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トゥールーズへ移籍が決まった齋藤直人
7月10日(水)、フランスリーグ1部「TOP14」に所属し、昨季は国内リーグと欧州王者の「2冠」に輝いたトゥールーズ(スタッド・トゥルーザン)が、日本代表SH(スクラムハーフ)齋藤直人(元・東京サントリーサンゴリアス)と契約を結んだことを発表した。契約期間は1年だという。
イングランド、フランスの4~5チームと交渉する中で、6月30日のギリギリのタイミングで正式に契約を締結、SH齋藤は「話をもらってから結構長くて、進展していたが、本当にホッとした。家族をはじめ周りの人の理解、それから代理人の協力があって実現したことだと思っている」と正直に吐露した。
小さい頃から海外でのプレーを漠然と希望していたという齋藤は大学3年時、ジュニア・ジャパンの一員としてスーパーラグビーチームと対戦し、「より具体的に海外挑戦したい」とその思いを強くした。
サンウルブズなどの経験も経て、昨年、ワールドカップに初めて出場した後、海外でのプレーする必要性を改めて強く感じたという。また、エディー・ジョーンズHC(一昨季まではサンゴリアスのアドバイザー)にも時折、相談していたという。
オンラインの会見で話す齋藤直人
「ワールドカップに4試合出られたが、ハイプレッシャーの中で自分の力が出せたかと言われると、全然そうは思えなかった。ああいった舞台で能力を出すには、常にそういう高いレベル、高いプレッシャー、強度の中でプレーし続ける必要があると思った。ワールドカップ後が一番、海外に移籍したいと思った」。
当初より、南半球のスーパーラグビーのチームではなく、イングランド、フランスといった北半球のチームへの移籍を視野に入れていたという。
「ワールドカップを経験して、一番何を伸ばしたいかを考えたときに、出てきたのがキックゲーム。その意味で南半球より、北半球の方がキッキングゲーム主体というか、よりキックが重要なリーグでプレーしたいと最初から考えていた」。
最終的に、23度のフランス王者、6度の欧州王者に輝いている欧州で最も結果を出しているトゥールーズとの契約にいたった。若手SHが移籍したり、7人制でパリ五輪に出場するSHアントワーヌ・デュポンが今季、どの程度試合に出場するか未知数だったことも追い風になったようだ。
欧州でクイックなパス、テンポを磨く
欧州トップクラスのチームを移籍先に選んだ理由を齋藤は、「チャンピオンチームで多くのタレントがいて、本当に学ぶべきことが多い。また、リーグ戦やチャンピオンズカップなど試合数の多さも魅力として感じていた」。
「ポジティブに捉えると、デュポンと一緒にやれるということ、あとトゥールーズでプレーできる機会は本当に限られている。それこそ9番でいうと、3人しかいない。その限られたチャンスがあったのと、迷わず自分の気持ちがトゥールーズでプレーしたいと思ったのでそうした」と説明した。
フランス語はまだだが、少しずつ勉強していた英語でチームのコーチ陣とコミュニケーションを取っているという齋藤。改めて強みを聞かれて「一番はクイックなパス、テンポ」。
「トゥールーズのラグビーもアタッキングで、本当にアタックがすごい。テンポも速いし、ボールも動くし、オフロードにも対応するというラグビーなので、そういったところがすごく合うのと思っている。あと、プレースキックが自分の強みというのも伝えた」と話した。
フランスで何を学びたいのか?という質問に対しては、「学べる限り、多くのことを学びたいが、僕の印象だとフランスの選手、特にデュポンはチームのルールやシェイプの中でも、すごくひらめきを大事にしてプレーしている印象を持っている。そういった部分は今後、日本代表やキャリアを進めていく中で伸ばしていきたい部分なので、すごく学びたい」と先を見据えた。
今回の契約は1年となったが、齋藤は「個人的には、できる限り海外の環境でプレーしたいと思っているが、周りの人と話しながら、あとはエディー(・ジョーンズHC)さんともしっかり話をしながら決めたい」と話すにとどめた。
笑顔を見せる齋藤直人
トゥールーズは今季もフランス国内、欧州王者を決めるチャンピオンズカップでも優勝候補に挙げられる強豪だ。改めて、その強豪でどんなプレーをしたいかと聞かれて、「チームから信頼を勝ち取って試合に出るのが第一優先」。
「プレーに関しては積極的にいきたい。1選手として、1年目だからとか、日本人だからとかと、そういう考えではなく、最初から積極的に、もちろん9番の1番手を狙うつもりでいくし、引いたマインドではなくて、どんどんどんどんアグレッシブに行きたい」と語気を強めた。
かねてからテストマッチの舞台で自分の能力を出して、「チームを勝たせる9番になりたい」と話していた齋藤直人。ワールドクラスの選手になるためにフランス「TOP14」、そして欧州の強豪クラブであるトゥールーズで新たなチャレンジが始まる。
文/写真:斉藤健仁
斉藤 健仁
スポーツライター。1975年生まれ、千葉県柏市育ち。ラグビーと欧州サッカーを中心に取材・執筆。エディー・ジャパン全試合を現地で取材!ラグビー専門WEBマガジン「Rugby Japan 365」「高校生スポーツ」の記者も務める。学生時代に水泳、サッカー、テニス、ラグビー、スカッシュを経験。「エディー・ジョーンズ 4年間の軌跡」(ベースボール・マガジン社)、「ラグビー日本代表1301日間の回顧録」(カンゼン)など著書多数。≫Twitterアカウント
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