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高校日本代表候補の9人、下段左から大門、川端、名取、原。上段左から上田、竹之下、川相、前川、山添
12月27日から大阪・東大阪市花園ラグビー場で、各都道府県の代表51校が出場し、高校ラグビー日本一を決める「花園」こと、第104回全国高校ラグビー大会が開催されている。
今大会、最もファンの耳目を集めているのが、Aシードで高校日本代表候補が9人いる大阪桐蔭(大阪第1)で、6年ぶり2度目の優勝と史上5校目の春夏連覇、そして初の『15人制の3冠』がなるか、だ。
「白い旋風(WHIRL WIND)」こと、大阪桐蔭は春の選抜大会で圧倒的な強さで優勝。続く、サニックスワールドユースでも海外の強豪校が参加する中、準決勝でサウスランド・ボーイズ・ハイスクール(ニュージーランド)24-17で勝利、決勝戦では桐蔭学園を下して日本勢として初めて優勝し、「2冠」に輝いた。
花園の大阪府予選決勝では、昨季花園に出場した関大北陽を40-0で下し、4大会連続18回目の花園出場を決めた。新チームになってから大阪桐蔭は公式戦で、15人制では負けなしで連勝、夏合宿や練習試合を通しても無敗を続けているという。
同校OBで大阪体育大学卒業後に赴任し、ラグビー部の指導を続ける綾部正史監督(50歳)は「途中で負けると思っていたんですが…」と苦笑する。
山本部長(左)と綾部監督の2人で日々指導する
綾部監督と、OBの山本健太部長の2人が日々指導するが、ラインアウトはOBの四至本侑城(元クボタ)、スクラムは大西優希(元神戸製鋼)、さらにOBであり花園近鉄ライナーズのHO(フッカー)上山黎哉選手も指導に来てくれる日があるという。
第104回全国高等学校ラグビーフットボール大会
今季の強みを聞くと、どの選手もコーチ陣も「ディフェンス」という答えが返ってくる。春の選抜大会でも、1試合の平均失点は3.6点、大会5試合を通して2トライしか相手に与えず、大阪府予選では3試合とも相手をゼロ封で頂点に立った。
下級生の有望選手。左から身長190cmLO泊、CTB手崎(ともに2年)、1年生のFB吉川
BK(バックス)陣は、昨季からチームの中軸であるキャプテンCTB(センター)名取凛之輔、SH(スクラムハーフ)川端隆馬、SO上田倭楓(いずれも3年)に、キック力、ランに長けたFB(フルバック)吉川大惺(1年)など、走力のあるバックスリーがおり、タレントが揃う。
一方で例年と比べ、今季のFW(フォワード)は小型化していた。そのため、新チームとなると綾部監督は自然とディフェンス、フィットネスを鍛えて強みとした。フィジカルは大阪桐蔭の伝統的な武器であり、身体づくりのため白米を朝400g、昼700g、夜700g食べるというノルマは続いている。
フィットネスの強化をする選手たち
しかも、ただフィットネス強化のために走るトレーニングをするのではなく、取材した12月上旬も、1分間シャトルランを行った後、疲れた状態をあえて作った中で、守備に重きを置いたアタック&ディフェンスをするという練習を3本、4本と繰り返していた。
副将のNO8(ナンバーエイト)大門一心、PR(プロップ)原悠翔、川相喜由、FL(フランカー)前川竜之介(ともに3年)を中心とした走力のあるFW陣が、タレントやランナーが揃うBK陣に、活きたボールを供給するのが今季の大阪桐蔭のスタイルとなっている。
そんな中でも「チームの中心」と監督が信頼を寄せるのが、ハードタックラーのインサイドCTB名取キャプテンだ。U17日本代表のアウトサイドCTB手崎颯志(2年)とコンビを組んでおり、指揮官も「この2人が抜かれたらしかたがない」と話すほど信頼を置く。
完成したばかりの人工芝のグラウンドで
創部は1983年。今年10月末にグラウンドを人工芝化し、その脇にはウェイト場が併設されている。部員は75人(3年生26人、2年生23人、1年生26人)。全員が芸術・スポーツコースであるIII類に所属しており、週4回は5時間授業で、学校からバスで15分ほどの生駒山の山中にある練習場で、毎日午後3時半から3時間ほど練習を行っている。朝練習は基本的に行っておらず、ウェイトトレーニングをする選手もいる。
副将のHO光安翔平(3年)は「力強いスクラムと、走り込むプレーを見せたい」と言えば、もう1人の副将NO8大門は「春から意識していたが、夏合宿では特にブレイクダウンを重点的にやった。ラグビーはFWからだと思うし、接点で勝たないとBKに良いボールを出せない。チームで一番、身体張ってがんはりたいし、花園でライバルの桐蔭学園に勝って優勝したい」と語気を強めた。
チームの中軸を担うSH川端
ハーフ団ではSH川端が「春に優勝し追いかけられる立場なので、プレッシャーはある。FWはフィジカルがあり強く、BKはスピードのある選手が揃うので、上手く使い分けてゲームを作っていきたい」とコメント。
チームメイトに声をかける司令塔の上田
また、SO上田は「特にプレッシャーはない。相手どうこうではなく、花園では自分たちのラグビーをすることだけを考えてやっていきたい。ブレイクダウンの強さを見せて、ボールを大きく動かすラグビーをしたい」と冷静に本番を見据えた。
最後にチームをまとめるキャプテンCTB名取は、「昨季は準決勝で負けているので、花園で桐蔭学園に勝って優勝したい。慢心しないように、チャレンジャーとして臨もうと練習から声をかけています。タックルでチームを鼓舞したい」と意気込んでいる。
花園では、一昨季は準々決勝で京都成章(京都)、昨季は準決勝で桐蔭学園(神奈川)に敗れている。そのため、名取キャプテン自らが考えたスローガンは、努力した先に日本一を達成したいという意味を込めた「結実」である。
リーダー陣 左からHO光安、NO8大門、CTB名取主将、SO上田
今季の3年生は例年以上に個性的な選手が揃い、明るく、まとまりがあるという。強固なディフェンスと激しい接点を軸とした展開ラグビーで、「白い旋風」が花園で2度目の頂点に立ち、初の『15人制の3冠』を達成とともに、今季無敗のまま駆け抜け抜けることができるか。
大阪桐蔭は2回戦からの登場。12月30日(月)午後1:15から、第1グラウンドで城東(徳島)に勝った長崎北陽台(長崎)と対戦する。
文/写真:斉藤健仁
斉藤 健仁
スポーツライター。1975年生まれ、千葉県柏市育ち。ラグビーと欧州サッカーを中心に取材・執筆。エディー・ジャパン全試合を現地で取材!ラグビー専門WEBマガジン「Rugby Japan 365」「高校生スポーツ」の記者も務める。学生時代に水泳、サッカー、テニス、ラグビー、スカッシュを経験。「エディー・ジョーンズ 4年間の軌跡」(ベースボール・マガジン社)、「ラグビー日本代表1301日間の回顧録」(カンゼン)など著書多数。≫Twitterアカウント
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