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笠巻晴太主将(東洋大学)
流通経済大学龍ヶ崎フィールドに、東洋大控え選手たちの声が試合を通して響いていた。
「かさまき、こいずみ、いっしかわ」
この日、濃紺のジャージーのフロントロー、笠巻晴太、小泉柊人、石川槙人の3人は、キックオフからフルタイムまでピッチに立ち続けた。
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パワーとスピード、個人技の高い選手たちがたくさんいる両チーム。強みを出し合って攻めあった中で、明確に上回っていたのは東洋大のセットプレーだった。
特にスクラムで奮闘した3人は東洋大に安心感をもたらし、勝利の立役者となった。
10月6日(日)におこなわれた関東大学リーグ戦1部の東洋大学×流通経済大学は、27-24で前者が勝利した。
前半は19-12と流経大がリードするも、東洋大は後半に高い集中力を見せて逆転勝ち。2022年度シーズン、29年ぶりに1部復帰して3シーズン目。対流経大に初めて勝った。
開幕からの2試合でともに1勝1敗。キックオフ直後は互いに攻め切れぬ展開が続いた。
しかし、両チームとも様子見のない攻防がすぐに始まり、見る者を惹きつけた。
4年生が先発に5人、23人中6人と若いメンバーの流経大は、序盤からスクラムに不安定な要素が見られたものの、一人ひとりが高い個人技を積極的に出して戦った。
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先制点は流経大が奪った。
13分過ぎ、スクラムから攻める。ショートサイドでSH幸妻怜治からのパスを受けた4年生スピードスター、FB中村楓馬は防御裏へ短いキックを蹴り込み、自ら高速チェイス。ディフェンダーを追い越してインゴールでグラウンディングをしてトライを挙げた。
その6分後、東洋大にPK後のラインアウト、モールからWTBのボンド洋平にインゴールに飛び込まれ、ゴールキックも決められて5-7と逆転される。
28分にモールからのトライ、ゴールで12-7とするも、直後に5点を返されて12-12となった。
佐々木開(流通経済大学)
それでも流経大は先手を取り続ける。ハーフタイム直前、敵陣深いラインアウトから攻め、7フェーズを重ねた。最後はWTB仲野優輝が左隅に飛び込む。難しい位置からSO佐々木開がゴールキックも決め、19-12として前半を終えた。
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【ハイライト動画】東洋大学 vs. 流通経済大学
坂本琥珀(東洋大学)
東洋大が地力を発揮したのは後半に入ってからだった。安定感のあったセットプレーが支えたプレーが多かった。
3分、PKで前に出た後、右展開。サインプレーで右に大きくボールを動かし、スピードのあるFB坂本琥珀がインゴールに入った。ラインアウトのクリーンキャッチが、その後の流れるようなプレーの発信源となった。
19分にPGで加点(20-19と逆転)した後、27 分にはCTB浅尾至音が勝ち越しのトライを挙げた。
相手キックをレシーブしたところから攻めた。自陣で右に展開。タッチライン際で攻め上がってパスを繋ぎ、最後は13番がトライラインを越えた。ゴールも決まり、27-19とリードした。
インジャリータイムに入って流経大が NO8ティシレリ・ロケティらの好走からトライを返すも、東洋大の勝利は動かなかった。
福永昇三監督は、「大一番で4年生が頑張ってくれた」と評価し、3人のフロントローについては、「優位に立っていたので任せました」と笑顔を見せた。
この試合には「リンク」をテーマに臨んだ。
ディフェンスで左右の人と繋がる。ピッチ上の15人だけでなく、スタンドから応援してくれるメンバーとも気持ちをひとつにして戦う。
試合後、全員で作った歓喜の輪にはチーム状態の良さが浮かんでいた。
敗れた流経大のシンクル蓮主将は、「後半に(プレッシャーを受けて)規律が乱れた。自滅というところがあり悔しい」と試合を振り返った。
しかし、若い選手たちの台頭によりポジション争いが激化。それがチーム力を高めていると話し、この先の成長に手応えを感じているようだった。
卒業でほとんどのフロントローが入れ替わったことで、スクラムに苦労している。
そこが改善すれば、個々のアタック力はさらに威力を増しそうだ。
文: 田村 一博
田村一博
前ラグビーマガジン編集長。鹿児島県立鹿児島中央高校→早稲田大学。早大GWラグビークラブでラグビーを始める。ポジションはHO。1989年、ベースボール・マガジン社に入社。ラグビーマガジン編集部に配属される。1993年から4年間の週刊ベースボール編集部勤務を経て、1997年からラグビーマガジン編集長に就く。2024年1月に退任し、現在は編集者、ライターとして活動。
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