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【ハイライト動画あり】福島で3点差の大熱戦!「日本製鉄釜石シーウェイブス」×「花園近鉄ライナーズ」。ジャパンラグビーリーグワン2024-2025(D2)
ラグビーレポート by 多羅 正崇
3点差決着の熱戦だった。
ハワイアンズスタジアムいわき(福島・いわき市)で開催されたディビジョン2(D2)の第4節「日本製鉄釜石シーウェイブス」×「花園近鉄ライナーズ」。
開始早々、ディフェンスで魅せたのはホスト今季初勝利に燃える1勝2敗の日本製鉄釜石シーウェイブスだ。
まずライナーズのモールを自陣深くで止めてみせる。さらにフェーズ攻撃に移行したライナーズに対し、ラックでファイトして反則(ネックロール)を誘発。序盤の失点を防いだ。
「相手の回すアタック(展開攻撃)に対して対応できていたので、そこはポジティブに捉えています」(シーウェイブス、SH村上陽平主将)
だが先制トライは、昨季までディビジョン1にいたライナーズだ。
敵陣での肉弾戦で逆に押し込まれはしたものの、9次攻撃目でFBセミシ・マシレワが得意のステップで突破。自慢の攻撃力で7点を奪った。
しかしシーウェイブスも反撃する。
敵陣ラインアウトの好機を迎えると、攻守の要、NO8サム・ヘンウッドが一次攻撃からロングゲイン。ライナーズはファーストタックルの精度に課題を残した。
ここから敵陣でフェーズを重ねて、最後は相手のファーストタックルを外したSOミッチェル・ハントがトライ奪取。「モメンタム(勢い)を出すために3回のポジティブアクションを続けることを設定している」(須田康夫HC)というシーウェイブスが、生まれた勢いを得点に変えてみせた。
ここからは一進一退の応酬。
直後の16分にはライナーズのCTBステイリンパトリックが、複数のディフェンダーを振り切る絶妙なポジショニング。SH河村謙尚が鋭いパスで応えると、大外で背番号7の宮下大輝がフィニッシュした。(5-14)
シーウェイブス側で気を吐いたのは、同じく背番号7のFL河野良太だろう。
ジャパンラグビー リーグワン2024-25 D2(1月25日)
【第4節 ハイライト動画】釜石シーウェイブス vs. 花園近鉄ライナーズ
大東文化大学時代から強烈タックルで鳴らしたフランカーが、26分にモール最後尾から右隅に飛び込んで2点差(12-14)。直後の再開後には、相手のノックフォワード(ノックオン)を誘うビッグタックルも放った。
一方、前半のライナーズはペナルティが課題に。
36分にペナルティ(ノットロール・アウェイ)で3失点。さらにリスタート後にも2連続のペナルティ(エクストラロール)で、相手CTBヘルダス・ファンデルヴォルトが風上の利も生かして60m級のショットを成功。
シーウェイブスのリード4点リード(18-14)で試合を折り返した。
「(試合中盤以降の規律については)まだ甘いところがあったり、規律を維持しなければいけなかったりする場面はありますが、外側からそういう声が出るのではなく、チームの中から『規律を』という声が出て、それを試合中に修正できないといけません」(ライナーズ、向井HC)
後半は風下にまわったホストのシーウェイブス。
開始直後から強烈なアタックをみせる。ライナーズがハイタックルの反則を犯すと、フルバックに入ったFB落和史が右隅へ配球。ここで無人の背後へWTB川上剛右がショートキック。
これを好位置で追いかけていたSH村上主将が捕球。ふたたび川上へ返して、トライエリアへ。ゴールキックも成功して11点リード(25-14)を得た。
11点を追う立場となったライナーズ。51分にはSOクウェイド・クーパーの妙技で突破を生み出すが、運動量豊富なNO8ヘンウッドが戻ってスティール。ラックへの集散でシーウェイブスが上回る。
「崩れてしまうとプレッシャーを受ける時間帯が多かったです。そういう部分ではやるべきことをやり切る一貫性が足りていないと試合中に思ったので、そこを突き詰めてやっていきたいと思います」(ライナーズ、SH河村謙尚バイスキャプテン)
敵陣フェーズ攻撃でワクァが突進。ギャップを突いて前進すると、イオアネに繋ぎ、最後は同志社大学出身の文裕徹が相手ウイングを弾いてトライエリアへ。4点差(21-25)と追いすがる。
だがシーウェイブスは流れを渡さない。
中盤で大東文化大学出身のFB落が的確なハイパント。これを10番のミッチェル・ハントがチェイス。相手の戻りが遅くターンオーバーを起こしてみせると、NO8ヘンウッド、CTB畠中豪士らが力強いキャリー。
最後はFB落の大学先輩にあたるFL河野が、ラック中央をピック&ゴーでトライ奪取。モメンタムを生かすアタックで4本目。ふたたびリードを9点に広げた。
試合時間はあと約20分。
粘りたかったシーウェイブスだが、ここでライナーズがスクラムから戦況を変えた。66分には東海大学出身で途中出場のPR井上優士らフォワードが、ヒットから優勢となり2連続のペナルティを奪った。
途中出場組が中心となってスクラムから局面を変えたライナーズ。ここからモールトライを奪って4点差(26-30)。さらに自陣で逆襲を受けた局面で、会心のスクラム・ターンオーバー。
控え組を前面に押し出した展開から、後半36分には5本目のトライ。終盤はディフェンスもエナジーアップし、ライナーズが3点差で今季初勝利を挙げた。
4戦目で今季初勝利を手にしたライナーズの向井HCは「本当に勝利を願って臨みました」と吐露した。
「ただ勝ったことは嬉しく思っていますが、改善の余地があるゲームで、守勢に回ると守り切れないという部分が修正ポイントかなと思います」
「流れをつかんだ時には非常に良いトライをしていましたが、まだまだ自分たちで今季のスローガンである『All Attack』のところまではいけていないと思います。それを目指してまたチャレンジしていきたいと思います。今日のゲームは勝てたということで一瞬ですが、喜びたいと思っています」(ライナーズ、向井HC)
その場のムードによって強度が変わる攻守など、ライナーズが克服すべき課題は少なくないように思えるが、まずは今季初勝利を足がかりとして上昇気流に乗りたいところだ。
一方、敗戦を喫しながらもポジティブな声が上がったのがシーウェイブスだ。
「ミスはありましたが、我々としては非常に良い内容だったと思います。ただ重要な局面でのプレッシャー負けであったり、エラーであったり、それからメンバーを入れ替えたときの質というところは改善が必要なところだと思います。そこがしっかりできれば勝ち切れるチームになれると思います」(シーウェイブス、須田HC)
最下位から6位に浮上したライナーズ。次戦は「元D1対決」。かつて共にD1の戦場にいた3位(2勝2敗)のNECグリーンロケッツ東葛と2月2日(日)、千葉・柏の葉で16時キックオフのビジターゲームに挑む。
今季2勝目を狙う7位のシーウェイブスは2月1日(土)、東京・AGFフィールドで最下位(1分3敗)と苦しんでいる日野レッドドルフィンズとの対戦が待つ。
確実にレベルアップしてD1同様の混戦となっているディビジョン2。見逃せない戦いはまだまだ続く。
文:多羅 正崇
多羅 正崇
スポーツジャーナリスト。法政二高-法政大学でラグビー部に所属し、大学1年時にスタンドオフとしてU19日本代表候補に選出。法政大学大学院日本文学専攻卒。「Number」「ジェイ・スポーツ」「ラグビーマガジン」等に記事を寄稿.。スポーツにおけるハラスメントゼロを目的とした一般社団法人「スポーツハラスメントZERO協会」で理事を務める。
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