ。サポートしたFLライアン・ビアードがさらに前進してオフロードパス。それを受けたSHケイシー主将が走り切り、プレンダーガストのゴールも成功。21-5とした。
その後、アイルランドは後半15分、22分とPGで加点した。相手の軽率なミスを着実にスコアに変えて試合を決めにかかる。
27-5で迎えた30分にはSOプレンダーガストの足技がまたも冴え、キックパスを受けたFLニック・ティモニーがトライ(ゴール成功)。ファイナルスコアの34-5とした。
ブリティッシュ&アイリッシュ・ライオンズツアーへの参加メンバーが抜けた代表チームは、価値が低く見られる時がある。しかし、やっと巡ってきたチャンスを生かそうとするアイルランドの選手たちの意欲を強く感じる試合だった。
チームを率いるポール・オコンネル暫定ヘッドコーチも、「選手たちの意志を感じる試合だった」と評価したと、現地報道機関が伝えている。
敗れたジョージア代表のリチャード・コックリルHCも、「アイルランドは本当に素晴らしかった」と勝者をリスペクトした上で、「私たちの選手たちも最後まで戦い抜き、良い内容を見せ、チャンスもあったが、それを生かせなかった。よい教訓を得た」と続けた。
ジョージアは後半も見せ場を作り、17分にFWがモールを押し切った時にはスタジアムが大歓声に包まれていた。
雨の中でこの試合を見つめたファンは、トップ国の洗練されたプレーと自国選手の勇気と可能性をあらためて感じただろう。
伝統国のサマーツアー独特の魅力が伝わる一戦だった。
文: 田村 一博
田村一博
前ラグビーマガジン編集長。鹿児島県立鹿児島中央高校→早稲田大学。早大GWラグビークラブでラグビーを始める。ポジションはHO。1989年、ベースボール・マガジン社に入社。ラグビーマガジン編集部に配属される。1993年から4年間の週刊ベースボール編集部勤務を経て、1997年からラグビーマガジン編集長に就く。2024年1月に退任し、現在は編集者、ライターとして活動。
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