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ブリティッシュ&アイリッシュ・ライオンズのエンブレム
2025年の夏、世界中のラグビーファンがワクワクして待ちきれないのが、4年に1度結成される『ブリティッシュ&アイリッシュ・ライオンズ』のオーストラリアツアーだ。
6月20日(金)にアイルランドのダブリンで、アルゼンチン代表と対戦した後、チームはオーストラリアに向けて出発する。8月2日(土)までオーストラリア代表とのテストマッチ3試合を含め、10戦する予定で、日本のラグビーファンにとっても大いに楽しみな試合が続いている。
オーストラリアツアーのロゴ
それでは、『ブリティッシュ&アイリッシュ・ライオンズ』(以下ライオンズ)というチームの成り立ちやトリビアなどを、Q&A形式で紹介していきたい。
Q:『ライオンズ』とは、どんなチームですか?
A:ライオンズはイングランド、スコットランド、ウェールズ、アイルランドと、4つのホームネーションズ(協会)の代表選手で構成される、いわば『ドリームチーム』で、赤いジャージーの胸には4つの協会のシンボルを組み合わせたエンブレムが輝いています。
Q:『ライオンズ』はいつから活動しているのですか?
A:1888年に、イングランド、スコットランド、ウェールズ出身の22名の選手からなるチームが、ニュージーランドとオーストラリアに、250日間もの長い遠征をしたことが最初です。
当時はまだラグビーのルールも今ほど定まっておらず、代表チーム同士の対戦、いわゆるテストマッチもありませんでした。初戦は『オタゴ・ダニーデン』の選抜チームとの試合で、1万人もの観客が集まったそうです。
その3年後、南アフリカの『ウェスタン・プロヴィンス協会』が、『イングランド協会』(当時はブリティッシュ・アイルズ)を南アフリカに招待し、初めてテストマッチシリーズが行われました。それから、不定期に南半球への遠征が行われる様になり、1910年の南アフリカ遠征で、初めてアイルランドを含む4つのネーションの代表が遠征に参加しました。
Q:どうして『ライオンズ』というのですか?
A:1924年の南アフリカ遠征時につけていた、ライオンのエンブレムに由来します。第2次世界大戦による中断の後、1949年に正式に4つのネーションによる団体が設立され、1950年にニュージーランドとオーストラリアに向けた遠征を再開しました。この時に正式に『ライオンズ』の名称が使用されるようになりました。さらに2001年から『ブリティッシュ&アイリッシュ・ライオンズ』が正式名称になっています。
Q:なぜ、赤いジャージーなのですか?
A:もともとは赤、白、青の3色ジャージーでしたが、1930年にニュージーランド遠征をした時は青いジャージーを着用していました。ラグビーの慣例として、ホームグラウンドのチームがファーストジャージをアウェイのチームに譲りますが、すでに『オールブラックス』という愛称が定着していたニュージーランド代表が、白のアウェイジャージーを着るべきか、という議論が起こりました(実際はしぶしぶ白いジャージーを着ましたが…)。
そのため、1950年からは赤(ウェールズ)のジャージー、白(イングランド)のパンツ、緑(アイルランド)の線が入った青(スコットランド)のソックスという今のキットに落ち着きました。
Q:『ライオンズ』はいつ活動するのですか?
A:チームは4年に1度編成され、ニュージーランド、オーストラリア、南アフリカの南半球3カ国を4年ごとに遠征しています。このフォーマットは1989年のオーストラリア遠征からで、慣例として3試合のテストマッチが行われます。
また、その国のクラブチームや州代表などとの試合がテストマッチの前に行われます。さらに、前回の2021年に日本代表が、スコットランドで『ライオンズ』と対戦したように、遠征出発前に各国の代表などと対戦する場合もあります。
Q:『ライオンズ』の選手になる条件はありますか?
A:イングランド、ウェールズ、スコットランド、アイルランドの4つの協会のいずれかの代表資格があれば選出可能です。ほとんどが代表経験者ですが、必ずしも各国代表キャップを獲得している必要はありません。
Q:今までの対戦成績はどうなっていますか?
A:これまで34回の遠征が行われ、通算144試合で70勝63敗11分という戦績です。ニュージーランド、オーストラリア、南アフリカの3カ国とのテストマッチだけを見ると、114試合で42勝62敗10分と負け越しています。
対ニュージーランドは7勝30敗4分、南アフリカとは18勝26敗6分と分が悪いですが、一方で今回対戦するオーストラリア相手には、17勝6敗と勝ち越しており、相性が良いというデータもあります。
Q:最も多く『ライオンズ』のテストマッチに出場している選手は誰ですか?
A:最多キャップホルダーはLO(ロック)ウィリージョン・マクブライド(アイルランド)の『17』ですが、が、現在のように4年ごとの遠征となってからは、前回のツアーでキャプテンを務めたLOアランウィン・ジョーンズ(ウェールズ)の『12』が最多キャップです。
Q:『ライオンズ』がホームで試合をしたことはありますか?
A:これまで、公式、非公式の試合と合わせて7試合が行われ、『バーバリアンズ』や『世界選抜』などと対戦しました。遠征前の試合としては、2005年にアルゼンチン代表とウェールズ・カーディフの『ミレニアムスタジアム』で対戦しました。
前回、2021年の日本代表戦では、スコットランド・エディンバラ『マレーフィールド』で、初めてライオンズのテストマッチが行われました。今回は6月20日(金)、アイルランド・ダブリンの『アヴィヴァ・スタジアム』で、初戦となるアルゼンチン代表を迎えます。
Q:『ライオンズ』のマスコットについて教えてください。
A:ライオンズの遠征では、チーム最年少の選手がマスコットのライオンのぬいぐるみを持って運ぶ決まりがあります。約20年勤め上げた前任のマスコット『レオ』に替わり、2013年のオーストラリア遠征から、『ブリティッシュ&アイリッシュ・ライオンズ』の頭文字をとって『BIL』(ビル)と名付けられたライオンが登場しています。
2013年はFB(フルバック)スチュアート・ホッグ(スコットランド)、2017年は今回のツアーでキャプテンを務めているLO(ロック)マロ・イトジェ(イングランド)が、前回はWTB(ウィング)ルイス・リーザミット(ウェールズ)が担当していました。今回のツアーでは、20歳のFL(フランカー)ヘンリー・ポロック(イングランド)が『ビル』を運ぶ係に任命されています。
Q:これまでのオーストラリア代表との対戦成績を教えてください。
A:4年に1度のフォーマットになってからは、ライオンズは1989年、2001年、2013年と3度オーストラリアに遠征しています。1989年の遠征では2勝1敗と勝ち越しましたが、2001年のオーストラリア遠征では初戦こそ勝利したものの、通算では1勝2敗と負け越しました。前回の2013年では初戦と最終戦に勝ち2勝1敗でライオンズが勝ち越しに成功しています。
今回のツアーでも、オーストラリア代表とのテストマッチが3試合組まれています。2回連続で『ワラビーズ』こと、オーストラリア代表に『ライオンズ』が勝ち越すことができるかが、今回のツアーの焦点、ファンの最大の関心事となっています。
◆ライオンズ試合日程
・6月20日(金)vs. アルゼンチン代表 @アビバ・スタジアム(アイルランド・ダブリン)
・6月28日(土)vs. ウェスタン・フォース @パース・スタジアム(パース)
・7月02日(水)vs. クイーンズランド・レッズ @ランパーク(ブリスベン)
・7月05日(土)vs. NSWワラターズ @シドニー・フットボール・スタジアム(シドニー)
・7月09日(水)vs. ACTブランビーズ @キャンベラ・スタジアム(キャンベラ)
・7月12日(土)vs. ANZACインビテーショナルXV @アデレード・オーバル(アデレード)
・7月19日(土)vs. オーストラリア代表 @ランパーク(ブリスベン)
・7月22日(火)vs. ファースト・ネーションズ&パシフィカXV @ドックランズ・スタジアム(メルボルン)
・7月26日(土)vs. オーストラリア代表 @メルボルン・クリケットグラウンド(メルボルン)
・8月02日(土)vs. オーストラリア代表 @スタジアム・オーストラリア(シドニー)
文:斉藤健仁
斉藤 健仁
スポーツライター。1975年生まれ、千葉県柏市育ち。ラグビーと欧州サッカーを中心に取材・執筆。エディー・ジャパン全試合を現地で取材!ラグビー専門WEBマガジン「Rugby Japan 365」「高校生スポーツ」の記者も務める。学生時代に水泳、サッカー、テニス、ラグビー、スカッシュを経験。「エディー・ジョーンズ 4年間の軌跡」(ベースボール・マガジン社)、「ラグビー日本代表1301日間の回顧録」(カンゼン)など著書多数。≫Twitterアカウント
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