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優勝経験のある2位対3位の激突は、やはり、最後まで目が離せないバトルとなった。
勝利して喜ぶスピアーズのNO8マキシキャプテン
佳境を迎えている『NTTジャパンラグビー リーグワン2024-25』は5月25日(日)、東京・秩父宮ラグビー場で、プレーオフトーナメントの準決勝2試合目が行われた。
リーグ戦2位の埼玉パナソニックワイルドナイツと、準々決勝で6位の東京サントリーサンゴリアスを破って勝ち進んだ、3位のクボタスピアーズ船橋・東京ベイの対決となった。今シーズンのリーグ戦では26-24、29-29でワイルドナイツが1勝1分。ディフェンス力に定評のあるチーム同士の激突となった。
ワイルドナイツは、キャプテンのHO(フッカー)坂手淳史、PR(プロップ)は稲垣啓太、FL(フランカー)ベン・ガンター、NO8(ナンバーエイト)ジャック・コーネルセンと日本代表経験者と、元南アフリカ代表のLO(ロック)ルード・デヤハーが先発。
BK(バックス)ではSH(スクラムハーフ)に日本代表の小山大輝が先発に復帰し、SO(スタンドオフ)は今シーズンの得点王&ベストキッカーに輝いた山沢京平が入った。
CTB(センター)は南アフリカ代表ダミアン・デアレンデと、日本代表のディラン・ライリーの強力なコンビ、WTB(ウイング)も長田智希と、今シーズン14トライの竹山晃暉、FB(フルバック)山沢拓也と日本代表経験者が顔を揃えた。
リザーブには約1ヶ月半ぶりにオーストラリア代表WTBマリカ・コロインベテ、LOエセイ・ハアンガナ、FB野口竜司らが名を連ねた。
スピアーズのメンバーも負けていない。準々決勝から3名の先発を変更した。FW(フォワード)では日本代表のオペティ・ヘルが復帰し、南アフリカ代表HOマルコム・マークス、日本代表のキャプテンNO8ファウルア・マキシが先発する。
BKも日本代表SH藤原忍と、元オーストラリア代表バーナード・フォーリーのハーフ団、CTBも日本代表のベテラン立川理道、WTBには日本代表キャップを持つ根塚洸雅が入った。
リザーブには今回もFW6人を入れた。HO江良颯、PR為房慶次朗、LOデーヴィッド・ヴァンジーランドら若い選手だけでなく、元日本代表FLピーター・ラピース・ラブスカフニも控える。
この試合のテーマに、ワイルドナイツのキャプテンHO坂手は「自分たちのラグビーを容赦なくやり続ける」と話し、スピアーズのキャプテンNO8マキシは「Win the moment」(一瞬、一瞬を勝ち取る)を掲げて臨んだ。
曇天の中、両チームのカラー、青やオレンジを着た1万7735人のファンが集い、午後2:30にキックオフされた。
強固だったスピアーズのディフェンス
先にチャンスを得たのはスピアーズだった。前半3分、相手陣奥でラインアウトのチャンスを得た後、FWにこだわり、最後はHOマークスが左中間に押さえて5点の先制に成功した。しかし、ワイルドナイツもすぐに反撃し、6分、正面のPG(ペナルティゴール)をSO山沢が落ち着いて決めて3点を返す。
10分、ワイルドナイツ陣中央、10mライン付近のスクラム後、ワイルドナイツのFB山沢のキックをスピアーズのSH藤原がチャージし、転がったボールを自身で拾い上げて、そのままトライ。12-3とした。
14分、ワイルドナイツも相手陣に攻め込み、相手陣5m左中間のスクラムから好機を得て、NO8コーネルセンがサイドを突いて、中央左にトライを挙げて、2点差に追い上げた。
ボールキャリー、スクラムで目立ったスピアーズPRヘル
その後、ワイルドナイツはボールを継続してアタックを続けるが、逆転することはできなかった。すると29分、スピアーズのPRヘルがボールキャリーで前に出て、相手のオフサイドを誘うと、中央からSOフォーリーがPGを決める。
さらに32分、スピアーズは相手陣5mのラインアウトのチャンスを得て、FWでモールを組んだ後、HOマークスが縦に突いて、フォローしたSH藤原が左隅にグラウンディングし、22-10とリードを広げた。
前半残り5分、点差を縮めたかったワイルドナイツだが、スピアーズのディフェンスを崩すことができず、そのままハーフタイムを迎えた。
ジャパンラグビー リーグワン2024-25 プレーオフトーナメント
【ハイライト動画】準決勝 埼玉ワイルドナイツ vs. クボタスピアーズ船橋・東京ベイ
後半、12点差を追うワイルドナイツはアタックを修正しつつ、両PRやWTBコロインベテなど、後半5分までに4人を投入した。しかし、19フェーズを重ねるアタックなどを見せたが、得点を挙げることができなかった。
長いPGを2本決めたスピアーズWTBヴァイレア
8分、スピアーズは相手の反則から中央左、50m弱のPGのチャンスを得て、WTBハラトア・ヴァイレアが決めて、25-10とさらにリードを広げた。
それでもワイルドナイツの集中力は落ちることはなかった。11分、ラインアウトから攻撃を継続し、WTB竹山が裏にキックし、相手がファンブルしたところを押さえてトライ。SO山沢のゴールも決まって17-25。
ワイルドナイツはSO山沢のトライで1点差に迫ったが
さらに17分、ラインアウトからボールを継続し、SO山沢が相手のタックルを外して前に出て、そのまま左中間にトライを挙げて、24-25と1点差に追い上げた。
その後、21分にスピアーズはSOフォーリーが、中央左40mのPGを決めることができず、スコアボードは動かなかった。ワイルドナイツも25分、敵陣奥でラインアウトからアタックを継続したが、最後はNO8コーネルセンが落球してしまい、逆転することができなかった。
ラストプレーの勝負所で、スクラムで反則を得たスピアーズFW陣
すると30分、ワイルドナイツのボールが乱れて、スピアーズがターンオーバー。HOマークスがゲインし、自らキックして一気にエリアを回復した。36分、スピアーズは相手ボールのスクラムを押し込み、反則を誘った。左中間45mほどのPGを、WTBヴァイレアが再び成功させて、4点差にリードを広げた。
残り2分、ハーフウェイライン付近、右サイドでワイルドナイツがノックフォーワード。スピアーズがスクラムを得て、FW8人が一体となって押し込み、ペナルティを得た。
残り40秒、スピアーズはスクラムを選択し、組み直しとなってホーンが鳴る。スクラムから出たボールをSOフォーリーが外に出してノーサイド。スピアーズが28-24で勝利し、決勝に駒を進めた。
2トライを挙げてPOMに輝いたスピアーズSH藤原
POM(プレイヤー・オブ・ザ・マッチ)は2トライを挙げたスピアーズのSH藤原が選出された。「ホッとしている。自分の役割を果たした結果、トライできた。日本一という目標を掲げていて、勝たないといけない相手に勝てたこと、そして次につながる良いゲームだった」と破顔した。
トップリーグ時代から数えて、5シーズン連続の決勝進出とはならなかったワイルドナイツのロビー・ディーンズ監督は、「(相手との差は)我慢強さではなく、精度のところが少し足らなかった。スピアーズさんは我々にプレッシャーをかけるのが上手かった。優勝できるチームがたくさんあると思うが、今シーズンは自分たちではなかった」と振り返った。
試合後、悔しさを露わにしたワイルドナイツHO坂手キャプテン
キャプテンHO坂手は「組み合う時間帯が多くて、その中での精度が足りなくて、スピアーズさんがしっかりと点数を取れるところは取るというプレーオフのラグビーをしていた。この結果を消化するのに時間がかかる。それを今日と明日として、来週、みんなで成長しながら3位決定戦に臨めればと思う」と気丈に話した。
優勝した2022-23シーズン以来の決勝進出を決めたスピアーズのフラン・ルディケHCは「ワイルドナイツは決して引き下がらなかった。リードを奪ったが、後半に追い上げられ、そして試合は1点差になった。全てが勝敗を分ける瞬間だったが、小さな差が結果を左右した。そして、来週またチャンスが与えられたことに私たちは本当に感謝している」と語気を強めた。
キャプテンのNO8マキシは「プレーオフで簡単な試合はないし、ワイルドナイツは本当に素晴らしいチームだと思うので、ちょっとでも気を抜くとどんどん相手がモメンタムでやってくるが、そこはうまく修正して最後までやることができた」と振り返った。
惜敗したワイルドナイツは5月31日(土)、東京・秩父宮ラグビー場でコベルコ神戸スティーラーズと3位決定戦を戦う。
一方、2度目の優勝を狙うスピアーズは6月1日(日)に、国立競技場で連覇を狙う東芝ブレイブルーパス東京と相対する。
文/写真:斉藤健仁
斉藤 健仁
スポーツライター。1975年生まれ、千葉県柏市育ち。ラグビーと欧州サッカーを中心に取材・執筆。エディー・ジャパン全試合を現地で取材!ラグビー専門WEBマガジン「Rugby Japan 365」「高校生スポーツ」の記者も務める。学生時代に水泳、サッカー、テニス、ラグビー、スカッシュを経験。「エディー・ジョーンズ 4年間の軌跡」(ベースボール・マガジン社)、「ラグビー日本代表1301日間の回顧録」(カンゼン)など著書多数。≫Twitterアカウント
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