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地域の人たちに勇気と元気を届け、笑顔にするための戦いだ。絶対に負けられない。
2011年3月11日に起きた東日本大震災から14年。釜石の地は、甚大な被害を受け、多くの被災者が出た。
その時のことを忘れず、まだまだ続く復興の道を将来に続けようと呼びかける一戦が、3月8日(土)に実施されるリーグワン、ディビジョン2(以下、D2)の日本製鉄釜石シーウェイブス×レッドハリケーンズ大阪戦だ。東日本大震災復興祈念試合と位置付けられ、釜石鵜住居復興スタジアムでおこなわれる。
また、2月26日に大船渡市で発生した山林火災も甚大な被害を現地にもたらしている。現地へ向けた募金活動もおこなわれ、シーウェイブスの選手たちも奮闘を誓う。
マストウィンの覚悟で戦いに挑むシーウェイブスは、今季開幕からの6戦を戦って1勝5敗。D2の8位と最下位に沈んでいる。第3節の清水建設江東ブルーシャークスに勝った以降、現在3連敗中と苦しんでいる。
個々の選手のパフォーマンスは決して悪くない。
例えば、NO8サム・ヘンウッドの毎試合の貢献度は高い。プレーと姿勢でチームにモメンタムを与えている。個人スタッツも、ボールキャリ―数(75)、ディフェンス突破数(39)はD2で2位、ゲインメーター(327)は7位で、アタック面だけでなくタックル成功(80)も2位と防御面でも働く。
元マオリ・オールブラックスのヘンウッドは、シーウェイブス5年目。「このクラブでプレーをし始めた頃、負けてばかりでした。それでもファンは、応援し続けてくれた。信じられないくらい嬉しかった」と話し、チームと街を愛している。今回の試合でも奮闘することは間違いない。注目すべきひとりだ。
ハードタックラーでクラブキャプテン。激しさと魂でチームを引っ張るFL河野良太もヘンウッド同様にチームを前に出す存在だ。SH村上陽平主将も熱く、積極的にボールを動かして自分たちが求めるテンポを作る発信源だ。
SOのミッチェル・ハントは自分で仕掛けることも、キックを使って全体を前に出すこともできて、プレースキックもうまい(3トライ、18ゴール、5ペナルティゴールでの66得点はD2の中で3位)。
個々の力を勝利に変換できていないのは決定力不足が原因だ。この試合で対戦する2チームは他より1試合消化試合が少ない状況ではあるが、シーウェイブスの得点はD2の8チーム中7位で、トライ数は九州電力キューデンヴォルテクスと並ぶ20で最少。レッドハリケーンズ戦でも、敵陣での攻撃の結末が勝敗に直結するだろう。
レッドハリケーンズは開幕から4連勝と好スタートを切るも、第5節のキューデンヴォルテクス戦で敗れて連勝は途切れた。
しかし前節の日野レッドドルフィンズ戦では相手を1トライに抑えて25-8と勝利。再び気持ちを上へあげて今回の戦いに臨む。
2位につけるレッドハリケーンズがおもしろいのは、シーウェイブスとは対照的に、個々のスタッツでD2の上位に入るような選手は68得点でD2の2位となっている山口泰輝ぐらい(1トライ、18ゴール、9ペナルティゴールでの68得点)。
チームとしての総得点も上位4チームの中で最少(183)、失点も最も小さい(106)。さらに反則数は61と他チームよりかなり少ない。
丁寧に勝利を重ねてきたことが伝わってくるチームだ。多くないチャンスを確実にものにして、反則からの余計な失点を与えていない。
今季から松川功ヘッドコーチが指揮を執っている。選手時代から長くチームに在籍している指揮官のもと、戦う方向性が組織全体に浸透していてプレーしやすいとの声が選手たちから聞こえてくる。
今回の試合では、昨季途中にアーリーエントリーで入団し、今季が実質1年目で副将を務めるFB山口がゲームキャプテンを任された。セブンズ代表からも期待される好ランナーで、プレースキッカーとしても優秀。若きリーダーが仲間を勝利に導く働きを見せるか注目したい。
この試合は、スタジアムに足を運ぶ全ての観客が無料で観戦できることになっている(チケットは必要)。シーウェイブスのファンが発する応援の声はきっと熱い。
賢く、そして集中力高く戦うレッドハリケーンズとのチームカラーの違いも、試合を楽しむ要素のひとつとなる。
文: 田村 一博
田村一博
前ラグビーマガジン編集長。鹿児島県立鹿児島中央高校→早稲田大学。早大GWラグビークラブでラグビーを始める。ポジションはHO。1989年、ベースボール・マガジン社に入社。ラグビーマガジン編集部に配属される。1993年から4年間の週刊ベースボール編集部勤務を経て、1997年からラグビーマガジン編集長に就く。2024年1月に退任し、現在は編集者、ライターとして活動。
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