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2人は、日本製鉄釜石シーウェイブスを牽引する存在。「釜石、東北という地域にとって、すごく特別な試合ということを頭に入れて頑張りたい」、「80分の最後まで戦う姿を見せるのが僕らの使命」の言葉は、チームとしての総意だった。
3月8日(土)に釜石鵜住居復興スタジアムが舞台となったリーグワン、ディビジョン2(以下、D2)の日本製鉄釜石シーウェイブス×レッドハリケーンズ大阪は、東日本大震災復興祈念試合として実施された。
2011年3月11日に起きた東日本大震災から14年。当日は4426人のファンが観戦に訪れた。
スタンドでは大漁旗が振られていた。歓声の大きさもあり、実際の観客数より多く感じられ、熱気は、選手たちの心にも響いたようだ。
そんな空気の中で、シーウェイブスの立ち上がりはいまひとつだった。キックオフから9分後にはFLベンジャミン・ニーニーが故意にパスをはたき落としたとされ、イエローカードを提示される。その1分後には先制トライを許した(コンバージョンキックも決められて0-7)。
D2の2位でこの試合を迎えたレッドハリケーンズは、オフロードパスの連続やサポートの厚さに上位チームの実力を感じさせた。何度もチャンスを作ることができていた。
シーウェイブスは13分にNO8のサム・ヘンウッドが防御を突破。そのままトライラインを越えて反撃に転じるも、前半17分、今度はFBヘンリー ジェイミーがイエローカードを受ける。ハイタックルだった。
追加点を与えたのは、その3分後。レッドハリケーンズのWTB石井勇輝に左隅へボールを運ばれた。
7-12とリードを許し、数的不利な状況が続いたシーウェイブスだったが、この日、最終的に35-24と逆転勝ちを手にすることができたのは、ディフェンスで圧力をかけ続けたからだ。ゴール前に攻め込まれても簡単にトライラインを越えられることはなかった。
ジャパンラグビー リーグワン2024-25 D2(3月8日)
【第7節 ハイライト動画】釜石シーウェイブス vs. レッドハリケーンズ大阪
ラグビーとは不思議なものだ。体を張って守っていると、やがて流れがくる。そのチャンスをことごとく仕留めたのが、プレーヤー・オブ・ザ・マッチに選出されたシーウェイブスの11番、阿部竜二だ。
地元・岩手、紫波町の出身で、黒沢尻工時代は主将として花園にも出場している。そんな25歳が、復興への思いが強い地域の人たちを笑顔にする走りを何度も見せた。
前半25分にSOミッチェル・ハントのパスを受け、左サイドを走り切った阿部は(コンバージョンキックも決まって14-12と逆転する)、後半が始まってすぐ、高い集中力を見せた。
2分のトライは、ターンオーバーしたボールをSH村上主将が好判断。相手の背後にキックを蹴り、それをCTB村田オスカロイドがつかむ。村田が出したパスは相手に当たり、転がるも、阿部がインゴールに持ち込んだ。
その5分後には、阿部がサインプレーを仕上げた。ラインアウト後の準備してきた攻撃で、CTB村田が抜け出す。しっかりサポートに走り、パスを受けるとインゴールへ。3連続トライだった。
SOハントが、この日のコンバージョンキックをすべて決めたことも効果的で、28-12とリードを広げる。後半11分にはSH村上主将もトライを挙げ、35-12として勝利を間違いないものにした。
絶対に勝ちたい試合で、計5トライを奪って快勝したシーウェイブスだが、選手たちは、勝因をディフェンスと感じていた。
須田康夫ヘッドコーチは、「選手たちが勝ちたい気持ちを出して、我慢の時間もありましたが勝ってくれた」と話した。村上主将も、「イエローカードが2枚出て厳しい時間も長かったのですが、一人ひとりがカバーに走ったり、ディフェンスし続けたことが結果に結びついた」と指揮官に続いた。
普段は反則が少なく、ソツのないゲーム運びを見せる相手のペナルティを誘い(後半だけで7つ)、アタックをミスで終わらせたのも、しつこく守り続けた結果だった。レッドハリケーンズのゲームキャプテンを務めた山口泰輝(FB)も、「コリジョンバトル(衝突時の争い)で受けに回ってしまった」と話し、勝者の気迫に飲まれたことを認めた。
多くの注目を集める試合のメンバー編成について、シーウェイブスの須田ヘッドコーチは、「ディフェンスの強さ」という普段からのセレクションポリシーに加え、気持ちの強さも重視して選んだ。
その中で、今季初出場のCTB村田が躍動した。ハードワーカーの期待に応えるパフォーマンスに、ぜひ注目してほしい。
チームはこの今季2勝目により、最下位から浮上。順位を7位に上げた(全8チーム)。
文: 田村 一博
田村一博
前ラグビーマガジン編集長。鹿児島県立鹿児島中央高校→早稲田大学。早大GWラグビークラブでラグビーを始める。ポジションはHO。1989年、ベースボール・マガジン社に入社。ラグビーマガジン編集部に配属される。1993年から4年間の週刊ベースボール編集部勤務を経て、1997年からラグビーマガジン編集長に就く。2024年1月に退任し、現在は編集者、ライターとして活動。
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