人気ランキング

J SPORTS IDを登録すれば、
すべての記事が読み放題

J SPORTS IDの登録(無料)はこちら

メルマガ

お好きなジャンルのコラムや
ニュース、番組情報をお届け!

メルマガ一覧へ

コラム&ブログ一覧

ラグビー コラム 2024年12月2日

【ハイライト動画あり】4万544人が目撃した歴史的大熱戦。100度目の早明戦は3点差決着

ラグビーレポート by 多羅 正崇
  • Line

 

「今日は本当に、明治大学さん、われわれ、双方のプレイヤーがいま持てる力を出したと思います」(早稲田大学・大田尾竜彦監督)

実力伯仲の大熱戦に4万544人が酔いしれた。

2024年12月1日(日)、100度目の対戦を迎えた早明戦は、関東大学対抗戦の優勝を決める大一番。

1位(勝点36)で6戦全勝の早稲田大学と、2位(勝点31)で5勝1敗の明治大学。竜虎相打つ黄金カードで、明治大は3トライ差以上のボーナス1点、26点差をつけての勝利しか対抗戦優勝の道はなかった。

J SPORTS オンデマンド番組情報

が、国立競技場に漂っていたのは、赤黒と紫紺のジャージーが織りなす独特の空気感。そこに広がっていたのは、勝点争いを超えた、『早明戦』という名の世界だった。

「歴史ある早明戦で試合をするということで、本当に早稲田らしくない試合はできないと思っていました」(早稲田大・大田尾監督)

福島秀法(早稲田大学)

先制トライは前半13分、HO佐藤健次が左隅で切り取った。端緒はCTB福島秀法のラインブレイク。大田尾監督の個人的MVPはこの修猷館出身の3年生だった。

「今日の福島(秀法)には助けられました。最初のトライに繋がるラインブレイクや、(終盤の明治大・伊藤の)ラインブレイクでいかれたかなと思った場面でもタックルしてボールも押さえていました」(早稲田・大田尾監督)

早稲田が5点を先取して、「やはり早稲田有利」のムードが漂うが、そこは“早明戦”。ここから一進一退のシーソーゲームが始まる。

明治大はFWがチームスピリット(「前へ」)を感じさせる圧力で、早稲田のペナルティを誘う。この日早稲田のペナルティ数は11。明治大は前後半3つずつで約2倍に上った。

「フィールド上のペナルティで、ノット・ロール・アウェイやオフサイドがあり、(それらは明治大学の)縦のプレッシャーを受けたところで僕たちがペナルティをしていました。(ディフェンスで)前に出れているとこでペナルティはなかったので、そこは今後練習中からやっていきたいです」(早稲田大・HO佐藤主将)

ラグビー 関東大学対抗戦2024

【ハイライト動画】早稲田大学 vs. 明治大学(12月1日)

ペナルティを犯す早稲田に対し、明治大はラインアウトモールを起点に反撃。

前半19分にPR檜山蒼介がコントロールされたモールのフィニッシャーとなり、5-5で迎えた同28分にはHO西野帆平が勝ち越しのチーム2トライ目。相手反則からモールで獲りきるパターンで5点リード(10-5)を得た。

「今日はしっかり戦って前に出るシチュエーションがたくさんあり、ゴール前、セットプレーでトライを獲りきる部分もいくつか見えました。ここは(大学)選手権に向けて大きな自信になります」(明治大・神鳥裕之監督)

だが、勝敗も左右しうるスクラムの優位は早稲田だった。

前半終了前、ゴール前でインターセプトを狙った明治大CTB平翔太がノックオン。ここで早稲田は圧力を受けたかに見えたが、スクラムを右に回して相手FWの出足を遅らせた。

田中健想(早稲田大学)

スクラムからの球出しで、フォワードが届かないスペースに走り込んだのはルーキーWTB田中健想。スクラムとの合わせ技で2トライ目を奪い、早稲田リードの12-10で後半へ向かった。

後半に入り、明治大もルーキーWTB白井瑛人がジャッカル。両軍のルーキーが大舞台で躍動する。

早稲田大の注目ルーキー・SO服部亮太は、この日も特大ロングキック、落球を誘う特大ハイパントで魅せた。一方でショートになるキックミスもいくつか見られた。

「服部はペナルティのノータッチもあり、(試合後)複雑な表情をしていましたが良い経験をしていると思います。これをどう次のパフォーマンスに繋げていくかは僕もサポートしたい。まだまだ伸びしろがあります」(早稲田・大田尾監督)

J SPORTS 放送情報

秋濱悠太(明治大学)

前半同様に中盤でのペナルティが多い早稲田。ここから明治大は前半9分、自陣22mに侵入。フラットへの縦突進を重ねると、アングルをつけて最後はCTB秋濱悠太が右中間に3本目。明治がフォワード同様に強みとするバックスで、5点リード(17-12)を奪い返した。

しかし早稲田もモールから1トライ(後半17分)を返して同点(17-17)。一進一退の熱戦に会場のボルテージはノーサイドへ向かって高くなっていく。

すると、早稲田に現役日本代表が勝負所で力を発揮。

明治大の防御裏を狙ったショートパントが短くなり、ターンオーバー。ここから敵陣で早稲田が連続攻撃。

HO佐藤主将らが縦に走り、最後はラック脇にFB矢崎由高が突っ込んでダブルタックルを破る。粘り腰でさらに前進し、ジャパンの貫禄をみせる勝ち越しのワンハンド・トライ。キック成功で7点リード(24-17)を奪った。

「由高(FB矢崎)は気負いもなく臨んでいて、非常に良い状態でした。(日本代表として出場した)オールブラックス戦後、コンディション的に難しい状態がありましたが、ここに(調子を)もってきたことでアスリートとして成長したと思います」(早稲田・大田尾監督)

早稲田は会心のスクラムワークだった。

途中出場の安恒直人を2番に据え、佐藤主将をナンバーエイトにおいたスクラムでもペナルティを奪取。控えを含めたフロントローの総合力、一貫性を見せつけた。

この後のペナルティで早稲田はショットを選択。1トライ1ゴールで逆転できない10点リード(27-17)を得た。

だが、早明戦はここで終わらない。

後半36分に明治大は敵陣ゴール前ラインアウトのチャンス。大観衆から「明治」コールが沸き起こる。

リザーブ組の充実度は明治も変わらない。途中出場の背番号16・金勇哲が力強くロングゲイン。そして最後ねじ込んだのは背番号20の藤井達哉。

身体を捻りながらの技巧的なトライで、ふたたびビハインドを3点(24-27)に縮めた。負傷でピッチ外から見守っていたNO8木戸大士郎も歓喜の表情をみせた。

「キャプテンとして最後まで(ピッチに)立っておきたかったのですが、(出場メンバーが)アグレッシブに明治のラグビーを体現してくれました」(明治大・NO8木戸主将)

3点差となり、会場に「ロスタイムは4分」のアナウンスが響いて拍手が起こる。

自陣でボール確保の明治大。自陣から無理にアタックするのではなく、残り時間を考慮して冷静にキックでエリアを獲りにいく。

最終盤、早稲田のピンチはスクラムから。

早く仕掛けてアーリーエンゲージの反則となり、好タッチキックで明治大が敵陣22mに侵入。時間は83分経過。ラストチャンスに国立競技場が騒然とした雰囲気に包まれる。

明治大がFW・BK一体の7フェーズ攻撃。途中出場の切り札、伊藤龍之介を早稲田CTB福島が押し戻す。

状況は膠着。ここで最後に展開勝負をするのもバックスに華がある今の明治らしさだ。ラックからカットパスで途中出場のWTB海老澤琥珀にボールを託す。

ここで早稲田のルーキー2人が最後の砦となった。SO服部亮太がタックルで勢いを削ぐと、WTB田中健想が身体を抱えてタッチに押し出した。

「最後3点差で、1トライで逆転される場面でしたが、あんまり慌てることもなく「ディフェンスいこうぜ」と。今年力を入れているディフェンスで最後勝てたと思っています」(早稲田・佐藤主将)

27-24でノーサイド。最後は今季リーグ最少失点の早稲田が、堅守で3点差(27-24)を守り切った。

負けた明治大にも悲壮感はなかった。お互いに実力を出し切った、100度目に相応しい大熱戦だった。

「今日は本当に、明治大学さん、われわれ、双方のプレイヤーがいま持てる力を出したと思います。われわれはスコアで勝ちましたが、100度目にふさわしい内容だったのではと思います。学生たちには『本当におめでとう』という気持ちでいっぱいです」(早稲田・大田尾監督)

笑顔が多いHO佐藤主将だが、試合後には涙もあった。大学選手権へ対抗戦1位通過となった主将は、対抗戦優勝へと至った経緯を“勝ち癖”という言葉を用いて語った。

「勝ち癖のあるチームが強いチームだと思っていて、それをシーズンの始めから言っていました。去年まで力がなかったわけではなく、勝ち癖がありませんでした」

「そこで春から勝ち癖をつけようと、すべてのカテゴリー(A~Dチーム)が勝負に貪欲になって勝ちかけを狙っていました。Aチームが何をしたということではなく、すべてのカテゴリーで1試合1試合、勝ちに貪欲になったからこそ、全体として勝ち癖のある良いチームになったのかなと思います」(早稲田・HO佐藤主将)

早稲田大は2018年度(6勝1敗で帝京大学と両校優勝)以来、6年ぶり24度目の対抗戦優勝、2007年以来の全勝優勝。早明戦の対戦成績は早稲田大学の56勝2分42敗となった。

一方、敗戦した明治大は帝京大に次ぐ3位として対抗戦を終えた。

明治大・神鳥監督は「明治はフォワードが強みでそこが突破口で切り崩していくことは変わりません。そこは今日、早稲田さんに見せられました。このタイミングでこのパフォーマンスできたことは次の自信につながります」と、一貫してポジティブな評価を与え、選手権を見据えていた。

この日の4万544人は、2021年に新国立競技場に舞台を移した後では最多の入場者数。100度目の早明戦は後世に語り継がれるであろう、珠玉の一戦となった。

文:多羅 正崇

多羅正崇

多羅 正崇

スポーツジャーナリスト。法政二高-法政大学でラグビー部に所属し、大学1年時にスタンドオフとしてU19日本代表候補に選出。法政大学大学院日本文学専攻卒。「Number」「ジェイ・スポーツ」「ラグビーマガジン」等に記事を寄稿.。スポーツにおけるハラスメントゼロを目的とした一般社団法人「スポーツハラスメントZERO協会」で理事を務める。

  • Line

あわせて読みたい

J SPORTS IDを登録すれば、
すべての記事が読み放題

J SPORTS IDの登録(無料)はこちら

ジャンル一覧

J SPORTSで
ラグビーを応援しよう!

ラグビーの放送・配信ページへ