【ハイライト動画あり】早稲田大学、春の早明戦は完敗。ラグビー関東大学春季交流大会

ラインブレイクするFB植木

稲穂とペガサス。大学ラグビーのみならず、日本ラグビーをけん引してきた両雄が激突する。彼らがつなぐのはだ円球だけではない。歴史を紡ぎ、誇りをつなぐ。伝統がタスキとなり、時代の垣根を越えてつながる。

そんな伝統の一戦が、岐阜城が見下ろす岐阜県・長良川競技場で幕を開けた。序盤から一進一退の攻防が続く。こう着状態を破ったのは紫紺のジャージーだった。重戦車が早稲田大学のゴールを立て続けに叩き割る。

このままでは終われない早大は執念の一撃を返すものの、前半終了間際に再び得点を許し、7-19で試合を折り返した。

続く後半、明治大学の勢いが増していく。プライドを見せたい早大はフレッシュレッグスが一矢を報いるも、反撃むなしく、紫紺の猛攻を止めることができなかった。12-45でノーサイド、春の早明戦に幕が降りた。

明大のキックオフで始まった今試合。序盤から両校のプライドが火花を散らす。蹴り合いが続き、両チームともに堅い試合運びをみせた。明大の強力なスクラムにもPR（プロップ）前田麟太朗（スポ2＝神奈川・桐蔭学園）を中心に真っ向から立ち向かう。

硬直した攻防をこじ開けたのは明大の重戦車だった。前半10分、早大が接点で反則を犯し、明大がゴール前まで攻め込む。FW（フォワード）でフェーズを重ねて、ゴールラインを明け渡した。

その後、前半25分にも追加点を許す。しかし、このままでは終われない早大にチャンスが舞い込んだ。自陣ゴールを背にし、明大の連続攻撃を守り切った。

キックするSO田中大

SO（スタンドオフ）田中大斗（教2＝東京・早実）のキックで、敵陣まで攻め込むとラインアウトから大外まで展開し、WTB（ウィング）池本晴人（社3＝東京・早実）がラインブレイク。

再び大きく展開し、ライン際でWTB田中健想（社2＝神奈川・桐蔭学園）が起点を作ると、SO田中大からのパスを受け取ったCTB（センター）黒川和音（人4＝茨城・茗渓学園）が次々とディフェンスをかわしていき、インゴールに飛び込んだ。

その後のキックもFB（フルバック）島田隼成（スポ2＝福岡・修猷館）が冷静に沈め、7-14。流れに乗りたい早大だったが、前半終了間際にも失点を許し、7-19とリードを許して試合を折り返した。

続く後半も立ち上がりから苦しむ展開に。開始直後に再びスコアを許し、点差はさらに広がった。何とかして流れを引き寄せたい早大。流れを変えたのは途中から投入されたSO服部亮太（スポ2＝佐賀工）と、WTB植木太一（人2＝神奈川・関東学院六浦）だった。

バックフリップパスを投げるSO服部

服部が相手ディフェンスの背後に絶妙なキックを蹴り込み、敵陣へと攻め込む。明大のキックに対して「自分の強みでチームに勢いをもたらしたかった」と語った植木が素早く反応。カウンターを仕掛けると次々とタックルをかわしていき、一気にビッグゲイン。徐々に早大が息を吹き返し、試合の流れが変わり始める。

迎えた後半20分、早大は敵陣深くで得たスクラムから田中大が起点を作る。勢いをそのままに、服部がボールを受け取り、ゴールラインを駆け抜けた。スコアは12-24に。

しかし、その行く手に立ちはだかるのは、あまりにも高く厚い紫紺の壁だった。早大は果敢に攻め込むものの、得点圏にボールを運ぶことができない。この後、明大の猛攻に耐え切れず、3トライの追加点を許し、12-45。伝統の一戦は、悔しさを残してノーサイドを迎えた。

「早稲田プライド」を胸に挑んだ一戦。だが、宿敵を前に突きつけられたのは、悔しさという現実だった。それでも、昨季の躍進を支えた堅牢なディフェンスは随所に顔を出した。あとは、試合終了まで早大のラグビーを貫き通し、訪れたチャンスを確実に仕留め切る力だ。

今回は敗戦に終わった早大だが、これはまだチーム野中の序章に過ぎない。目指すはただ1つ、頂へ。『One Shot』。狙いを定め、受け継いだ伝統と誇りをその一撃に込めて。勝利を、好機を、撃ち抜いてみせる。

記事：大林祐太、村上結太　写真：安藤香穂、高木颯人（早稲田スポーツ新聞会）