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敵地に乗り込む明大は、2021年にリコー(BR東京)指揮官から母校の監督に就任した神鳥裕之氏が5季目を迎えた。ここまで準優勝2回(2001、2003年度)の戦績を挙げたが、ターゲットは7季ぶりの日本一のみだ。
昨季は大学選手権のベスト4で帝京大学に敗戦(26-34)。主将だったNO8木戸大士郎(BL東京)、FL福田大晟(静岡BR)、CTB秋濱悠太(BR東京)らが卒業し、新主将で東福岡高出身のCTB平翔太が、王座奪還のミッションを引き継いだ。
今季スローガンは「完遂」。そこには「与えられた役割を完全に成し遂げる」という意味があり、「チーム全体でも、個人でも、最後の一分一秒まで隙を見せずやり抜くための強いメンタルを作っていくという気持ち」を込めたという。
ヘッドコーチは2005年度主将の高野彬夫氏。現役時代のポジションは平主将と同じくセンターで、学生時代から海外ラグビーにも精通していた理論派だ。
明大は5月上旬から15人制の対外試合を重ねており、5月5日は京都に遠征してU23日本代表組を除くメンバーで同志社大学から白星(40-28)を挙げた。
そして5月18日の東洋大学との春季大会初戦には、CTB平主将などU23日本代表勢が参加。64-7で大会初戦を大勝で飾った。
ただ5月25日は、再びの京都遠征で京都産業大学に1点差の惜敗(21-22)。しかし随所で今季の武器が垣間見えた。
関西随一のスクラム文化を持つ京産大に対し、8対8で何度もプレッシャーをかけ、前半30分など要所で相手スクラムをターンオーバーしてみせた。
フォワードだけでなく、先制トライを奪ったCTB平主将をはじめとしてバックスにも逸材が並んでおり、パワー、スキル、運動量を揃えた「ハイブリッド重戦車」は今季もハイレベルだ。
ただ4回生になった京産大NO8シオネ・ポルテレなど強力ランナーに差し込まれた部分、そして自陣守備時に重ねたペナルティは課題となったが、5月時点での課題抽出はむしろプラスだろう。
大会2連勝を狙う東海大戦の先発には、大会初先発を飾る2年生PR佐藤蓮などフレッシュなメンバーも入った。
招待試合の京産大戦からの変更では、PR佐藤に加えてFL中川功己がスタメンへ。バックスは5名が代わり、ハーフ団は大会初戦だった東洋大戦のコンビであるSH柴田竜成とSO萩井耀司へ。
センターには主力定着を狙う3年生CTB大沼隼人が入り、バックスリーは最上級生になった俊足WTB山村和也。さらにはSH柴田と共に昨季準決勝の先発メンバーで、U23日本代表組の一人であるFB竹之下仁吾 が入った。
かたや東海大は立て直しの一戦となる。
関東リーグ戦王者への返り咲き、そして悲願の日本一へと突き進みたい東海大だが、大会3戦目となった先週(5月25日)の帝京大戦は厳しい戦いとなった。
ラグビーの根本であるフィジカルバトルで劣勢となり、0-111という衝撃的な完封負けを喫したのだ。
帝京大は充実していた。前半を45-0で折り返し、後半にさらに66点を上積み。帝京大は大会初戦の大東文化大学戦(95-0)に続いて2試合連続の完封劇を披露した。
敗戦の中にあって、“光明”と見えたのが東海大のスクラムだ。
PR星田知裕、HO川村航平、PR杉浦皓亮をフロントローとして、新主将のNO8薄田周希、局面を打開できる守備人のFL張剛士らをバックローに揃え、一時互角に渡り合った。
帝京大にAチームのデビュー戦となったフォワードがいた影響も考えられるが、大学4連覇を支えてきた「帝京のスクラム」にプレッシャーを与えた感触は自信になるだろう。
さらに自信を深めたい明大戦の先発メンバーは、帝京大戦から先発7人を替った。
愛知・栄徳高出身の2年生PR中尾優人、秋田工業の3年生 PR阿部輝が入り、明大のスクラムと対峙する。さらにはWTB正木空馬、CTB鈴木浩介の2年生バックスも先発を託された。
先発ルーキーは2名。大阪桐蔭高のLO篠田晃成、東海大福岡の190cmFLトゥポウ・ランギが名を連ねた。
大きな変更箇所はハーフ団だろう。これまで開幕3戦はSH山田莞大、SO浦本明惟だったが、SH吉田永遠とSO北村光基の4年生コンビとなった。
試合の注目点の一つは東海大のディフェンスだ。111失点した一週間前から、まずは1対1のバトル、タックル精度で変化の兆しを見せたいところだ。
もちろんスクラムバトルも必見。
伝統的に明大はフォワード主体のチームであり、スクラムに矜持がある。「強い東海大」も本来セットピースから主導権を握るスタイルであり、負けてはならない領域だ。
前回対戦は昨年12月の大学選手権3回戦。明大が50-17で大勝したが、半年後の新チームではどんな結果になるか。
明大がスローガン「完遂」を体現して2連勝を飾るか。再起戦となる東海大がプライドを示すのか。会場は東海大の拠点である神奈川・東海大グラウンド。見逃せないキックオフは13時だ。
文: 多羅 正崇
多羅 正崇
スポーツジャーナリスト。法政二高-法政大学でラグビー部に所属し、大学1年時にスタンドオフとしてU19日本代表候補に選出。法政大学大学院日本文学専攻卒。「Number」「ジェイ・スポーツ」「ラグビーマガジン」等に記事を寄稿.。スポーツにおけるハラスメントゼロを目的とした一般社団法人「スポーツハラスメントZERO協会」で理事を務める。
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