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「プロップは日本人のポジションという気持ち」。パシフィックネーションズカップに挑むラグビー日本代表の竹内柊平と茂原隆由に話を聞く
ラグビーレポート by 斉藤 健仁若きエディジャパンのスクラムを支える茂原(左)と竹内
ラグビー日本代表は8月25日日曜(日本時間26日)に、アウェイで「アサヒスーパードライパシフィックネーションズカップ2024」(PNC)の初戦となるカナダ代表戦を迎える。
エディー・ジョーンズHC(ヘッドコーチ)が掲げる「超速ラグビー」では、スクラム、ラインアウトといったセットプレイからのアタックが重要であることは明白。
そこで、今回はスクラムを支える左PR(プロップ)竹内柊平(浦安D-Rocks、26歳)と、右PR茂原隆由(静岡ブルーレヴズ、24歳)、イングランド代表で先発した2人の新生フロントローに話を聞き、互いの印象やスクラムの楽しさなどについて聞いた。
―― お互いの印象を聞かせてください。
竹内:茂原は性格通りのプレーをする(笑)。堅実なスクラムを組むし、1つのことに対して、しっかりと勤勉にやる選手。それは僕にない部分(苦笑)。意欲もすごいし、1人でずっとパソコンでスクラムの映像を見ている時もあって、「すげえな!」と思っています。
茂原:それはTK(竹内)さんも一緒ですよ(笑)。TKさんはスクラムの練習で、対面で組むと、ずっとプレッシャーをかけてきて、最初から前に出てくるので組みづらい。ずっと低い体勢を続けるので、僕が逆に無理に押そうとするとやられるので、すごく良い3番だと思います。
―― 茂原選手は昨季から1番から3番に転向したので、竹内選手の強さがよりわかる感じですか?
茂原:そうですね。
竹内:僕はもともと3番の経験値が少なかった。実を言うと、僕は茂原を大学の時から見ていた。僕はラグビーの強豪大学出身ではない(九州共立大学)ので、自分のプレーを比べたくて、他の強い大学のラグビーを見るのが好きでした。それで、茂原がいた中央大学の試合とか見ていた。
それこそ2年前、僕はNDS(ナショナル・デベロップメント・スコッド)に入って、HO(フッカー)日野剛志(静岡ブルーレヴズ)さんと一緒だったときに、ずっと「茂原君、いいでしょう?」と聞いていました。茂原が3番だったので、勝手にライバルになると思っていたが、今ではめっちゃ仲間で本当に心強いです。
大西将太郎のラグビー語ルシス
【動画】パシフィックネーションズカップの見どころ
―― 竹内選手は2022年に初キャップでしたが、昨年のワールドカップに出られず悔しい思いをしました。茂原選手は昨年3番から1番に転向して、今年、すぐに日本代表に選ばれました。
竹内:ワールドカップに出られず、めちゃくちゃ挫折しました。正直、何もなければ連れて行ってくれるだろうと、自分の中で少し甘さもあったと思います。でも、結局、ワールドカップ前のシーズンは、チームも自分のパフォーマンスも最悪でしたし、入替戦でもスクラムをめちゃくちゃ押された。
だから、ジャパンを外されても当然でしたが、しっかりと自分を見つめ直したあの1年があるからこそ、今があります。エディー(・ジョーンズHC)とか、ハッツ(ニール・ハットリーコーチ)や、オーウェン(・フランクスコーチ)とコミュニケーションを取って、ハードワークしていて、めちゃくちゃきついですけど、毎日楽しいですね。
茂原:まさかイングランド代表戦で先発とは思わなかった。正直、今、日本代表にいることはビックリしていますが、イングランド代表戦も含めて、通用したところがすごく自信になった。毎日、1つ1つ、試行錯誤しながら、課題をクリアして成長している実感はすごくあります。今は個人的には良い機会を与えてもらえてうれしいし、成長するチャンスだと思っています。
竹内:自分も日本代表合宿に参加している3番で、自分が最年長と思っていなかったので、びっくりした。正直、リザーブから這い上がって、最終的にワールドカップでスタメン取れたらいいなと思っていたら、他の3番が為房慶次朗(クボタスピアーズ船橋・東京ベイ)と、森山飛翔(帝京大学2年)で、20歳と22歳!みたいな(笑)。ジェイミー・ジャパン時代はベテラン選手も多くて、圧倒的に年下でしたから。
宮崎合宿でスクラムを組むFW陣
―― 竹内選手にとっては、地元・宮崎での日本代表合宿が続いているのはうれしいですよね。
竹内:本当に特別ですよ。実家が近所で懐かしいですね。エディーさんには高校の時にここで教えてもらったことがありますし。
イングランド戦 で初キャップを獲得した茂原
―― 茂原選手は、中央大学時代は日本代表を意識していなかったのでしょうか?
茂原:中央大学に入った時はPRだけでなくLO(ロック)もやっていて、大学1年時、ファーストキャップはLOでした。そこからPRに転向して、3番をずっと4年間やっていました。でも、4年時にキャプテンとして1部から2部に降格し、本当に絶望しました。僕の暗黒時代ですね。
―― PRは一緒に練習する機会も多いから、自然と仲良くなるものですか?
茂原:自然と固まりますね。どこのチームも一緒じゃないですか?
竹内:持論ですが、フロントローは練習がきつければきついほど、固まるフロントローの人数が増えていく(笑)。試合前とか一緒の部屋になることが多いですし、「緊張するな」とか、「ワクワクする」とか、ずっと話していますね。一緒にコーヒーとか行ったりもしますね。
茂原:HO原田衛(東芝ブレイブルーパス東京)と僕は同じ歳ですし、試合前はフロントローの選手とカフェ行ってリラックスしますね。
―― スクラムの楽しさは?
茂原:やっぱり相手を押した時じゃないですか。ペナルティを取った時が一番気持ちいいというか、やりがいがある。そのために練習しているので、そこが一番の達成感ですね。
竹内:トライを挙げることも、もちろんうれしいですけど、スクラムはよく(斉藤)展士さん(浦安D-Rocks前スクラムコーチ/現・三重ホンダヒート コーチ)が僕に言っていたのは、スクラムはアンサンブル、掛け算だと。
8×1より8×2の方が絶対に強い。だから個々も強くならなきゃいけないけど、1人が変な音色を奏でたらうまくいかない。スクラムはまさにそれだと思っています。だからこそスクラムで勝って、スクラムで取るペナルティは特別です。
―― ラグビーをしている子どもたちにもっとPRをやってほしい?
竹内:PRをやってほしいの前に、努力が一番出るのが僕はPRじゃないかなと思っていますし、ラグビーで一体感を生むならPRですね。でも、別にどこのポジションでもいいですけど、純粋にラグビーで何か1つ努力を続けてがんばってほしいなと思いますね。
茂原:僕も子どもたちにPRをやってほしいという気持ちはそこまでないですが、でもやっぱり、PRは日本人のポジションという気持ちはありますし、一番きついポジションとも思っています。自分で言うのもあれですけど、本当にやること多いです。
竹内:多すぎます。スクラムだけでなく、ラインアウトでリフトもあったり、モールもあったりして、そのためにウェイトトレーニングもしないといけない。でも一番きついけどやりがいはあります。
茂原:本当に、そうですね。
―― リーグワンで活躍し、日本代表に駆け上がって来られた要因は?
イングランド戦 で先発した竹内(中央)
竹内:毎日試合したいくらい、ラグビーがめちゃめちゃ好きですね。それだと思います。だからこそ、大学の時から茂原のこと知っていた(笑)。僕は負けず嫌いですけど、バックローからPRに転向したのが大学4年の初めで、転向したのは日本代表になりたいと思ったから。だから、僕の場合はめちゃくちゃラグビーが好きってとこですかね。
茂原:僕は本当に1つ1つ、課題を潰していったということでしょうか。3番から1番になったのが、1年前のプレシーズンからです。個人的なイメージだと、まあまあ組めるだろうと思ったけど、最初はまったく組めなかった。ですが、ブルーレヴズには(長谷川)慎さん、スクラムエキスパートの日野さん、田村(義和コーチ)さんもいて、本当にその人たちに育ててもらった。
竹内:おもろいよな。(1番だった長谷川)慎さんが師匠の茂原が1番で、(3番だった斉藤)展士さんが師匠の俺が3番だからなぁ。
茂原:確かに弟子同士ですね(笑)。
―― 2人は高校時代、全国大会に出場していませんし、ユース代表歴もないですが、現在は日本代表として活躍していますね。
茂原:ラグビーは、いつ始めてもいいのかなと思います。(元日本代表LO)大野均さんとかは大学から始めていますし、自分の強みを探してできるスポーツだと思うので、子どもたちもそうですが、まずはラグビーを楽しんで、上のチームを目指すのであれば、本当にチャレンジしてもらいたいですね。
竹内:僕はずっと日本代表の舞台でやりたかったけど、誰も見に来てくれないようなカテゴリーでがんばり続けて、それが報われたというか…。努力は無駄じゃなかった。
もし今、無名大学に所属していて全然勝てなくても、自分がリーダーシップとって周りを盛り上げていければ自分の努力は絶対、他の形で報われると思います。だから信じてがんばっていれば、いつかは花が咲くということをキャリアを通じて感じていますね。
斉藤 健仁
スポーツライター。1975年生まれ、千葉県柏市育ち。ラグビーと欧州サッカーを中心に取材・執筆。エディー・ジャパン全試合を現地で取材!ラグビー専門WEBマガジン「Rugby Japan 365」「高校生スポーツ」の記者も務める。学生時代に水泳、サッカー、テニス、ラグビー、スカッシュを経験。「エディー・ジョーンズ 4年間の軌跡」(ベースボール・マガジン社)、「ラグビー日本代表1301日間の回顧録」(カンゼン)など著書多数。≫Twitterアカウント
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