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誰もこの試合で終わるつもりはない。しかし、目の前の80分のことだけを考えて結果を残さない限り、もうひとつ上のレベルの、次の舞台に立つことはできない。
6月28日(土)に秩父宮ラグビー場でおこなわれる『リポビタンDチャレンジカップ2025 ラグビー日本代表強化試合』、JAPAN XV対マオリ・オールブラックスは、両チームにとって今季初戦。続きがある80分となる。
JAPAN XVとして戦う選手たちは、7月5日(土)、12日(土)に控えるウェールズ代表とのテストマッチに出るためにも、高いパフォーマンスを出してチームに貢献したい。
マオリ・オールブラックスもこの試合を終えたらすぐにニュージーランドへ帰国し、7月5日(土)には北島の北部、ファンガレイでスコットランド代表と戦う。
この試合で指揮を執るJAPAN XVのニール・ハットリー ヘッドコーチ(HC)代行はメンバー選考について、エディー・ジョーンズHCとプランと大枠を共有した上で、現時点でベストな状態にある選手たちを選んだとした。
日本代表に選出された選手と、5月に大分でJAPAN XVとして活動してきた選手の中の一部選手+6月上旬に菅平で実施された15人制男子トレーニングスコッド合宿で鍛えられたグループの一部選手が、宮崎合宿に参加している。
その中からすぐに戦える状態にある者と、プレータイムが必要な者で23人を構成した。
リーグワンのトップ4に勝ち残ったチームから日本代表に選出された大部分の選手は、コンディション面からも、ウェールズ代表戦へ向けての調整を続けている。
その状況から考えれば、マオリ・オールブラックス戦に出る選手たちにとっては、ウェールズ代表戦への道は、漆黒のジャージー相手に超速ラグビーを実現しない限り開かないだろう。
アタックに関しては昨季からの積み上げを実行中で、ディフェンスは昨年バージョンを改善し、新たなことに取り組んでいる現代表。ハットリーHC代行も、「ここまで取り組んできたことをマオリ戦で出し、テストマッチレベルでも出せるのかどうかを見たい」と話している。
ゲームキャプテンを務めるのは、日本代表に選出されており、ディフェンスリーダーを託されているFL下川甲嗣。バイスキャプテンはSH福田健太が務める。
ハットリーHC代行は、「下川など昨シーズン(日本代表でも)たくさん試合に出た選手と若手、そしてリーグワンで活躍した選手がいて、(それぞれの経験や持ち味が)うまくブレンドされている」とする。
指揮官がそれぞれの選手への期待を口にする。
SOサム・グリーンについては、所属する静岡ブルーレヴズでのパフォーマンスを高く評価。「代表合宿でもいい練習を重ねています。レヴズでのプレーを出してほしい」と期待を込める。
HO江良颯については、攻守のあらゆる面で高評価。大分、菅平での活動を通してアピールしてきた青木恵斗(NO8)に関しても、「ポテンシャルを示して次につなげてほしい」。
唯一の大学生で15番を背負う竹之下仁吾については、取り組む姿勢や重ねる努力を認めた上で、ハイボールへの強さなども評価し、さらなる飛躍を期待している。
「まず勝利」と言うハットリーHC代行の考えも理解し、下川ゲームキャプテンも、「自分をアピールしながらも、それをジャパンファーストの中でおこなうことが大事」と話した。
そして具体的なプレーとしては、「超速ラグビーの発信源はブレイクダウン。そこで負けないように注力すること」と、相手が得意とするターンオーバーやキックカウンターからの、アンストラクチャーの展開に持ち込まれぬことと考える。そのためにも、「前へ出てディフェンスをする」と誓った。
対するマオリ・オールブラックスは、来日メンバーがアナウンスされる前日の6月23日に集合。その翌々日にニュージーランドを出発し、日本での2回の練習を経て試合に臨む。
チームを率いるロス・フィリポHCは、JAPAN XV、スコットランド代表と続く戦いについて、「(対戦する)両チームのスタイルはまったく違うので、出場する選手も戦い方も変わることになる」と話す。
また、昨年(2024年)の来日時は2試合を戦い、2戦目は暑い中で敗れた。その教訓を生かし、準備段階から対策を施しているとした。
HOカート・エクランド主将や、スーパーラグビー・パシフィックを制したクルセイダーズのSOリヴェス・レイハナら実力者が先発に名を連ねる初戦の先発メンバー。
レイハナは5月21日のファイナルでプレー、マン・オブ・ザ・マッチに選ばれる活躍を見せたばかりも疲れはないようだ。
本人は「(飛行機は)ビジネスクラスだったし、体調もマインドもいい状態」と涼しい顔。日本とマオリの文化は似たところがあり、「それを直接体感できるのが楽しみ」と前向きだった。
SHサム・ノックが「僕らもボールを動かすスタイル。エキサイティングな試合になる」と言えば、エクランド主将も「お互いにレベルアップできる試合。わくわくしている」。
フィリポHCの「マオリの血を引く、選ばれた者だけのチーム」の言葉は、全員が気持ちを束ねて向かってくるとの宣戦布告のようにも聞こえた。
文: 田村 一博
田村一博
前ラグビーマガジン編集長。鹿児島県立鹿児島中央高校→早稲田大学。早大GWラグビークラブでラグビーを始める。ポジションはHO。1989年、ベースボール・マガジン社に入社。ラグビーマガジン編集部に配属される。1993年から4年間の週刊ベースボール編集部勤務を経て、1997年からラグビーマガジン編集長に就く。2024年1月に退任し、現在は編集者、ライターとして活動。
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