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コンバージョンキックを決める堀江翔太
期待を裏切らない熱戦となった。6月に入り、世界各国でラグビーのテストマッチが行われる中、6月22日(土)にはイギリスのトゥイッケナム・スタジアムで、世界の各国代表経験者などで構成される「バーバリアンズ」が、9月にパシフィックネーションズカップで来日するフィジー代表と対戦した。
そして、この試合はバーバリアンズに初めて選出された日本代表HO(フッカー)堀江翔太(埼玉パナソニックワイルドナイツ)の、正真正銘の現役ラストマッチとなった。
このチームを率いるのは、ワイルドナイツのロビー・ディーンズ監督。「最高レベルでの経験と、キャリアの最前線にいる選手たちが、レジェンドたちとともにプレーし、トゥイッケナムの大観衆の前で自分たちの力を発揮する機会を喜んでいる」と試合前に話し、国際試合で合計968キャップを誇る23人のメンバーを選んだ。
ニュージーランド代表としてワールドカップ4大会に出場し、ワイルドナイツでもプレーしたオールブラックス最多の153キャップを誇り、先日現役を引退したばかりのLO(ロック)サム・ホワイトロックがキャプテンを務めた。
FW(フォワード)ではイングランド代表のPR(プロップ)カイル・シンクラー(76キャップ)、オーストラリア代表PRスコット・シオ(74キャップ)と経験豊富な2人がフロントローで先発、バックローには日本代表FL(フランカー)ジャック・コーネルセン(21キャップ)とラクラン・ボーシェーと、ワイルドナイツで活躍する2人もスターターとなった。
BK(バックス)は、イングランド代表のSH(スクラムハーフ)ダニー・ケア(101キャップ)、フランス代表のCTB(センター)ヴィリミ・ヴァカタワ(32キャップ)、CTBガエル・フィク(90キャップ)、イングランド代表WTB(ウィング)ジョニー・メイ(77キャップ)、ニュージーランド代表のWTBレスター・ファアインガアヌク(7キャップ)らが名を連ねた。
ラグビー テストマッチ2024
【ハイライト動画】バーバリアンズ vs. フィジー|堀江翔太、現役ラストゲームでコンバージョンキックを決める
ベンチにはHO堀江のほかに、やはりワイルドナイツでプレーする日本代表PRクレイグ・ミラー(18キャップ)、そしてワイルドナイツのLOリアム・ミッチェル、イングランド代表のSHベン・ヤングス(129キャップ)らが控えた。
一方、2023年のワールドカップで決勝トーナメントに進出したフィジー代表。今年から、元日本代表コーチのミック・バーンがHC(ヘッドコーチ)務めている。この試合の後、7月にジョージア代表、ニュージーランド代表と対戦する。
今回はヨーロッパでプレーしている選手の中にはシーズンが終わっていない選手もいたため、スーパーラグビーに参戦している『フィジアン・ドゥルア』のメンバーが中心となった。
セブンズのオリンピック金メダリストでもあるFB(フルバック)ヴィリモニ・ボティトゥ、FLデリ・メレナランギといった昨年のワールドカップメンバーを軸に若い選手を織り交ぜたメンバーとなった。
両チームは2013年から今まで3度対戦しており、最初の2回はバーバリアンズが勝利した。直近では2019年に対戦し、一進一退の攻防を繰り広げ、最終的には33-31でフィジーが勝利している。
この試合の勝者には、2011年からスポンサーである英国企業の名を冠した『キリックカップ』が贈呈される。昨年は世界選抜にバーバリアンズが、48-42で勝利して保持し、2021年から3年間カップを守り続けてきた。
世界的な選手がずらりと揃うバーバリアンズが、今回もカップ防衛に成功するか。それともボールをどこからでもつなぐラグビーが持ち味のフィジー代表が観客を沸かせるプレーで、対バーバリアンズに連勝となるか。試合は現地時間で6月22日(土)午後5:15(日本時間深夜1:15)にキックオフされた。
試合序盤は拮抗した状況になるが、先制したのは黒白の団柄ジャージーのバーバリアンズだった。スクラムを起点に左に展開し、FB(フルバック)チャイ・フィハキがゲインすると、最後はSHケアからパスを受けたFLボーシェーがトライを挙げて5点を先制した。
23分、フィジー代表もターンオーバーから反撃し、SOケイレブ・マンツが抜けて、FLメレナランギがゲイン。内側に放って、最後はWTBエペリ・モモがトライを挙げて7-5と逆転。27分にはインターセプトから攻めて、キックしてバウンドしたボールをつないで再びWTBモモが決めて、リードを9点に広げた。
バーバリアンズも負けていない。32分にモールを押し込んでから右に展開し、WTBメイがトライ。36分には相手のペナルティから速攻を仕掛けて、最後は再び
WTBファアインガアヌクが決めて、17-14と逆転に成功。前半終了間際、フィジー代表はSOマンツがPG(ペナルティゴール)を沈めて17-17でハーフタイムを迎えた。
後半に入って7分、バーバリアンズは自陣からボールをつなぎ、相手の反則後、再びタップで攻め込み、最後はSHケア、WTBファアインガアヌクとつないで、ファアインガアヌクが、この試合ハットトリックとなるトライを挙げて24-17。さらに10分、FBフィハキが抜けだし、オフロードパスをつないでWTBメイが2本目となるトライを決めて31-17とリードを広げた。
15分、フィジー代表は自陣からボールをつないで、FLメレナランギが右サイドラインを快走し、最後はフォローしたWTBモモが、こちらもハットトリックとなるトライを挙げて31-22。
19分にはバーバリアンズのWTBケアがシンビンとなり、数的有利となったフィジー代表は22分、相手のチップキックからカウンターを仕掛け、SOケムエリ・ヴァレティニがトライを挙げて、2点差に追い上げた。さらに27分にはSOヴァレティニがきっちりとPGを沈めて、フィジー代表が逆転に成功した。
28分、ついにワイルドナイツのソックスを履いた『ラスボス』HO堀江が登場。すると32分、スクラムを起点に攻め込み、FBフィハキからパスを受けたFLボーシェーが2つ目のトライを挙げて38-32と再びリードする。
37分にはFLボーシェーのジャッカルからチャンスをつかみ、最後はSHヤングスからパスを受けた、NO8(ナンバーエイト)ザック・マーサーが中央にトライ。そしてコンバージョンキックは、HO堀江が任されて、同僚だったSO松田力也を彷彿させるルーティーンからしっかりゴールを沈めて45-32とした。
最後まで見ている観客をワクワクさせるゲームとなった試合は、そのままバーバリアンズが勝利し、『キリックカップ』防衛した。
プレイヤー・オブ・ザ・マッチを獲得したバーバリアンズのWTBファアインガアヌクだった。「普段とは違う感じだった。ある種、草の根に回帰するようなもので、私たち選手にとっては、年を重ねるごとに、初心に帰ることが素晴らしいことだったということを思い出させてくれるものでもある」。
「みんなの結束力を高めて、新しい仲間を作り、たくさん観客の前に出てプレーした。バックグラウンドも違うけど、世界中から集まった素晴らしい選手たちとコーチ陣と一緒にプレーできて非常に誇りに思う」。
堀江同様に、この試合で現役を引退したバーバリアンズのキャプテンLOホワイトロックは「フィジー代表とは何度か対戦したことがあったが、彼らは1対1
に強いし、オフロードも多くてとても危険なチームだった」。
「ずっとバーバリアンズでプレーしたいと思っていたので今日は光栄だ。招待されないと行けない特別なクラブだからね。今日のチームメイトは本当に、フィールドの外でも素晴らしいし、フィールドの中でも素晴らしい選手たちで、この場にふさわしい選手ばかりだった」と笑顔で振り返った。
フィジー代表のキャプテンFLデレナランギは「長旅や数人の選手が出場できないなど、今日、私たちが直面したあらゆる困難に、選手たちは立ち向かってくれた。みんなで練習できたのは昨日になってからだったが、たくましく、勇気を持ってプレーした」。
「長い時間をかけてこちらにやってきた選手もいる。今日、私たちがフィールドに立つのは、これまで練習してきた成果を発揮するためだった。そして、それを見せることができた」と胸を張った。
両チームはノーサイド後、一緒に輪になって賛美歌を歌い、バーバリアンズの選手はHO堀江がカップを持って記念撮影に収まった。この試合で現役を引退した2人、オールブラックス最多キャップのLOホワイトロック、そして日本代表のレジェンドHO堀江を送り出すにはふさわしいゲームとなった。
文:斉藤健仁/写真:REX/アフロ
斉藤 健仁
スポーツライター。1975年生まれ、千葉県柏市育ち。ラグビーと欧州サッカーを中心に取材・執筆。エディー・ジャパン全試合を現地で取材!ラグビー専門WEBマガジン「Rugby Japan 365」「高校生スポーツ」の記者も務める。学生時代に水泳、サッカー、テニス、ラグビー、スカッシュを経験。「エディー・ジョーンズ 4年間の軌跡」(ベースボール・マガジン社)、「ラグビー日本代表1301日間の回顧録」(カンゼン)など著書多数。≫Twitterアカウント
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