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小野晃征HC
9月に入ってリーグワン開幕に向け、新チームが始動した昨季3位の東京サントリーサンゴリアス。8月末には、田中澄憲監督がGM(ゼネラルマネージャー)となり、AC(アシスタントコーチ)だった、37歳の小野晃征氏が、HC(ヘッドコーチ)に昇格した。
9月17日(火)、そのサンゴリアスが報道陣に練習を公開し、田中GMと小野HCが対応した。2シーズン務めた監督からGMに復帰した田中GMは、日本代表SO(スタンドオフ)として、ワールドカップに2度出場した経験を持つ小野ACをHCに昇格させた理由を問われて、「2つ理由がある」と始めて、こう続けた。
監督から再びGMに戻った田中氏
「1つはサントリーという独特なカルチャー、スタイルがあると思っているので、しっかりそれを進化させられるコーチということで選んだ。英語も話せるし、それを踏襲するだけでなく、進化させることができると思った」。
「もう1つは、外国人HCが増えているが、うちのポリシーはそうではなく、日本人のコーチで世界に通用するとか、日本代表の監督になってもらえる人材を育てていきたい」と話した。
また、小野HCについては「選手に近く、コミュニケーションしながらチームを作ってくれる人間だし、10番としてチャンピオンシップを取ったという経験値もあり、勝つことを知っているコーチだと思う」と期待を寄せた。
田中GM(左)と小野HC
昨シーズンの終わりに打診があり、HCになることを決めたという小野HC。「与えられたことを100%やることが大事だと思っている。今年はロール(役割)が変わったが、それをやりきることが大事」と話した。
新HC自ら、今シーズンのスローガンとして「WIN THE ONE」を掲げた。「目の前の1つに勝つという意味。サンゴリアスは、自分が選手の時でも求められている結果は、優勝の1つしかないと思うので、そこに向けて目の前のことに1つ1つ勝っていくという意味を込めた」。
また、「クラブのDNAというか、カルチャーとしては、ファイティングスピリッツとアグレッシブアタッキングラグビーがある。誰が見てもアグレッシブにプレーするということがわかるチームを作っていきたい」と意気込んだ。
練習で汗を流すSH流とFB松島
これからアグレッシブアタッキングラグビーをどう進化させていくのかについて、小野HCは「シンプルに2つに分けている。1つはアブシップアタッキングマインド。ボールインプレーのとき、仲間のためにタックルして、立ち上がってブレイクダウンに参加する、次のプレーをするというそのマインドでいる。マインドだけオンでいたら、きっと身体もついていく」。
「もう1つはアグレッシブアタッキングボディーで、合わせてアグレッシブアタッキングラグビー。ボディーはS&Cも絡んでくるが、自分たちが描いているラグビーを描くことで、プレー、スタイルにあった身体を作っていく」と説明した
特別に目標とする指導者や監督はいないという小野HCのコーチングスタイルや強みを聞くと、「選手のときと大きく変わらない。日本人選手やスタッフだけでなく、外国人の選手やスタッフも増えて来ている。バイリンガルなので、一番苦しい時、大変な時にセイムページ、いっしょの方向に向けて、チームを戦えるようにしたい」。
「(日本人でも外国人でも)ダイレクトに喋れるところが自分の強みだと思うし、しっかりそれを活かしていきたい。日本人、外国人選手の両方にキーポイントを落とし込めるようにしている」と話した。
スクラム練習をするFW陣
新HCとして注目してほしい選手を聞くと、「今の段階ではこの選手というより、55人の選手のポテンシャルを引き上げていくことが、すごく大事なので、みんながレベルアップしている姿を見せたい」。
「そして、サンゴリアスで育って日本代表に行くことが、チームにとってもプラスになると思うし、日本代表にもプラスになる。どんどん、サンゴリアスで選手をレベルアップさせて、日本代表に送り出していきたい」と先を見据えた。
小野HCがサンゴリアスで現役をしているときに一緒にプレーしたことのある選手はまだ15人ほどいるという。指揮官は「やりやすさもありますが、自分はロールが全く違う立場になった。お互い信頼している関係性からスタートしているので、そこを崩さずに、コーチの時はしっかりコーチ、元チームメイトのときは元チームメイトというメリハリは大事」。
「それを大事にしないと厳しいことは言えない。(元チームメイトには)コウセイと呼ばれているので、仕事じゃないときは自分でいないとストレスがたまります。クラブハウスを出たら自分らしく生きてきたいですね」と笑った。
将来的には、日本代表などナショナルチームの指揮官になりたいか、と水を向けると小野HCは「リーグワンのチームを見ても日本人のHCは少ないと思うし、日本代表の指揮官も、日本人は向井(昭吾/花園ライナーズ監督)さん以降いない」。
今季から加入したSH福田
「日本人のプロ選手も増えているし、ラグビーも大きくなっていく中で、日本人コーチ、指導者も大事になっていく。ただ、昨シーズンは昨シーズン、今シーズンは今シーズンの役割がある。その先は結果の世界なので、今シーズンが一番大事」と話すにとどめた。
トップリーグ時代は優勝5回を誇ったサンゴリアスは、リーグワンになってから、3シーズン連続プレーオフには進出しているものの、まだタイトルは獲得できていない。
小野HCは「もちろん、チームとしての目標は優勝すること。プレッシャーがなかったら、やっぱりリーグワンで戦えない。プレッシャーがある中で、しっかりアグレッシブアタッキングラグビーを見せたい。自分たちのスタイルを最後まで80分戦って出し切りたい」と語気を強めた。
リーグワン最年少である小野HC、スタッフ、そして選手も含めて、日々の練習から目の前のことを1つずつ大事にして、「WIN THE ONE」を実践することで成長し、リーグワン初制覇に向けてアグレッシブに邁進していく。
文/写真:斉藤健仁
斉藤 健仁
スポーツライター。1975年生まれ、千葉県柏市育ち。ラグビーと欧州サッカーを中心に取材・執筆。エディー・ジャパン全試合を現地で取材!ラグビー専門WEBマガジン「Rugby Japan 365」「高校生スポーツ」の記者も務める。学生時代に水泳、サッカー、テニス、ラグビー、スカッシュを経験。「エディー・ジョーンズ 4年間の軌跡」(ベースボール・マガジン社)、「ラグビー日本代表1301日間の回顧録」(カンゼン)など著書多数。≫Twitterアカウント
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