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モールからトライを挙げて喜ぶ明治大学FW
今シーズンのラグビー全国大学選手権も本格化、12月14日(土)には東西で3回戦4試合が行われた。東京・秩父宮ラグビーでは、昨シーズン準優勝の明治大学(関東大学対抗戦3位)と、東海大学(関東大学リーグ戦3位)の強豪同士がいきなり激突した。
明治大学は帝京大学、早稲田大学に敗れたものの、対抗戦3位で16大会連続53回目の出場となった。一方、リーグ戦7連覇を目指した東海大学は、中盤以降なかなか調子が上がらなかったが、最終戦で流通経済大学に勝利して、3位で20大会連続22回目の出場を決めた。
戦前は、100回目の「早明戦」で、対抗戦優勝の早稲田大学を24-27で苦しめた明治大学が優位と予想されていた。だが、明治大学は脳しんとうの影響などによりキャプテンNO8(ナンバーエイト)木戸大士朗や、副キャプテンCTB(センター)秋濱悠太、BK(バックス)リーダーの安田昂平、LO(ロック)佐藤大地(いずれも4年)が欠場。
明治大学のゲームキャプテンFL福田
FW(フォワード)リーダーのFL福田大晟(4年)がゲームキャプテンを務めたが、先発15人中4年生が4人と若手中心で臨んだ。特に1年生SO(スタンドオフ)萩井耀司、インサイドCTB伊藤龍之介(2年生)のダブル司令塔に注目が集まった。
一方の東海大学は前節から1人のメンバー交替にとどめた。共同キャプテンのFL(フランカー)汐月佑心、CTB近藤翔耶を筆頭に、HO(フッカー)下江康輔(4年)、WTB(ウイング)中川湧眞(いずれも4年)、FB(フルバック)コンラッド・セブンスター(2年)ら、お馴染みのメンバーが並び、今シーズン好調のセットプレー、そしてディフェンスでプレッシャーをかけたいところだった。
試合がなかった3週間、リーグワンの強豪チームに出稽古を敢行するなど準備してきた東海大学は、先手必勝でディフェンスからプレッシャーをかけるというゲームプラン。一方、明治大学のこの試合のテーマは「TRUTH」、つまり「この1年間、やってきたことを信じる」だった。
ラグビー 全国大学選手権 24/25
【ハイライト動画】3回戦 明治大学 vs. 東海大学| 主力不在の明治が準々決勝進出
東海大学FBセブンスター
負けたら今シーズンが終わるという緊張感の中、試合開始から10分間はお互いがフィジカルバトルで引かない、真っ向勝負だった。試合が動いたのは前半15分、東海大学FW陣が中盤でモールを押し込むと、SH(スクラムハーフ)山田莞大(3年)が相手のギャップを突いて抜け出し、そのまま中央にトライ。FBセブンズターがゴールを決めて7点を先制した。
トライを挙げる明治大学のCTB伊藤
だが、明治大学も負けていない。紫紺のFW陣がモールを押し込んだ後、21分、ボールを継続し、最後はCTB伊藤が個人技で右中間にトライを挙げ、CTB平翔太(3年)がゴールを沈めて7-7の同点とした。
すると25分、東海大学はスクラムで反則を得て、相手陣奥深くに攻め込んでチャンスを得たが、1年生SO浦本明惟(松山聖陵)がDG(ドロップゴール)を狙ったものの、決めることができなかった。
トライを挙げた明治大学SH柴田
30分、明治大学はハイパントキックを軸に相手陣に攻め込むと、最後はSH柴田竜成(3年)がトライを挙げて、14-7と逆転する。PG(ペナルティゴール)を1本決められたが、36分、SO萩井のハイパントキックを、1年生WTB白井瑛人(桐蔭学園)が見事にキャッチし、最後はFB金昂平(4年)が右隅にトライを挙げて、21-10とリードを広げて前半を折り返した。。
11点差で迎えた後半、東海大学は何としても先に得点を挙げたいところだった。しかし、東海大学は最初のプレーで反則をしてしまい、明治大学がいきなりチャンスを迎える。後半4分、モールからのサインプレーの後、FWで近場を突いた後、右に展開してWTB白井がトライを挙げ、26-10とさらにリードを広げた。
ハイパントキャッチで魅せた明治大学WTB白井
その後、東海大学が攻める時間帯があったが、明治大学のディフェンスを崩すことはできなかった。すると17分、明治大学は再び、WTB白井のハイパントキャッチを起点にアタックを継続し、最後はラインブレイクしたCTB平が中央にトライ。
自陣から走りきった明治大学WTB竹之下
21分にはゴール前のモールから、ゲームキャプテンFL福田が押さえてトライ(38-10)。26分には途中交代のWTB竹之下仁吾(2年)が自陣から60m走り切ってトライ。43-10として勝負を決めた。
東海大学は1本トライを返したものの、40分、明治大学は再びモールから途中出場のHO金勇哲(4年)が、8本目となるトライを挙げてノーサイドを迎えた。相手のプレッシャーがある中、好機にしっかり得点を重ねた明治大学が、50-17で快勝し、準々決勝に駒を進めた。
スタンドから声援を送る東海大学の選手たち
敗戦で、今シーズンが終了した東海大学の木村季由監督は「試合の入りではやろうとしていたことが出た部分がたくさんあったが、明治さんがスコアを重ねて、後半はペナルティで苦しんだ。今年、苦しい状況がたくさんがあったが、4年生がよくやってくれた。負けたことは事実なので、これを乗り越えて、今日は選手たちを労いたい」と話した。
共同キャプテンCTB近藤は、「前半、プラン通りで良い感じで折り返したが、後半、ペナルティを続けて失点を重ねてしまった。エキストラで入って来る選手に対するコミュニケーション不足や、意思疎通が取れてなかった。ディフェンスを武器としてきたチームが、ディフェンスで取られてしまったことで、精神的に劣勢になってしまった」と悔しそうな表情を見せた。
リーダー陣が不在の中でも快勝した明治大学の神鳥裕之監督は、「負けたら終わりというトーナメントにふさわしい試合に勝つことができて、まずホッとしています。東海大学は、関東リーグ戦で長い間、チャンピオンだったことがわかるいいチームで、我々としてはまた成長させてもらえた」。
明治大学1年のSO萩井
「また、リーダーがいないという状況の中で、数少ない4年生がチームを引っ張って、若いメンバーたちも良い経験ができた。この経験を成長の糧に、次の天理大学戦に向けて準備していきたい」と振り返った。
FL福田ゲームキャプテンは、「前半、東海大学さんのブレイクダウンに圧倒されてしまいましたが、自分たちがやってきたことを信じて、一貫性をもって80分間、緩まないで、最終的には上回れたので良かった。天理大学もフィジカルが強いと思うので、ディテールのところまで、1週間しっかり準備をしていきたい」と前を向いた。
準々決勝に進出した明治大学は、12月22日(日)、三重・三重交通グラウンドで関西王者の天理大学(関西1位)に挑む。夏の練習試合では、28-29と逆転負けを喫した相手にリベンジを果たし、帝京大学(対抗戦2位)と慶應義塾大学(対抗戦4位)の勝者と戦う、正月・国立の準決勝に進むことができるか。
文/写真:斉藤健仁
斉藤 健仁
スポーツライター。1975年生まれ、千葉県柏市育ち。ラグビーと欧州サッカーを中心に取材・執筆。エディー・ジャパン全試合を現地で取材!ラグビー専門WEBマガジン「Rugby Japan 365」「高校生スポーツ」の記者も務める。学生時代に水泳、サッカー、テニス、ラグビー、スカッシュを経験。「エディー・ジョーンズ 4年間の軌跡」(ベースボール・マガジン社)、「ラグビー日本代表1301日間の回顧録」(カンゼン)など著書多数。≫Twitterアカウント
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