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松田力也(左)とディラン・ライリー
ラグビー日本代表は、8月25日(日本時間26日)から「パシフィック・ネーションズカップ2025」(PNC)に臨む。「私が知る限り、史上一番若い」とエディー・ジョーンズHC(ヘッドコーチ)が言うスコッドの日本代表は、10日から真夏の宮崎で合宿を敢行している。
そんな中、2023年ワールドカップの中心選手で、BK(バックス)の中軸である39キャップのSO(スタンドオフ)松田力也(トヨタヴェルブリッツ)、20キャップCTB(センター)ディラン・ライリー(埼玉ワイルドナイツ)の2人が報道陣に対応した。
イタリア代表戦から宮崎合宿まで約3週間。選手たちは短いオフを過ごした。ライリーはオーストラリアに戻り、埼玉パナソニックワイルドナイツのチームメイト、ジャック・コーネルセンの結婚式に参加したり、家族と会って「リラックスできた」と話した。松田もオフは休んだが、選手全員にGPSとプログラムが渡されており、「PNCもあるので、それなりの準備はしていた」と話した。
1勝4敗(テストマッチは0勝3敗)だった、6月~7月の前回のキャンペーン、2人は完全燃焼したとは言いがたかった。松田はイングランド代表は、控えスタートで後半から出場し、先発したのはイタリア代表戦のみだった。ライリーもイングランド代表戦はコンディション不良で出場できず、ジョージア代表、イタリア代表戦の2試合に先発したのみだった。
前回のキャンペーンを振り返ってライリーは、「確かに結果は期待していたものではなく、もっとよくできたと思う内容だった。新しいチームなので、次のワールドカップまで時間があるので、少しずつ伸ばして行きたい。『超速ラグビー』はこの3~4年のDNAになるので、1つのアクションで終わるのではなく、次のアクション、次のアクションとやることを求められている」と話した。
前回のキャンペーン、特に最終戦のイタリア代表戦ではターンオーバー、そしてハンドリングエラーが多くなり、それが敗戦の大きな要因となった。そのため日本代表を率いるジョーンズHCは、課題をクリアするために、最初の3日間はFW(フォワード)、BKのユニットに分かれて練習を敢行した。
松田力也(左)と新キャプテンとなった立川理道
「ターンオーバーをどうやって減らすか、そして全員で同じこと考えて同じ画を見ないといけない。BKが、FWががんばって出してくれたボールを簡単に落とすというのは、チームとしてもクオリティ、意識としても下がってしまうから変えていきたい」。
「でも、消極的になりたくないと個人的には思っているので、そのために迷わずプレーするために、しっかりコミュニケーションして、明確にしてプレーすることは前のキャンペーンよりやろうとしている」と松田は話した。
個人としてはSO李承信(神戸スティーラーズ)と10番争いをしているSO松田は、「『超速ラグビー』を体現するために、まだまだやることはあるし、これまでのゲームコントロールを重視することより、ボールをアグレッシブにもらいたいし、その中で動かすプレーができるようにすることで新しいチャレンジがある」。
「難しさはあるが、ラグビーの奥深さ、楽しさを感じながらできている。そういう意味では簡単なチャレンではないが、自分自身もレベルアップしないといけない」と自分に言い聞かせるようにいった。
トライを挙げるCTBライリー
イタリア代表戦で素晴らしいスピードを見せて、2トライを挙げて気を吐いたライリーは「(テストマッチは)クラブラグビーとは違う環境で、ハイプレッシャーで逃げ道がなく、いいパフォーマンスを発揮しないといけない。その中で、オンもオフザフィールドでも、一貫性を持つことがすごく大事になってくる」と語気を強めた。
6月から7月にかけて大学生の若い選手が参加していたが、今回のPNCに向けた宮崎合宿でも大学生2年生が3人(うち練習生が1人)招集されており、20キャップ以上の選手は、松田とライリーの2人を含めて、44キャップのHO(フッカー)坂手淳史(埼玉ワイルドナイツ)、56キャップのCTB立川理道(クボタスピアーズ船橋・東京ベイ)の4人だけだ。
ライリーはジェイミー・ジャパンと比べて、「エディー・ジャパンは一言で言うとまったく違う。ゲームスタイルも違う。エディーは若い選手を呼んで、エナジーのあるチームだとすごく感じている。まだ自分はシニア層ではないが、リーダー的な役割も増えてきているので、若い選手の成長をヘルプしていきたい」と話した。
松田は「日本代表に100%コミットする中、若い選手に上手く目配り気配りしながら、いいヘルプをしてあげたい。よかったら何も言わないし、悪いとき、悩んでいるとき一言、二言かけられるような存在になりたい。普段のコミュニケーションからいい関係性を作っておかないと、若い選手も入って来ることも頼ることもできないと思う」。
「そこに関しては苦手なタイプではないので、みんなと喋りながら僕とフミさん(元日本代表SH/スクラムハーフ田中史朗)の年齢差が10歳で、(大学2年生の選手たちとは)それと同じ差があるから、(自分とフミさんと)同じような関係になればいい。変に上からいくのではなく、一緒に関係性を作っていきたい」と目を細めた。
まず、PNCでは25日にアウェイでカナダ代表戦と戦い、9月6日の2戦目は熊谷でアメリカ代表と戦う。カナダ代表戦と言えば、松田選手は大学4年時に初キャップを得た相手である。「フワフワしていたのであんまり覚えていないが、カナダ代表とは初キャップ以来」。
カナダ代表にしろ、2戦目のアメリカ代表にせよ、どちらもフィジカルでどんどんゲームを作ってくると思うので、そこにどれだけ上手く自分たちのスピードを使いながら勝負できるか。まず、ミスをしないことが大事になってくるので、全員で同じ画を見ることが大事なので仕上げていきたい。あくまでも自分たちにフォーカスして、自分たちのラグビーができるかをやりたい」と語気を強めた。
南アフリカ出身だが、オーストラリアでラグビーを始めたライリーは、2027年ワールドカップに特別な思いを持っている。「オーストラリアは自分がラグビーを始めた地だし、日本はこのレベルまで自分がプレーする機会を与えてくれた場所なので、それを総合したオーストラリアワールドカップは特別な機会になる。3年後、チャンスがあればプレーしたい」。
そんなライリーは、PNCに向けて「まず個人として早くラグビーしたい。前回のキャンペーンは小さなケガもあって、2試合しか出られなかった。一貫性のあるパフォーマンスをずっと継続したいと思うので、今はカナダ代表戦に選ばれたい。チームとしてはPNCに優勝したい。PNC優勝する技術、能力があると思うので、優勝して証明したい」と意気込んだ。
BKのメンバーの中では唯一2度、ワールドカップを経験しているSO松田は「PNCの目標は勝負して、10番を取ることは変わらない。そこは自分のチャレンジとしてやりたいし、新しいラグビーを吸収して、もっと引き出しが持てるようにやっていきたい。毎回チャレンジして、このグラウンドでのパフォーマンスが、セレクションにつながるのでやるしかない」と前を向いた。
晩夏、バンクーバーから始まるPCNではディラン、そして力也というBKの中軸となる経験ある2人が若きブレイブブロッサムズを引っ張っていく。
文/写真:斉藤健仁
斉藤 健仁
スポーツライター。1975年生まれ、千葉県柏市育ち。ラグビーと欧州サッカーを中心に取材・執筆。エディー・ジャパン全試合を現地で取材!ラグビー専門WEBマガジン「Rugby Japan 365」「高校生スポーツ」の記者も務める。学生時代に水泳、サッカー、テニス、ラグビー、スカッシュを経験。「エディー・ジョーンズ 4年間の軌跡」(ベースボール・マガジン社)、「ラグビー日本代表1301日間の回顧録」(カンゼン)など著書多数。≫Twitterアカウント
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