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開幕5試合を終えて4位(3勝2敗)につける横浜キヤノンイーグルス。指揮する沢木敬介監督は、2024-2025シーズンのディビジョン1(D1)についてこう語った。
「どのチームも力がありますし、気が抜ける試合はひとつもありません」
D1は第5節を終え、埼玉パナソニックワイルドナイツを除く全チームに黒星がついた。
前身トップリーグでは実力差が歴然としている“大差決着”が少なくなかったが、4年目のリーグワンは下位ディビジョンを含めて混戦模様。白星を計算できるような試合はなくなりつつある。
どうすれば、この群雄割拠の時代に覇を唱えることができるのか。イーグルスの沢木監督は、シーズン中の成長度が重要であると考えているようだ。
「選手もコーチングスタッフも、チームが1試合1試合成長しないといけないという危機感をもちながら準備をしています。ほかの会場では東芝ブレイブルーパス東京も負けていましたし(第5節の静岡ブルーレヴズ戦で28-34で今季初黒星)、簡単な試合は一つもありません。バイウィークで良いリフレッシュをして、今後もチームが成長できるような試合をしていきたいです」(イーグルス・沢木監督)
D1は初のバイウィーク(休養週)を挟み、今週から他カンファレンスとの交流戦に突入。
4勝目を狙うイーグルスは2月1日(土)、9位(1勝1分3敗)のトヨタヴェルブリッツと激突する。
ヴェルブリッツはリーグ開幕年からイーグルスに3連敗だったが、昨季第15節に劇的勝利。最終盤にSOボーデン・バレットがアドバンテージのない状況でチップキックを転がし、高橋汰地が31次攻撃を逆転トライで締めてみせた。
記憶に残る名勝負を繰り広げた両雄が、ふたたび相まみえる舞台は愛知・豊田スタジアム。ホストのヴェルブリッツにとって今季2勝目を懸けた必勝の一戦となる。
ヴェルブリッツから今季イーグルスに加入したFL古川は、昨季イーグルス戦の逆転勝利に貢献した一人だ。馴染み深いスタジアムで古巣相手にどんなプレーを見せるのか。
そのヴェルブリッツは前節、首位を走るワイルドナイツとの一戦で序盤に課題を残した。前半27分までに3連続トライを許し、21点を追いかける展開になったのだ。
結果は22-38での敗戦だったが、後半だけのスコアは同点(17-17)。首位チームと拮抗するだけの実力はある。
元NZ代表指揮官のスティーブ・ハンセンHCは「ゲームのカギとなったのは最初の20数分だった」と敗因を分析した。
「最初の20数分で21点を先行されてしまいました。トップチームと対戦する上で、そういった試合運びになると苦戦を強いられます」
劣勢の原因は「相手のオフロードパス」や「裏を突かれる場面」が多くあったことだとして、次戦までに修正したいと語った。
イーグルス戦を転機としたいヴェルブリッツだが、逆風もある。キャプテンの日本代表バックロー姫野和樹が離脱を強いられる事態となっているのだ。
ハンセンHCは「ハムストリングの怪我です。予定では(復帰まで)2カ月もしくはそれ以上かかる見込みです」と明かした。
ただ姫野主将の抜けたバックローには、元豪州代表のレジェンドらが加入した。
2024年に代表引退を表明していたFLマイケル・フーパー(豪州代表125キャップ)が、古巣のヴェルブリッツに4季ぶりの復帰。1月17日に公式発表され、海外メディアで取り上げられるなど話題になった。
ヴェルブリッツの後藤彰友GMは「今回の加入では、試合でのパフォーマンスはもちろんのこと、近い将来、日本代表を担っていく若手選手たちの育成にも貢献してもらいます」と期待を寄せた。
ただ今週末の背番号7はフーパーではない。
フーパーに育成してもらいたい若手選手の一人であろう、京都産業大学の元主将、稀代のタックルマンである三木皓正だ。ナンバーエイトは前節デビューした帝京大学卒のNO8奥井章仁。同期入団した23歳の二人が、激戦区バックローの先発としてピッチに立つ。
前節からの先発変更はそのFL三木とCTBジョセフ・マヌ。オフロードパスでトライを演出する新加入のチャンスメーカーが背番号13を担う。
試合における注目ポイントの一つは前半戦だろう。
戦術遂行力が高いイーグルスは、集中力が高い序盤に高確率でトライを奪う。一方で終盤まで体力が落ちない粘り強いチームでもあり、ヴェルブリッツは序盤に離されると前節苦戦を強いられる可能性がある。
当然、フォワード戦も見所だ。イーグルスは前節ダイナボアーズ同様の力強いスクラムを見せられるか。ヴェルブリッツも強力スクラムが伝統であり、セットプレーで対等以上の勝負をすることが勝利の前提となるだろう。
好勝負の予感に満ちた注目のキックオフは、土曜日の午後2時30分。4万5000人収容の球技専用スタジアムで、勝利の雄叫びを上げるのはどちらか。
文:多羅 正崇
多羅 正崇
スポーツジャーナリスト。法政二高-法政大学でラグビー部に所属し、大学1年時にスタンドオフとしてU19日本代表候補に選出。法政大学大学院日本文学専攻卒。「Number」「ジェイ・スポーツ」「ラグビーマガジン」等に記事を寄稿.。スポーツにおけるハラスメントゼロを目的とした一般社団法人「スポーツハラスメントZERO協会」で理事を務める。
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