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【ハイライト動画あり】三重ホンダヒート、ディビジョン1残留。後半に集中力を見せ花園近鉄ライナーズに逆転勝利。リーグワン入替戦
ラグビーレポート by 野辺 優子トライを挙げたNO8マテーラ ゲームキャプテン(ヒート)
運命の第2戦が行われた。5月30日(金)、ディビジョン1で11位の三重ホンダヒートが、ディビジョン2で2位の花園近鉄ライナーズを、ホストスタジアムの三重『三重交通Gスポーツの杜鈴鹿』に迎えた。
昨シーズン、ディビジョン1に昇格したヒート。好スタートを切ったが、3月以降は勝星がなく、4勝14敗(勝ち点18)の11位で今シーズンも入替戦に回った。
一方のライナーズは、昨シーズン、入替戦でディビジョン2に降格。1シーズンで復帰を目指し、第8節以降は7連勝で、10勝1分3敗(勝ち点51)で2位に入り、入替戦に臨むことになった。
5月24日(土)に大阪・東大阪市花園ラグビー場で行われた第1戦は、ビジターのヒートが、ホーンが鳴った後に29-25と劇的な勝利を飾って先手を取った。これでヒートは勝ち点4、ライナーズも7点差以内の敗戦でボーナスポイント1を獲得した。
そのためヒートはホストで迎える第2戦で勝利、もしくは引き分け以上なら残留が決まる。一方、ライナーズはヒートに5点差以上つけて勝利すれば昇格となる。
ヒートは第1戦から、FW(フォワード)1名の入れ替えにとどめ、3番PR(プロップ)は星野克之がベンチに下がり、吉岡大貴が約1か月ぶりのメンバー入りで先発した。
リーグ戦で12試合先発出場したSH(スクラムハーフ)土永雷や、第1試合のPOM(プレイヤー・オブ・ザ・マッチ)のSO(スタンドオフ)呉洸太、CTB(センター)岡野喬吾(同志社大学出身)、元日本代表のWTB(ウイング)レメキ ロマノ ラヴァがスターターとなった。
もちろん、南アフリカ代表LO(ロック)フランコ・モスタート、ゲームキャプテンを務めるアルゼンチン代表のNO8(ナンバーエイト)パブロ・マテーラ、元オーストラリア代表FB(フルバック)トム・バンクスらも先発した。
一方、ライナーズの向井昭吾HCはバックロー2人を替えた。FL(フランカー)は菅原貴人が6番に入って、野中翔平が先発に上がり、NO8はニュージーランド代表経験のあるアキラ・イオアネが、3月の第10節以来メンバーに名を連ねた。
BK(バックス)はゲームキャプテンを務めるSHウィル・ゲニアと、SOクウェイド・クーパーの元オーストラリア代表のベテランハーフ団、WTB片岡涼亮、木村朋也、FB(フルバック)雲山弘貴ら顔ぶれは第1戦と同じとなった。
心配された降雨はなく、金曜のナイターながら3306人のファンが集った。緊張感がある中、午後7:00にライナーズのボールでキックオフされた。
ジャパンラグビー リーグワン2024-25
【ハイライト動画】D1/D2 入替戦 第2戦 三重ホンダヒート vs. 花園近鉄ライナーズ
前半、先にチャンスを得たのは、昇格には勝利が絶対条件だったライナーズだった。9分、キックカウンターからスピードを活かしてWTB木村が抜けだし、さらにSOクーパーが右サイドライン際をゲインしチャンスを作る。最後はSHゲニアがインゴールに押さえて7点の先制に成功した。
なかなか相手陣でアタックできなかったヒートだったが、CTBダーウィッド・ケラーマンの『50-22キック』で好機を得た。20分、相手ゴール前のモールを押し込み、最後にモールは崩れたが、ラックからHO(フッカー)肥田晃季がねじ込みトライ。7-7の同点に追いついた。
すぐにライナーズも反撃する。24分、相手の反則からゴール前のラインアウトを得て、最後は右サイドをSHゲニアが仕掛けて、オフロードパスをWTB木村に通し、そのまま木村がファイブポインターとなって、14-7と再びリードした。
30分、ヒートは相手ゴール前30mほどのPG(ペナルティゴール)をSO呉が落ち着いて沈めて4点差に迫る。だが36分、相手のチャンスボールをヒートのLOマーク・アボットが意図的なノックフォーワードをしてしまい、TMO(テレビジョン・マッチ・オフィシャル)の末、イエローカード(10分間の一時的退場)となる。
これでライナーズが数的有利となったが、ヒートのゲームキャプテンNO8マテーラがスティールを見せるなど、ヒートがディフェンスで粘りを見せ、10-14のままハーフタイムを迎えた。
後半、集中力を見せたヒート
後半、最初の5分は数的有利の時間帯が続くライナーズだったが、ここで逆に集中力を見せたのはホストのヒートだった。
キックオフから、相手のキックをFBバンクスがチャージダウン。そのボールをライナーズがノックフォーワード。さらに3分、相手がオフサイドの反則をすると、ヒートはタップから攻めてFWにこだわり、ボールを継続。最後は左中間にNO8マテーラが押さえてトライ。ヒートが15-14と逆転し、この試合初めてリードした。
5分、さらに、三重は接点でボールを奪い返してアタックを仕掛けると、CTBケラーマンが中盤にラインブレイク。最後はフォローしたLOモスタートが豪快なランを見せて中央にトライ。リードを8点に広げた。
だが、再びヒートは後半13分、今度はLOモスタートがハイタックルでイエローカードとなり、再びライナーズが数的有利となった。昇格のためには早く得点を挙げたいライナーズだったが、相手陣でアタックを仕掛けるものの、ミスやペナルティで得点を挙げることができなかった。
ようやくライナーズがトライを挙げたのは28分。モールを押し込んだ後、最後は左に展開し、途中出場のWTBティモ・スフィアが左隅に飛び込んで、3点差に迫った。しかし、ライナーズが逆転でディビジョン1に昇格するには、あと8点挙げなければいけない状況だった。
焦るライナーズに対して、ヒートは相手の反則後、相手陣に攻め込む。35分、モールを押した後、最後は途中出場のSH竹中太一がCTB岡野につなぎ、岡野がトライを挙げて29-19と勝負を決めた。
ロスタイム、WTBレメキがDG(ドロップゴール)を狙ったが、外れてホーンがなり、29-19のままノーサイド。ホストのファンの応援を背に戦ったヒートが、2連勝で、ディビジョン1残留を決めた。
POM(プレイヤー・オブ・ザ・マッチ)にはスティール、ボールキャリー、タックルで奮闘したヒートのゲームキャプテンNO8マテーラが選ばれた。
向井HC(左)と野中副将(ライナーズ)
1シーズンでのディビジョン1復帰が叶わなかったライナーズの向井昭吾HCは、「ほとんどの時間うまくゲームをコントロールできたが、20分うまくいかなかったところでこういう得点になった。力の差はそうないと思うが、もう一段レベルアップして来シーズン、またディビジョン1を目指してチャレンジしていければ」と淡々と語った。
会見に応じたバイスキャプテンのFL野中翔平は「プロセスにこだわってチーム一丸となってやってきた。結果じゃない部分にこだわってやってきたつもり。そうすれば最終的に結果が出ると信じてやってきたが、勝ち負けの世界で負けた」。
「もちろん、いいところもいっぱいあった。でもそれ以上に足らなかったところがあったからこの点差になった。当初1年で(ディビジョン1に)帰るという目標を掲げてやってきたが、それも叶わず、来シーズンこそはという強い気持ちを持って残るメンバーで、いい文化と勝てるチームにしていきたい」と前を向いた。
今季限りで退団するSHゲニア(ライナーズ)
ライナーズで6シーズンプレーした、SHウィル・ゲニア、SOクエイドクーパーのハーフ団は今シーズン限りで退団が決まっている。
SOクーパーは「自分たちは小さなチャンスをものにできなかった。これからも残る選手たちは、この経験を糧にして、小さな1つ1つの瞬間をしっかりと決めていけるようにしてほしい」。
「良い時も悪い時もあったけど、それを含めて全部素晴らしい時間だった。自分も人間としてすごく成長できたのは、ライナーズでの6年間の経験があったからこそ」と振り返った。
SHゲニアは「負けたのは、ただただ残念だ。これからのチームについては選手たちに直接伝えたい。本当にもっともっとこのチームでプレーしたかった」。
「そして、ずっと一緒にやってきたクエイドと、もう同じチームで一緒にプレーすることはないだろう。僕たちは14歳の時に初めて会って、2人で1つのストーリーを完成させてきた」としみじみ振り返り、「ラグビーが好き。まだまだ良くなりたいと思っている。自分の身体がそう感じる限りはやめるつもりはない」と現役続行を明言した。
ライナーズを去るレジェンド2人は、遅くまで残って待っていたファンに時間が続く限り応じていた。
クローリーHC(左)とNO8マテーラ(ヒート)
一方、今シーズンも入替戦で残留を決めたヒートのキアラン・クローリーHCは「イエローカードが後半で2枚出てしまったり、キックゲームがうまくいかなかったりという部分が出たが、最終的に選手が良い部分を積み重ねて、勝利までつなげてくれたことに関してはとても誇りに思う」。
「今シーズンはケガ人がとても多く出てしまったが、それでも今日のメンバー23人は自信を持って送り出した」と話した。
ゲームキャプテンのNO8マテーラも、「相手は持てる全てを出してきた。ただ、相手より自分たちは落ち着いてハードワークをし続けることによって、得点を与えずにイエローカードが出た時間を耐えぬくことができた」。
「難しい状況を自分たちで作ってしまったが、最終的には勝ちまで持っていくことができたので、今日はその喜びを分かち合いたい。しっかり休んで、来シーズンまた強くなって帰ってきます」と胸を張った。
続けてNO8マテーラは、「(来シーズン)鈴鹿での最後のシーズンをディビジョン2でプレーしたくなかった。自分たちはやっぱりファーストディビジョンにふさわしいチームだとも思っている」。
「もちろん、自分たちが思っていたスピードでは成長はできていないかもしれないが、成長はしているし強くもなっている。ただ、今からこの長い道のりを自分たちは歩んでいく、来シーズンもとてもワクワクしている」と前を向いた。
入替戦で復帰し、存在感を見せた元日本代表WTBレメキ ロマノ ラヴァは、「本来は入替戦で戦っているのがおかしいチーム。残留できたのは良かったけどもっと勝てる」と語気を強めた。
そして、長くチームを牽引し、今季限りで退団するFL小林亮太も、「今シーズン出た課題と、戦えるところは確実にある。戦える時間を長くして、順位もあげてトップ6のプレーオフも狙えるように、今シーズンの反省を生かしてチームがやっていければ」と話した。
残留を喜ぶヒートサポーターとともに
今季、ディビジョン1で4勝を挙げた三重ホンダヒートが、その力を発揮。来シーズンも引き続き、ディビジョン1で戦う。なお、2シーズン後に栃木に移転することが決まっているヒートは、来シーズンは鈴鹿をホストで戦うラストシーズンとなる。
文/:野辺優子/写真:野辺優子、(C)JRLO
野辺 優子
ライター・翻訳者。 大学を卒業後、パリの大学院で映画を研究し、留学中は現地でフランス、イタリアのサッカーやラグビー等のスポーツメディアの通訳や翻訳を経験。現在は大学で教えながら、ラグビー専門WEBマガジン「Rugby Japan 365」の記者も務めつつ、ラグビーワールドカップも3大会取材し、海外チームや選手のデータリサーチや翻訳業務も行っている。高校時代、友人の高校のラグビー部を応援し始めて、大学時代はラグビー部のマネージャーを務めた。イングランド・プレミアシップのサラセンズのファン。
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