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ラグビー コラム 2024年9月30日

【ハイライト動画あり】青山学院大、31年ぶりに筑波大戦勝利。積み上げた力、雨の中で出し切った

ラグビーレポート by 田村一博
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勝利した青山学院大学

勝った側には、殊勲者がたくさんいた。
トライは両チームとも3つずつ。しかし、圧力をかけ続けた青山学院大が接戦を制した。

9月29日(日)に秩父宮ラグビー場でおこなわれた関東大学対抗戦Aの青山学院大×筑波大は、30-22のスコアで前者、黒いジャージーが歴史的な勝利を手にした。

このカードで青山学院大が勝ったのは31年ぶりのことだった。前回の勝利は1993年12月4日。熊谷にて30-21だった。
当時の試合には、現在チームの指揮を執っている糊谷浩一ヘッドコーチがWTBで出場していた(当時2年生)。

青山学院大は前半5分に先制トライを許したものの、その後、今季のチームが始動した時から積み上げてきたものを出し切って終始相手に圧力をかけ続けた。

CTB河村凌馬主将のもと、創部100周年の今季は「全国大学選手権8強」という史上最高位の目標を掲げている。それを実現させるため、前年より練習量2倍強、走る量を3倍にして、シーズンへ向けての準備を重ねてきた。

その中で得たフィジカルの強さ、フィットネスの高さをゲームの中で発揮した。
ディフェンスは前へ出ることを柱に、周囲とコミュニケーションを取りながら状況判断をして動く。この試合では80分間、集中力を切ることなく描いていたプランを遂行した。

前半19分に奪った反撃のトライは、用意してきたものだった。
ピッチやや左のスクラムから右へ攻め、意図的にブレイクダウンを作る。そこから、そのすぐ左のスペースにWTB川端航聖が切れ込み、インゴールまで走った。

河村凌馬主将(青山学院大学)

河村主将は試合後、スカウティング通りにプレーできたと話したが、このシーンは、まさにそれ。前戦までの筑波大のプレーから、ラック周辺にスペースができると分かっていた。

26分には、スクラムで得たFKから速攻。ゴールラインに迫り、FWが殺到し、圧力をかけた。最後にインゴールへ入ったのはPR木村陽太。「ゴール前5メートルを攻め切ることにこだわってきたことが生きた」と胸を張った。

ラグビー 関東大学対抗戦2024

【ハイライト動画】青山学院大学 vs. 筑波大学

前半は17-10。リードした青山学院大は、後半も先手を取り続けた。
PGで細かく加点。ピッチ上での圧力だけでなく、スコアでもプレッシャーをかけ続けたのが結果的に良かった。雨の影響もあったが、筑波大にキックレシーブミスやハンドリングエラーが相次いだのは、常に追う側だったこともあるだろう。

青山学院大が自分たちのペースで試合を進めていたとはいえ、残り約15分まで、23-22とスコアは近かった。
その展開にケリをついたのは後半28分。筑波大ゴール前の左スクラムから攻めた青山学院大は、FWでフェーズを重ね、最後はこの日プレーヤー・オブ・ザ・マッチに選出されたLO荒川真斗がゴールポスト下にボールを置いた。

このトライに至る流れの中で、この日もっとも輝いたプレーがあった。ピッチ中央エリアでCTB榎本拓真が猛タックル。筑波大のボールキャリアーにボールをこぼさせたのだ。
それを仲間が足にかけ。攻め込んだところからトライにつながるスクラム、一連のプレーが生まれた。

そのシーンを榎本自身が、「外が余っていた(攻撃側は外にアタッカーがたくさんいた)のですが、判断し、思い切り出ました」と振り返った。
組織として動く中で、瞬時に判断し、結果を残した好プレーだった。

筑波大の嶋崎達也監督は、失点につながるペナルティも少なくなかった原因について(3PGで9失点)、青山学院大のバックローから受けたプレッシャーを挙げるとともに、自チームの意識のズレを指摘した。

「ブレイクダウンでボールが出ると判断して選手が散ったところで圧力を受け、球出しが遅れたり、攻めようと選手たちが動いた時に蹴ったり、意思疎通ができていないというか、判断にズレが出てサポートが遅れたときに反則を取られました」

ゲームキャプテンを務めたCTB堀日向太は、「(29-23と苦戦した前戦の立教大戦では)スペースがあるのにそこを使い切れなかった。アタックブレイクダウンでクリーンにボールを出せずに継続できないシーンも多かった。そこを修正していこうと準備してきましたが、圧力を受けてうまくいかなかった」と語った。

準備してきた力を3戦目にして出し切り、今季初勝利を手にした青山学院大と、開幕から2勝していたものの、顔を出していた課題を修正できずに敗れた筑波大。
次戦が持つ意味は大きい。

文: 田村 一博

田村一博

前ラグビーマガジン編集長。鹿児島県立鹿児島中央高校→早稲田大学。早大GWラグビークラブでラグビーを始める。ポジションはHO。1989年、ベースボール・マガジン社に入社。ラグビーマガジン編集部に配属される。1993年から4年間の週刊ベースボール編集部勤務を経て、1997年からラグビーマガジン編集長に就く。2024年1月に退任し、現在は編集者、ライターとして活動。

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