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ラグビー コラム 2024年12月25日

「信は力なり」。「スクール☆ウォーズ」のモデルとなった旧・伏見工業、京都工学院として初の花園へ。全国高校ラグビー大会

ラグビーレポート by 斉藤 健仁
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9大会ぶりに赤黒ジャージが花園に帰って来る

12月27日、東大阪市花園ラグビー場で開幕する「花園」こと、104回目を迎える全国高校ラグビー大会。ノーシード校の中で、最も注目を集めているのが9大会ぶり21回目の出場となる京都工学院(京都)だ。

テレビドラマ「スクール☆ウォーズ」のモデルとなったことで、全国的に知られる京都・伏見工業を前身に持つチームで、優勝は4回を誇るが、8年連続、予選決勝で京都成章に敗れていたため、「京都工学院」という名前になってからは初の花園となる。

第104回全国高等学校 ラグビーフットボール大会

11月10日、京都・たけびしスタジアム京都(西京極競技場)で、京都府予選決勝が開催された。ライバル同士の対戦は今年3度目。2月の近畿大会では京都工学院は22-27で敗れたが、5月の京都府の高校総体では59-8で快勝していた。

今年は京都工学院が有利と思われた中での決勝だったが、京都成章も意地を見せて接戦となる。しかし、最後にU17日本代表の司令塔SO(スタンドオフ)杉山祐太朗がジャッカルを決め、京都工学院が守り切って10-8で勝利した。2000年度、3度目の花園優勝時の主将だった大島淳史監督(41)は、ノーサイドの笛が鳴った瞬間、歓喜の涙を流した。

大島監督(京都工学院)

「9年ぶり勝って、花園に赤黒(ジャージー)が復活する日を待ってくださった方の人たちの期待に応えられて、少しホッとしたし、生徒の頑張りが報われたので本当にうれしかった」。

「8年間というのはそれだけ長かったし、もう伏見工業は、京都工学院になって終わったのでは…と、いろんなところで言われていたと思うが、また花園に戻って来られて、やっとスタートラインに立てたという喜びが出た」。

第104回全国高等学校ラグビーフットボール大会

大島監督は伏見工業から日本体育大学でプレーをした後、京都市の中学校の教諭として赴任。6年前に監督になった。2016年、伏見工業は洛陽工業と統合し、京都工学院という名になり、2018年にちょうど3学年が揃った後だった。

大島監督は「京都工学院と学校の名前が変わっただけでなく、2つの学校が統合して学校が変わったが、ラグビー部のスタッフも大きく変わっていく時期が重なった。その時は一生懸命やっていたが振り返ると、その2つが重なったタイミングは、やっぱりしんどかった」と正直に吐露した。

しかし、伏見工業時代に元日本代表SH(スクラムハーフ)田中史朗さんとハーフ団を組んで花園ベスト4となり、早稲田大学でプレーもしていた細川明彦コーチを招聘するなど指導体制を整えつつ、京都成章との着実に差を埋めていった。

2022年には「京都工学院」として初めて春の選抜大会に出場した。ただ、昨年の花園予選決勝もライバルを追い詰めたが、最後にトライを許して7-10と惜しくも花園出場を逃した。

「指導して6年ということで、失敗を成功に生かすために年々取り組んでいるし、このチームをより良くしていくために、どうしたらいいのかという積み重ねが少しずつ、良い形になってきている」と大島監督。

今季、大きく変えた点は京都成章という壁を超えるために、京都成章に勝つための練習ではなく、全国で勝っていくための取り組みを始めたこ、一緒にやらせてもらうことで、レベルを上げることができた」と話す。

また、セットプレーと接点を1年間かけてしっかり鍛えたことも功を奏した。大島監督は「ラグビーの中で接点がぶれなければ、きっちりとした試合にはなる。私の中では、セットプレーの重要さを大事にしてきた」と語気を強めた。

広川陽翔主将(京都工学院)

決勝でトライを挙げた、ランが持ち味のキャプテンFB(フルバック)広川陽翔(3年)も「セットプレーが安定しているので、もしミスしてもスクラム、ラインアウトで取り返してくれるという安心感があるので、強気で勝負できる」と話した。

高校1年時は、キャプテンシーがあるタイプではなかったという広川キャプテンの成長も、チームに良い影響を与えたようだ。大島監督は「広川は決定力があるし、ハイボールも強いし、しぶとさもでてきた。最終学年になり、覚悟を決めて、自分からキャプテンを引き受けた」。

「広川には『君の目標がチームの目標になる。君のモチベーションがチームのモチベーションになる。君の取り組みがチームの取り組みになる』と言ってきた。その中で、予選決勝で勝って花園に行く、花園でも勝つという、彼の中のラインが崩れなかった。それが今年の学年が飛躍的に伸びた1つの大きな要因だった」と目を細めた。

そのFB広川キャプテンは「全国で勝つために練習はやってきたので、全国に行くためには京都成章を倒してからでないと行けない。3年間、本気で努力してきたので、本当に勝ててうれしかった」。

「練習からしんどいことを逃げずに全員が取り組んできて、最後の10分で、全員が仲間のために身体を張って、走り続けることができたことが勝利につながった」と破顔した。

伝統のスローガン「信は力なり」

京都工学院ラグビー部を象徴する言葉は、やはり「信は力なり」だ。山口良治監督(現・総監督)時代から使用してきたチームの伝統的なスローガンである。

OBでもある大島監督は、「山口先生から、自分たちを信じられるだけの取り組みをやってきたら大事な瞬間、試合に『信は力なり』と思えるような心境になる。また、試合に出ているメンバーだけでなく、試合に出られない仲間のためにどれだけ身体を張って戦えるか、ということをずっとおっしゃっていた」。

「私が監督となっても一番大事にしている言葉ですし、赤黒ジャージーのチーム作りの中で非常に大事にしている部分です。チームの象徴、芯というか、伏見工業から京都工学院に名前は変わっても時代は変わっても変えてはいけない、チームの文化だと思う」と話した。

近畿大会ベスト4だった京都成章を下しての花園出場だったが、京都工学院はシード校には選ばれず、ノーシードとなった。1回戦は12月27日、2度目の出場で初勝利を目指す聖光学院(福島)と対戦する。勝てば12月30日、選抜大会ベスト8の中部大春日丘(愛知)にチャレンジする。

監督として初の花園となる大島監督は「赤黒ジャージーで戦う以上、花園に出るだけで喜ばれるチームではないことは、本当によくわかっている。部員106人がまとまって取り組んだら、チームはよりレベルアップする。ノーシードなので恐れるもの、守らなければならないものはないし、最も恐れられるノーシード校になるよう、チームのエナジーを上げていきたい」と意気込んだ。

FB広川キャプテンは「予選決勝では、自分たちが練習してきたアタックを思うように出せなかったので、そこの部分をもっと磨いていきたい。京都工学院は花園に出るだけで納得してもらえるチームではないと思うので、京都成章など京都の大会で負けた高校のみんなの思いを背負って優勝を目指して頑張りたい」と本番を見据えた。

京都工学院となっても脈々と「伏工魂」は受け継がれている。山口先生も見守る中、赤黒ジャージーが再び、花園で大きな旋風を起こすことができるか。

文:斉藤健仁

斉藤健仁

斉藤 健仁

スポーツライター。1975年生まれ、千葉県柏市育ち。ラグビーと欧州サッカーを中心に取材・執筆。エディー・ジャパン全試合を現地で取材!ラグビー専門WEBマガジン「Rugby Japan 365」「高校生スポーツ」の記者も務める。学生時代に水泳、サッカー、テニス、ラグビー、スカッシュを経験。「エディー・ジョーンズ 4年間の軌跡」(ベースボール・マガジン社)、「ラグビー日本代表1301日間の回顧録」(カンゼン)など著書多数。≫Twitterアカウント

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