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長所をぶつけあい、乱打戦になった。
七夕の7月7日(日)に奈良・天理親里でキックオフされた「2024関西大学ラグビー春季トーナメント」の決勝戦で、先制トライは同大会3連覇を狙う京都産業大学だった。
昨季ムロオ関西大学Aリーグ1位の関西王者は、開始2分だ。
昨季同3位で今大会初優勝を狙う関西学院大学は、HO平生翔大らが的確なダブルタックルで押し返してみせる。
しかし直後、184cmの京産大SO吉本大悟が仕掛けてオフロードパス。CTB藤本凌聖が独走状態となって、最初にインゴールを陥れた。
ソフトなトライを許した関学大だが、鮮烈なアタックはその直後だった。
中盤で大分舞鶴出身のSH川原大がテンポを刻むと、デコイをつかってSO徳永司也が大外へボールを運ぶ。
エリア両端で巧みにゲインを切る関学大。最後は北海道バーバリアンズJr出身のCTB川村祐太が、阿吽の呼吸で防御裏へキック。
同じ絵をみていたWTB武藤航生がインゴールで追いつき、ダイブしながらチーム1本目。ゴール成功で、すぐ同点(7-7)に追いついた。
ところが勝負の天秤は京産大に振れる。
理由は、京産大の伝家の宝刀・スクラムだ。
前半8分のファーストスクラムは関学大ボールだったが、ここで京産大がヒット後から優位に。「セット!」直後に相手スクラムをめくりスクラム・ターンオーバーを起こした。
ここからNO8シオネ・ポルテレがチーム2本目。スクラムから主導権を握り返した。
京産大はスクラムPKからもう1トライを追加。スクラムから劣勢となる関学大だが、エナジーは落ちなかった。
12点ビハインド(7-19)の前半18分、関学大WTB武藤航生ら起点にカウンターラックを決める。ここから敵陣侵入。
するとこの日確実なゲインで獅子奮迅だったNO8小林典大が、豊かなスピード&アングルで防御突破。チーム2本目で前半21分に5点差(14-19)に迫った。
FW優位の京産大に対して、スキルとパワーを組み合わせた展開力で得点を刻む関学大。お互いの長所でトライをとりあう好勝負が展開される。
2024年度ラグビー関西大学 春季トーナメント 決勝
【ハイライト動画】京都産業大学 vs. 関西学院大学
しかしFW優位の京産大は、NO8シオネ・ポルテレの突進、インターセプトなどで3連続トライ。「5」だった得点差が「26」まで広がってしまう。前半その後1トライずつを取り合い、京産大リードの45-21で折り返した。
関学大ディフェンスのエナジーは終始高かったが、問答無用の突破力をみせたのが京産大NO8シオネ・ポルテレ。トンガカレッジ、目黒学院出身の3年生だ。
184cm、112kgのサイズは世界基準でみれば大柄なNO8ではない。しかし強い体幹、足腰がある上、WTB適性もあるスピードや、ショートステップやハンドオフのスキルもある。
後半開始早々、そのNO8ポルテレがラインアウトからの2次攻撃でラック脇を突き、ハットトリック達成。
関学大も粘り強くディフェンスするが、後半7分、ふたたびNO8ポルテレがショートステップを織り交ぜたキャリーで押し込み、ゴール下に自身4本目。圧巻の強さを見せつけ、さらに1トライを加えた京産大が45点リード(66-21)を得る。
45点ビハインドとなれば「諦めムード」になるチームもあるだろう。
しかし関学大は違った。猛反撃に転じたのだ。
反撃の狼煙は後半13分、主将の一撃。2度のペナルティで相手が自陣方向に下がると、右コーナーのラインアウトから展開で勝負。
ゴールに迫ると、接点に走り込んだ関学大HO平生主将。巧みな体さばきでタックルをいなし、後半チーム1本目のトライを奪取した。
関学大ペースは続く。自陣ラックでターンオーバー。ここから展開すると、左隅でFB的場天飛がチェンジペースで見事に突破。ショートパントの再獲得を混ぜる妙技から後半16分、連続トライを奪った。
ボールを持てればゲインできる――。
そんな確信に突き動かされるように関学大は後半19分、3連続トライを決める。パサー&突進役としても機能するCTB松本壮馬が、相手守備の不備を突いてロングゲイン。フォローのSH川原がインゴールに駆け込んだ。
京産大もラインアウトから同様のロングゲインでトライを返すなど、関西王者の意地をみせる。京産大主将だった兄(叶翔/三重ホンダヒート)をもつ途中出場の平野叶苑も、ジャッカルで関学大の波状攻撃を食い止めた。
ただ後半は京産大スクラムの優位が崩れた。FWメンバーが多く替わった京産大に対し、関学大が逆にスクラムでペナルティを奪う。
ここから敵陣に侵入すると、封じ込まれていたモールでも前進。この勢いを活かして突貫CTB松本がラック脇を突破。関学大のFW・BKの推進力が噛み合ったトライを後半36分に決めた。
ファイナルスコアは73-49。京産大が両軍合計122点の乱打戦を制して大会3連覇。関学大の大会初優勝はならなかった。
しかし後半だけのスコアはイーブン(28-28)。トータルで負けはしたが関学大のポテンシャルは示しただろう。FW戦の圧力増強、セットプレーの安定が、さらなる飛躍の鍵か。
秋の本番、関西Aリーグの本命は京産大で間違いない。しかし49失点を許したディフェンス、メンバー交代後のゲームクオリティは課題となったろう。両雄による秋の再戦が、今から待ち遠しい。
文:多羅 正崇
多羅 正崇
スポーツジャーナリスト。法政二高-法政大学でラグビー部に所属し、大学1年時にスタンドオフとしてU19日本代表候補に選出。法政大学大学院日本文学専攻卒。「Number」「ジェイ・スポーツ」「ラグビーマガジン」等に記事を寄稿.。スポーツにおけるハラスメントゼロを目的とした一般社団法人「スポーツハラスメントZERO協会」で理事を務める。
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