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ゲインを繰り返した早大主将のHO佐藤
11月23日(土)、ラグビー関東大学対抗戦、伝統の一戦である早稲田大学vs.慶應義塾大学の「早慶戦」が行われた。昨年は100回を記念して東京・国立競技場での開催となったが、101回目の今年は、例年通り東京・秩父宮ラグビー場で行われた。
両者の対戦成績は73勝20敗7分と早稲田大学がリードしていた。昨年は43-19と24点差がついたが、近年は11点差以内と接戦になるゲームが多かった。なお、現在は早稲田大学が引き分け(2014年:25-25)を挟んで12連勝中となっている。
今年こそ、2010年(○10-8)以来の勝利を挙げたい慶應義塾大学。創部125周年を迎えた今季、開幕3連敗スタートだったが、2勝3敗と暫定6位と順位を上げてきた。ただ、キャプテンHO(フッカー)中山大暉>(4年)が、脳しんとうのプロトコル中で試合に出ることは叶わず、副将のSH(スクラムハーフ)小城大和(4年)がゲームキャプテンを務めた。
脳しんとうの影響で、最後の「慶早戦」に出場できなかった中山主将
また、左PR(プロップ)井吹勇吾(桐蔭学園)、FL(フランカー)はキーヴァーブラッドリー京(常翔学園)FL中野誠章(桐蔭学園)と、SO(スタンドオフ)和田健太郎(清真学園)、元日本代表の宏時氏を父に持つ1年のWTB(ウィング)小野澤謙真(1年)と、5人のルーキーが先発し、フレッシュな力の躍動に期待がかかった。
ラグビー 関東大学対抗戦2024
一方の早稲田大学は11月に入り、昨年の王者・帝京大学、筑波大学に快勝し開幕から5連勝と無敗で、優勝争いを演じている。前節、負傷したLO(ロック)栗田文介(3年)がメンバー外となり、米倉翔(2年)が先発に上がった以外の14人は、前節と同じ顔ぶれとなった。
キャプテンHO佐藤健次(4年)を筆頭に、FB(フルバック)に日本代表の矢崎由高(2年)が入り、こちらもFL城央祐(桐蔭学園)、ロングキックが武器のSO服部亮太(佐賀工業)、トライゲッターの田中健想(桐蔭学園)と、1年生3人が先発した。
快晴だが、やや風が強い中、1万4677人のファンが集い、試合がキックオフされた。序盤は接点と前に出るディフェンスを武器に臨んだ慶應義塾大学が、タックル、ジャッカルで奮闘する。
トライを挙げる早大NO8鈴木
しかし前半12分、風上の早稲田大学がキックカウンターからボールを継続し、HO佐藤が抜け出すと、LO(ロック)米倉、NO8(ナンバーエイト)鈴木風詩(4年)とつないで鈴木が中央左にトライ。CTB(センター)野中健吾(3年)がゴールを決めて、7点を先制した。
続く15分、早稲田大学は、またもキックカウンターから攻め込んで、FB矢崎が切れ込むと、最後はCTB野中、SO服部とつないでトライを挙げ、14-0とした。
試合をリードした早稲田大の1年生SO服部
その後、慶應義塾大学のWTB小野澤にPG(ペナルティゴール)を決められたが、早稲田大学は攻撃の手を緩めなかった。26分にCTB野中がPGを沈めると、SO服部の「50-22」キックから好機を掴み、28分、ドライビングモールを20mほど押し切ってHO佐藤が飛び込んで24-3とした。
さらに33分、FB矢崎がステップで内側に切れ込んでトライ。37分にはラインアウトを起点に攻め込み、最後はFL田中勇成(3年)がトライを挙げて、38-3と大きくリードして前半を折り返した。
トライを挙げる早大2年のFB矢崎
後半、風上となった慶應義塾大学は、先に得点を挙げたかったが、キックの蹴り合いや、接点勝負で上回ることができず、相手陣でアタックすることができなかった。
すると早稲田大学は後半13分、モールを起点に右へ展開し、最後はSO服部が大外のWTB田中にパスを通して、WTB田中がトライ。
25分にはHO佐藤が自陣から大きくゲインした後、SO服部が左大外にいたWTB池本晴人(2年)へキックパスを通して、WTB池本が左隅にトライを挙げて50-3。37分にはCTB福島秀法(3年)が右中間に押さえ、57-3としてノーサイドを迎えた。
ラグビー 関東大学対抗戦2024
【ハイライト動画】慶應義塾大学 vs. 早稲田大学|101回目の対戦は早稲田の圧勝
早稲田大学が101回目の早慶戦も勝利し、引き分けを挟んで13連勝、通算成績を71勝20敗7分とした。POM(プレイヤー・オブ・ザ・マッチ)には早稲田大学のCTB野中、MIP(モースト・インプレッシブ・プレイヤー)には慶應義塾大学のWTB小野澤が選出された。
POMに輝いた早大3年のCTB野中
POMを受賞のCTB野中は「僕とは思っていなかったのでビックリした。チーム全体で良い形もあったが、課題も出た。明治大学戦まで1週間しかないがアタック、ディフェンスと細部にこだわっていきたい」と先を見据えた。
今年もターゲットにしていた試合に破れた慶應義塾大学の青貫浩之監督は、「精神的支柱の中山主将が不在ということで、初めから厳しい戦いになるが、慶應らしさを80分間出して、見ている人に感動を与える、そういう試合しようという試合に臨んだ」。
「しかし、全体的にプレーの精度、接点での圧力を受けて、ずっと劣勢である状況を打開できずに終わってしまった。対抗戦は終わりではないので、次の日本体育大学戦に勝利して、大学選手権出場を確定させたい」と前を向いた。
風上の後半もチャンスを作れなかった慶應
ゲームキャプテンのSH小城は「早稲田大学のSO服部選手に気持ちよく(キックを)蹴らせてしまい、エリアマネジメントでずっと自陣に押し込められてしまい、自分たちのプランが遂行できず、早稲田さんの精度の高いアタックや、接点でも圧力を受けてしまった」と悔しそうに試合を振り返った。
トライを挙げる早大FL田中
一方、開幕から無傷の6連勝で首位に立った早稲田大学の大田尾竜彦監督は、「しっかりと点を取れるところで取って、相手をノートライに抑えたことがすごく良かった」。
「スタートの15人が、しっかりとしたプレーをしてくれた。だが、後から入ってきたメンバーのレベルアップを、もう少ししないといけない。反省をしっかり振り返って、来週の早明戦でしっかり戦いたい」と話した。
HO佐藤キャプテンは「早慶戦という特別な試合で、勝利することができてうれしい。自分たちのやることをやって、良い試合運びができたと思うので、明治戦に向けて、もう1回、レベルアップしていきたい。勝って反省して、次に向けて引き締めて全勝して、大学選手権にいければと思う」と語気を強めた。
全勝の早稲田大学は12月1日(日)、東京・国立競技場で、100回目を迎える明治大学との「早明戦」を迎える。総勝ち点36の早稲田大学は勝点2以上、つまり勝利や引き分けはもちろんのこと、7点差以内の敗戦以上でも、2018年以来となる24度目の優勝が決まる。もし、全勝で優勝すると2007年以来となる。
得意のランを見せることができなかった慶應1年のWTB小野澤
一方の慶應義塾大学は、総勝ち点を15として5位に順位を上げ、12月1日(日)、埼玉・熊谷ラグビー場で日本体育大学と対戦する。3トライ差以上の勝利であれば他のチームに関係なく5位以内となり、大学選手権出場が決まる。
文/写真:斉藤健仁
斉藤 健仁
スポーツライター。1975年生まれ、千葉県柏市育ち。ラグビーと欧州サッカーを中心に取材・執筆。エディー・ジャパン全試合を現地で取材!ラグビー専門WEBマガジン「Rugby Japan 365」「高校生スポーツ」の記者も務める。学生時代に水泳、サッカー、テニス、ラグビー、スカッシュを経験。「エディー・ジョーンズ 4年間の軌跡」(ベースボール・マガジン社)、「ラグビー日本代表1301日間の回顧録」(カンゼン)など著書多数。≫Twitterアカウント
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