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日本ラグビーにとって恩人とも言っていいチームとの交流が、今年も始まる。
NZU(New Zealand Universities Rugby Football Council)は、一般的にはニュージーランド大学選抜と呼ばれる。同チームと日本ラグビーは、1年ごとに互いの国を行き来している。
日本ラグビーとの交流の始まりは89年前にさかのぼる。
同チームが初めて来日したのは1936年2月。日本代表と2試合を戦った。当時の日本代表は、王国からやって来たNZUが代表チームではなくとも、キャップ認定試合として敬意を表した。
当時の2試合の結果は8-16と9-9。日本代表は勝利を挙げることができなかった。
1908年に設立されたNZUは、同国を訪れた各国代表チームとも戦い、勝利を挙げる歴史を刻んだこともある。しかしラグビー界にプロ化の波が押し寄せ、強力メンバーを編成できなくなったこともあり、以前ほど強いチームではなくなった。
それでもNZUは毎回、日本ラグビーに友情とタフさを伝えてくれる。
黒衣が来日する番の2025年シリーズの初戦が、5月16日(金)のU20日本代表×NZUだ。その試合の舞台は大分スポーツ公園 クラサスサッカー・ラグビー場。16時にキックオフとなる。
今回のNZUのツアーキャプテンを務めるFL/NO8のジュリアン・ゴーキーは、NZ国内の州対抗選手権(NPC)を舞台に戦うマナワツ代表としてプレーする23歳。186センチ、106キロと均整の取れた肉体を持ち、動き回る。
LOにはリアム・ジャック、ジョシュア・タウラと、2メートル超のビッグマンが揃う。
ツアーに参加する25選手のうちの17選手は、U20代表やNPC、スーパーラグビーのデベロップメントチームに所属している選手たちというふれ込み。シンプルかつハードな戦いを挑んでくるだろう。
NZUを迎え撃つU20代表は今回、例年と違い、この1試合のためだけに編成された。昨年はワールドラグビーU20トロフィーが開催されたため、同大会で優勝、ひとつ上のステージであるU20チャンピオンシップに昇格するため、長い時間をかけてチーム強化がおこなわれた。
昨年もチームを率いた大久保直弥ヘッドコーチ(以下、HC)は、「昨年は100日で15試合を戦う活動をしましたが、今年は、U20トロフィーがおこなわれなくなったため、NZU戦はこのチームにとってのテストマッチ。その気持ちで戦います」と話す。
選手たちも、その覚悟で挑むマインドセットだ。
目指すスタイルは、昨年のチーム同様、日本代表の超速ラグビーを上回る『ハイテンポなダイレクトラグビー』。その発信源となるのは、SHの2人、先発の三田村喜斗とベンチスタートとなる荒木奨陽だ。
自分たちのスタイルを貫くために超高速で走り出す最初の20分を三田村が作り、荒木がそれを引き継ぐ。
荒木は今回のメンバーの中で唯一の高校生(中部大春日丘3年)。しかしながら、4月におこなったレッドハリケーンズ大阪、花園近鉄ライナーズ、コベルコ神戸スティーラーズとのトレーニングマッチでは好タックルを連発する気持ちの強さを見せた。大柄な相手と対峙するNZU戦でも、その強気の姿勢が見られそうだ。
主将の中谷陸人は、2024年12月に台湾で開催された『アジアラグビーU19チャンピオンシップ』にU19日本代表として参加。その舞台で、より高いレベル、インターナショナルレベルとなり、世界と戦っていく気持ちに火がついた。
U19代表活動後も体作りに真摯に取り組んだのだろう。今回のU20代表活動には体をひと回り大きくして参加した。大久保HCは、その姿勢とマインド、タフなプレースタイルを評価し、「周囲に良い影響を与える存在」としてキャプテンに指名した。
BKでは、先の花園優勝校の司令塔だった、SO丹波雄丸とCTB神拓実のコンビネーションに期待がかかる。
神は普段のトレーニングからリーダーシップを発揮。チームが目指すスタイルを実現するには、この人の判断力は不可欠となる。また、そのプレーは「丹波の力を、より引き出すものとなるはず」(大久保HC)と相乗効果も見られそうだ。
チームは試合直前の合宿に元日本代表のPRとして39キャップ、クリタウォーターガッシュ昭島でアシスタントコーチを務める山村亮氏を招いてスクラム強化を図った。
ファーストスクラムから相手に圧力をかける準備はできている。
文: 田村 一博
田村一博
前ラグビーマガジン編集長。鹿児島県立鹿児島中央高校→早稲田大学。早大GWラグビークラブでラグビーを始める。ポジションはHO。1989年、ベースボール・マガジン社に入社。ラグビーマガジン編集部に配属される。1993年から4年間の週刊ベースボール編集部勤務を経て、1997年からラグビーマガジン編集長に就く。2024年1月に退任し、現在は編集者、ライターとして活動。
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