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6枠のプレーオフ進出権獲得へ向け、どちらにとっても絶対に勝ちたい試合だった。
4月12日(土)に長崎・ベネックス総合運動公園 かきどまり陸上競技場でおこなわれた三菱重工相模原ダイナボアーズ×横浜キヤノンイーグルスは、21-21でハーフタイムを迎える好ゲームとなった。
最高の滑り出しを見せたのはイーグルスだった。1分過ぎ、グラウンドを大きく使った。
敵陣での右ラインアウトを押し込んで人を寄せておいて、SO田村優が大きく空いた左のスペースにキックを蹴り込んだ。そのボールをWTB石田吉平がつかみ、ゴールラインを超えた(ゴールキックも決まり7-0)。
ダイナボアーズも強みを出して反撃に転じた。
この日、緑のジャージーは試合を通して前へ出る意志を見せ続けていた。前半8分過ぎ、ピッチ中央でCTBチャーリー・ローレンス、FLフリードル・オリヴィエー、CTBマット・ヴァエガとつないで防御を交代させ、最後はジョアペ・ナコが力強く攻め切った。
ゴールキックも決まり、スコアは7-7となった。
緑の勢いは、最初のトライでより大きくなった。
直後のリスタートのキックオフでボールを確保したダイナボアーズは、ラックからNO8吉田杏が抜け出してビッグゲイン。追いつかれるも、サポートしていたヴァエガがトライ、そしてゴールキックも決めて14-7とリードした。
ダイナボアーズは続く前半18分にも加点する。ここもシンプル。そして力強い。
自陣から蹴ったキックをチェイスし、レシーブしたイーグルスの石田をつぶし、ターンオーバーに成功する。すぐにボールを大きく動かし、最後はタウモハパイ ホネティが走り切る。
ヴァエガのゴールキックも決まり、10分間に21点を挙げる集中力で21-7とした。
イーグルスにとっては、今季、沢木敬介監督が試合ごとに指摘してきた、「淡白にトライを許す」シーンが続け様に出た時間帯だった。
アタックは蓄積したものがあり、自分たちのスタイルを出せる。しかし、今季思うように勝利をつかめない理由がここにある。
ジャパンラグビー リーグワン2024-25 D1(4月12日)
【第15節 ハイライト動画】三菱重工相模原ダイナボアーズ vs. 横浜キヤノンイーグルス
差を広げられたイーグルスは、その失点からまもなく相手陣深くに攻め込むと、ラインアウトからモールを組んで圧力をかけた後、BKに展開。ここで前節光ったCTB南橋直哉が前進、すぐに起きて、また前進。好機を広げた後、LOマシュー・フィリップがトライを奪った(21分)。
さらに前半27分、イーグルスは自陣で相手キックを受けると、ダイナボアーズの防御ラインの乱れを見逃さずにカウンターアタック。WTB石田がラインブレイクし、CTBジェシー・クリエルへ。背番号13が5点を追加した。
SO田村はすべてのゴールキックを成功させ、同点とした。
スコアの上では並んで後半に入ったが、より前へ出る意識が強かったのはダイナボアーズだったか。難しいことはしないが、接点で激しく、前に出る。イーグルスの得意な形に持ち込ませなかった。
この日、プレーヤー・オブ・ザ・マッチに選ばれたダイナボアーズのNO8吉田杏は前半から多くのボールキャリーでチームを前に出した。そして、後半は要所で相手ボールを奪った。
後半11分、勝ち越しのトライはモールからいいタイミングでボールを持ち出したHO李承ヒョが決めるも、その直前に吉田がスティールに成功して得たペナルティキックがきっかけだった。
後半16分のペナルティゴールでの加点も、この人のスティールから敵陣に攻め入った後のものだった。
31-21とリードを広げたダイナボアーズは、31分にラインアウトからトライを追加して勝負を決めた。
その直後に7点を返されるも、母体企業である三菱重工の発祥の地で嬉しい勝利を手にした。
得点欄を見れば外国出身選手の活躍が目立つスコアシートも、173センチの小兵も勝利に貢献したことを見逃さないでほしい。
後半7分から途中出場の左PR細田隼都がいい働きをした。10点リードで迎えた後半20分頃。2分強、自陣ゴール前にイーグルスに居座られる。しかし、最終的に何度も組んだ相手ボールスクラムで押して反則を誘った。
フィールドプレーでも、よく体を当てた。中でも38-28のスコアだった後半75分に見せた一撃は鋭かった。クイックスローでボールを動かすイーグルスがNO8アマナキ・レレイ・マフィに託した突進を、膝下のタックルで瞬時に倒す。仲間のスティール成功を呼んだ。
この試合を終え、30から勝ち点を積み上げることができなかったイーグルスは、勝ち点31で6位の東京サントリーサンゴリアスに次いで7位。ダイナボアーズは勝ち点を26と伸ばして9位となった。
残り3試合。6番目の枠を争う熱は、さらにヒートアップしそうだ。
文: 田村 一博
田村一博
前ラグビーマガジン編集長。鹿児島県立鹿児島中央高校→早稲田大学。早大GWラグビークラブでラグビーを始める。ポジションはHO。1989年、ベースボール・マガジン社に入社。ラグビーマガジン編集部に配属される。1993年から4年間の週刊ベースボール編集部勤務を経て、1997年からラグビーマガジン編集長に就く。2024年1月に退任し、現在は編集者、ライターとして活動。
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