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【ハイライト動画あり】壮絶!42フェーズの攻防もあった4点差熱戦。三菱重工相模原ダイナボアーズ×トヨタヴェルブリッツ。ジャパンラグビーリーグワン2024-25第7節交流戦
ラグビーレポート by 多羅 正崇
前半スコアは衝撃の41-14。
リードしていたのは三菱重工相模原ダイナボアーズだ。
2月9日(日)のD1第7節。ダイナボアーズ(10位/2勝4敗)とトヨタヴェルブリッツ(8位/1勝1分4敗)は、2連敗からの脱出をかけ、まず序盤で1トライずつを奪い合った。
ひとつの転機は、ヴェルブリッツWTB高橋汰地のイエローカードだろう(前半12分、ヘッドコンタクトによる)。
ここから敵陣深くの攻撃機会を得たダイナボアーズは、主軸CTBマット・ヴァエガが内返しのパスで守備間を突破&逆転トライ。ヴェルブリッツは一瞬の躊躇が失点に繋がった。(12-7)
「前半40分間は、相手というより僕たち(ヴェルブリッツ)のディフェンスが上手くいかず、前に出られずに受けに回っていました。そこで点数を多く取られたのがもったいなかったです」(ヴェルブリッツ、HO彦坂圭克ゲームキャプテン)
序盤のヴェルブリッツは、バックスのタックル精度、システムの基礎となるスクラムが不安定だった。
象徴が17分。3本目の被トライだ。
モールパイルアップで攻守交代を受けると、リスタートのスクラムでアーリープッシュの反則。すかさずダイナボアーズが速攻。CTBヴァエガがトイメン(CTBジョセフ・マヌ)を弾いて独走トライを決めた。
肉弾戦とセットプレーの劣勢、さらにタックルミスも重なってビハインドが12点(19-7)に広がった。
相手が14人の間に2連続トライを奪った猪軍団。ヴェルブリッツは21分にWTB高橋が戻って15対15に戻ったが、自陣ゴール前スクラムから2次目で元チームメイトのFL吉田杏にラック脇を破られ、23分に4トライ目を奪われた。(24-7)
ヴェルブリッツはリーグ屈指の選手層。世界最高峰の指導陣を誇る。
それでもこの日のヴェルブリッツはファーストタックルの精度不足からゲインを獲られ、少ないフェーズであっさりトライを奪われた。スティーブ・ハンセンHCは試合後に敗因の一つとして、こう語った。
ジャパンラグビー リーグワン2024-25 D1(2月9日)
【第7節 ハイライト動画】三菱重工相模原ダイナボアーズ vs. トヨタヴェルブリッツ
「チームは非常にハードなトレーニングをしていますが、どうしても細かな瞬間、その一瞬の中でメンタルのスイッチが切れてしまうことがあります。それが表れたのが前半で、相手に試合をコントロールされてしまい、チームとしてリセットして立て直すのがハーフタイムまでかかってしまいました」(ヴェルブリッツ、ハンセンHC)
一方のダイナボアーズは、不安視されたスクラムで初先発のPRシンクル寛造らが健闘したこと、風下でボール保持の相手に対して前に出るディフェンスがハマったことも大きかったろう。
さらにダイナボアーズは風上を活かし、前半30分にPG追加(27-7)。
4分後にはWTBタウモハパイホネティが相手バックスとの1対1を制して前半5本目。さらに4分後の38分には南アフリカ代表のFBカートリー・アレンゼが6本目。いずれも相手のタックルミスから大穴を開け、得点に結びつけた。
だが、ボールを保持すれば得点できるのはヴェルブリッツも同様だった。
ヴェルブリッツは前半終了間際、FLアイザイア・マプスアが圧巻ドライブで2本目。後半に望みを託して14-41でハーフタイムを迎えると、風上の後半は形勢が反転した。
「相手チームが仕掛けてくると、それに対してもう一方のチームが『待ってしまう』『受けに回ってしまう』ということがあると思います。今日は前半に我々が受けてしまい、後半に関してはその逆のことが言えます。後半は我々がゲームを取りにいき、相手が受けに回っていました」(ヴェルブリッツ、ハンセンHC)
風上になったヴェルブリッツは、ボールを持てば確実にゲインした。
ゲームキャプテンのHO彦坂が前進すると、CTBジョセフ・マヌがFW顔負けのピック&ゴーで強引にグラウンディング。まず後半1本目を奪った。(41-21)
ヴェルブリッツは守備も修正。WTBシオサイア・フィフィタが模範を示すような強烈タックル。ターンオーバーを起こして空気を一変させると、反則を続けた相手から後半9分にCTBマヌが連続トライ&ゴールを決めた。(41-28)
残り約30分時点で、一気に13点差(28-41)まで詰め寄られたダイナボアーズ。
後半の劣勢が明らかになったとみるや、ダイナボアーズは大東文化大学からアーリーエントリーのハニテリ・ヴァイレアが途中出場でリーグデビュー。今季第1号となった。
「彼(ヴァイレア)は素晴らしいトレーニングをしていて、さまざまなポジションでプレーできます。今日フォワードを6人リザーブに入れたので、いろいろなポジションができる選手が必要というところもありましたが、彼が練習で勝ち取ったベンチのスポットです」(ダイナボアーズ、グレン・ディレーニーHC)
しかし主導権は、引き続き風上でボール保持のヴェルブリッツだ。
後半24分に好守で反撃の起点となったWTBフィフィタが左隅で後半3本目。4分後にはWTB高橋がキックカウンターからビッグゲイン、敵陣に入り、ルーキーNO8奥井章仁がゴール前の攻防戦をターンで制し、リーグ初トライを記録。
帝京大学の先輩であるSO松田力也のコンバージョン成功で、ついに4点差(40-44)残りは10分超。ムードはヴェルブリッツ優勢だ。
ここから両者はなんと42フェーズにわたる攻防をみせる。
元ヴェルブリッツのダイナボアーズSH岩村昂太主将は試合後、試合前の声掛けを明かした。
「試合前のロッカールームで『相手はかっこいいプレーやいろいろな技を使ってわれわれを攻撃してくるようなエリート軍団。我々は泥臭くひたむきにハードワークするのがDNAで、それをグラウンドで80分間証明しよう』ということを言い、グラウンドに出ました」
インプレー時間は68分50秒頃から74分40秒頃まで約6分。ペナルティなく攻防を続けた極限的な時間に終止符を打ったのは、ヴェルブリッツのFL奥井のスティールだったが、ここでヴェルブリッツは確実に体力を奪われた。
4点差に迫った直後は10分超の時間があったはずのヴェルブリッツだったが、深くなったハイパントからまさかの42フェーズ攻撃を返されて、気づけば時間は残り約4分となっていた。
ラストの攻防。悲鳴に似た声援のなか、79分30秒、ヴェルブリッツが11次攻撃目で痛恨のハンドリングエラー。これをフル出場のSH 岩村主将が捕球し、ターンオーバー。そしてボールを蹴り出し、ノーサイドを迎えた。
最終スコアは44-40。3勝目を挙げたダイナボアーズは8位に浮上。次節は三重に遠征し、10位(2勝5敗)の三重ホンダヒートとぶつかる。
守備コーチとしての経験が豊富なダイナボアーズのディレーニーHCは、課題感も滲んだコメントを残した。
「また前半と後半でまったく違う試合になりました。そこには風も影響していると思いますが、前半に関しては、私が関わった3年で一番良いラグビーを見せてくれたと思います」
「トヨタヴェルブリッツも素晴らしい、リスペクトしているチームで、素晴らしい選手もそろっているので、後半に相手に反撃してくるというのは分かっていて、止められない場面もありましたが、最後には勝ち切ることができました」(ダイナボアーズ、ディレーニーHC)
その一方で5敗目を喫したヴェルブリッツは9位に転落した。
「前半に関しては非常に残念に思っています。あれは我々の本来の姿ではないと思っていましたし、良いプレーができると思っていましたが、それは選手も同様の気持ちでハーフタイムに入りました」
「後半は非常に良いラグビーを展開することができたものの、超えるべきハードル(得点差)が高すぎたというのが率直な意見です。ファイティングスピリッツは見せましたが、前半に関しては、課題を解決していく必要があると思っています」(ヴェルブリッツ、ハンセンHC)
次節の岐阜でのホストゲームでは、課題となった前半を改善できるか。相手は今季躍進している4位(5勝2敗)の静岡ブルーレヴズだ。
文:多羅 正崇
多羅 正崇
スポーツジャーナリスト。法政二高-法政大学でラグビー部に所属し、大学1年時にスタンドオフとしてU19日本代表候補に選出。法政大学大学院日本文学専攻卒。「Number」「ジェイ・スポーツ」「ラグビーマガジン」等に記事を寄稿.。スポーツにおけるハラスメントゼロを目的とした一般社団法人「スポーツハラスメントZERO協会」で理事を務める。
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