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菅平で行われたラグビー日本代表トレーニングスコッド合宿
ラグビー日本代表が、6月22日(日)のイングランド代表戦に向けて始動した。5月20日から29日まで、男子15人制日本代表のトレーニングスコッド合宿が、長野・菅平高原で始まり、21日(火)の午後、練習が報道陣に公開された。
リーグワン ディビジョン1のプレーオフ進出4チームや入替戦に進んだチームからは選手は招聘されず、リーグワンの5チームからと大学生9名の計33名が参加。SO(スタンドオフ)李承信(コベルコ神戸スティーラーズ)はコンディション都合のため、遅れて合流予定だ。
当初、メンバーに名を連ねていたPR(プロップ)木津悠輔、FL(フランカー)ウィリアム・トゥポウ、CTB(センター)シオサイア・フィフィタ(いずれもトヨタヴェルブリッツ)、FBハラトア・ヴァイレア(クボタスピアーズ船橋・東京ベイ)の4選手は不参加。
追加招集されたWTB小野澤謙真(慶應義塾大学1年)
替わりに、PR淺岡俊亮(トヨタV)、LO(ロック)シオネ・ブナ(静岡ブルーレブズ)、WTB(ウィング)山下楽平(神戸S)、FB(フルバック)小野澤謙真(慶應義塾大学1年)が追加で合流した。
32人の選手たちは19日の午前中に合宿地に入り、20日から練習を開始。2日目となる21日の練習も、朝6:00からの「ロケットスタート」でフィジカルトレーニングを行い、午前中はFW(フォワード)とBK(バックス)に別れてのユニット練習と、S&Cトレーニング、そしてランチを挟んでアタック&ディフェンスの落とし込みをするため全体練習が行われた。
キッドウェル コーチ(左)、ボーデン コーチ
「超速ラグビー」を掲げるエディー・ジョーンズHC(ヘッドコーチ)の下、ニール・ハットリー、デイビット・キッドウェル、ダン・ボーデンらといったコーチも熱心に指導していた姿が印象的だった。
まず、ジョーンズHCは今回のトレーニングキャンプを菅平高原で行う意図について、「現在、日本代表を再構築していて、まずは基本的なことに立ち返りたかったので、ラグビーの魂みたいな、この聖地・菅平に戻ってきたいと思った」。
「今回の合宿は12クラブ中、5つのクラブから選手を呼んでいるトレーニングスコッド。彼らにとっては、自分たちを日本代表のスコッドにアピールするチャンスだし、そこからさらに初戦のイングランド代表戦の23人のメンバーに入ってくることを期待している」と話した。
菅平合宿では1日3部練習を課しており、2月の福岡合宿とは違い、一気に強度は増した。そして、ジョーンズHCは、「テストマッチで私たちが戦うのに不可欠な、ベストのフィットネスを作り上げる必要がある」と話した。
そして、「前回の福岡合宿はラグビーのコンセプトを落とし込んだ合宿だったが、今回はダンとデーヴィッド(コーチ)がいるので、細かい部分を導入していこうと思う。そして、もちろんイングランド代表戦に勝つためのプランも練ってる」と語った。
また、合宿のもう1つの狙いとして指揮官は、「日本には才能のある選手がたくさんいるが、世界のベスト15に選ばれる選手は1人もいない。だから、その才能をどうパフォーマンスに出せるか、なぜ出せていないのか、そういう選手が誰なのか、本当のベストの選手、ベストになりたい選手、なりうる選手を見つけること」と続けた。
注目の京都産業大学4年のSH土永 旭
印象に残った選手を聞かれてジョーンズHCは、「若い選手たちには感心している。大学生の選手たちは、大学で見ると測れない部分が(合宿だと)わかるので良かったと思うし、うれしい」と声を弾ませた。
新キャプテンはジョーンズHCの中で、すでに決めているそうだが、宮崎合宿に入ってから発表予定だ。「すぐには発表しないつもり。恐らく、試合に向かっていくところで決めていく。選手とも話す必要があるし、プレーオフで戦っている選手たちとのアクセスは制限されているので、宮崎合宿に来てから選びぶ」と説明した。
WTB高橋汰地(トヨタヴェルブリッツ)
練習後、リーグワンの3選手がメディア対応した。代表キャップホルダーであり、2月の福岡合宿にも参加したWTB高橋汰地(トヨタヴェルブリッツ)は「宮崎合宿に残るには、エディーさんが求めている選手になればいい。FBもやるかもしれないが、しっかりWTBとしてスコアする部分や、アップしていくディフェンスで、連携しながら精度高くできるようにしていきたい」と話した。
PR茂原隆由(静岡ブルーレヴズ)
同じく福岡合宿に参加したノンキャップのPR茂原隆由(静岡ブルーレヴズ)は、「『超速ラグビー』という中で、いろいろなチームの選手が集まっているが、練習2日目なのでかみ合ってきた。ハンドリングも重要視されていて、スキルとスピードを掛け合わせたラグビーなので難しい印象」。
「自分は左PRでブルーレヴズという、スクラムに一番重点に置いているチーム出身なので、スクラムのメンタリティー、マインドセットを持って引っ張ってくれ、落とし込んでくれと言われた。イングランド代表と戦いたい。そのチャンスをつかみ取れるようにがんばりたい」と意気込んだ。
SH藤原忍(クボタスピアーズ船橋・東京ベイ)
今季、クボタスピアーズ船橋・東京ベイで9番を張り続けたノンキャップのSH(スクラムハーフ)藤原忍は、ジョーンズHCの合宿には初参加だった。
「日本の『超速ラグビー』は日本だけしかできない。体現するのは9番だ、9番としての役割をしっかり果たしてくれと言われました。システムを理解して、自分に求められていることは何か、その上で自分の強みを出したい。超速ラグビーはオプションがたくさんあって、やっていて楽しい」と前を向いた。
イングランド代表戦に向けて、6月6日から宮崎で本格的に始まる日本代表合宿に、ジョーンズHCは「33人呼ぶ」と公言し、「現在、菅平でトレーニングキャンプに参加している選手から「何人呼ぶか、ということはわからない。選手たち次第」と話すにとどめた。
菅平合宿の最終日には宮崎合宿に入るためのセレクションマッチも行う予定だという。
目標を尋ねられてジョーンズHC「まずはチームを作り直す。そのためには、セレクションを行い、若い選手を育成する。日本のラグビーの戦い方を見直したい。そしてもちろん、テストマッチに勝ちたい」と語気を強めた。
イングランド戦まであと1ヶ月あまり。本格的な始動は6月に入ってからだが、ジョーンズHCは菅平の地で、ポテンシャルの高い選手を育成しながら「超速ラグビー」を落とし込んでいく。
文/写真:斉藤健仁
斉藤 健仁
スポーツライター。1975年生まれ、千葉県柏市育ち。ラグビーと欧州サッカーを中心に取材・執筆。エディー・ジャパン全試合を現地で取材!ラグビー専門WEBマガジン「Rugby Japan 365」「高校生スポーツ」の記者も務める。学生時代に水泳、サッカー、テニス、ラグビー、スカッシュを経験。「エディー・ジョーンズ 4年間の軌跡」(ベースボール・マガジン社)、「ラグビー日本代表1301日間の回顧録」(カンゼン)など著書多数。≫Twitterアカウント
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