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ちょうど1年前は20-51だった。
2季連続のセミファイナルでの対戦は、横浜キヤノンイーグルスにとって、自分たちの進化を確認するのに最適なベンチマークとなった。
今季レギュラーシーズンで2度戦ったときは、12-53、14-43と完敗。しかし、リーグワン2023-24の準決勝でスコアは17-20と競った。
5月18日(土)に秩父宮ラグビー場でおこなわれた試合には、1万5464人が集まった。
多くのファンの前で、横浜キヤノンイーグルスが埼玉パナソニックワイルドナイツに乾坤一擲のチャレンジを見せた。
その3分後にPGで迫られるも、9分には、WTBマリカ・コロインベテの左ライン際の力強いランからLOジャック・コーネルソンのトライも生まれた。
27分にはSO松田がPGで加点し、前半を13-3とリードして終えた。
しかしそのロースコアは、イーグルスが自分たちのプランを実行できていることを示すものでもあった。
迷わず前へ出るディフェンスで青いジャージーに圧力をかけ続けた。ワイルドナイツのトライはインゴールの端っこばかり。そして攻めては、インサイドの勝負にも堂々と挑み、その後、よくボールを動かし、キックも巧みに使った。
試合後の沢木敬介監督は前半を振り返り、「相手の方が、足が止まっているように見えた」と言った。
後半、自分たちのスタイルをより明確に示すことができる手応えを感じていた。
その感覚は的中した。
後半開始直後からギアを上げたイーグルスは、すぐに敵陣深くに入った。相手の反則から得たPKを蹴り出し、ラインアウトからモールを組む。
FLシオネ・ハラシリがインゴールにボールを置いた(4分)。SO田村優のコンバージョンキックも決まり、3点差に迫った。
ジャパンラグビー リーグワン2023-24 D1
【準決勝ハイライト動画】埼玉ワイルドナイツ vs. 横浜キヤノンイーグルス
13分には、前半から何度も好走していたWTB竹澤正祥が逆転トライを決めた。
ラインアウトからフェーズを重ね、訪れたチャンスに腰の強いランナーが走り切った。
この試合に向け、チームは辛抱強く攻めて崩し、その瞬間を逃さぬ準備を重ねてきた。そのイメージ通りのアタックだった。
SO田村が正確なキックで2点を追加し、イーグルスの得点は17点に。ワイルドナイツの13点を超えた。
スタジアムのボルテージが上がった。
しかしワイルドナイツは、こういう状況で勝ち切るための日常を過ごしている。
慌てることはなかった。落ち着いて、自分たちがやるべきことにあらためて集中した。
逆転の瞬間から5分後だった。
右ラインアウトから攻めたワイルドナイツは、左へ大きくボールを動かした後、チャンスを作った。目の前のスペースを見逃さなかったのは SO松田。ディフェンスの隙を切り裂き、トライライン目前までロングゲインを見せた。
仕留め切ったのはダミアン・デアレンデ。背番号12が5点を、続いてSO松田が2点を刻む。
20-17とスコアをひっくり返した(20分)。
ワイルドナイツには試合中、選手たちへ、瞬時にチームの共通認識を浸透させるキーワードがある。そのうちの一つが「ブルー」だ。
HO坂手淳史主将が言う。
「自分たちがゲームを支配している状況や、セーフティーな立場になるようにする。それをプルーと呼んでいるのですが、この試合のテーマがそれでした」
逆転された後すぐに点を取り返した流れは、その時間帯にスコアすることの重さを全員が理解して動いたからだ。
残り時間が少なくなれば、メンタル的なプレッシャーも高まる。その前に、自分たちをブルーの領域に引き戻した。
ラスト20分を、コネクションのとれた分厚いディフェンスで守り切った。
ロビー・ディーンズ監督に、「相手はすごくいいプレッシャーをかけてきました。その中で、選手たちがよく抜け道を探してくれた。毎年この時期にイーグルスと戦っていますが、来年は違うチームと戦いたいですね」と言わせた80分。
準決勝に相応しい熱戦だった。
勝つことだけが求められるノックアウトステージではあるが、負けてもチームの歴史と文化を積み上げられる、チームにとって宝となる試合がある。
イーグルスにとってこの日の試合は、それに値するものだった。
沢木監督は、「今シーズンのベストゲーム」と言って続けた。
「負けたことは悔しい。しかし、選手たちは持っている力をすべて出してくれました」
負けても、100の力を出し切ったなら、次へ進める。積み上げられる。
指揮官は、前年と同じ準決勝での敗戦という結果も、価値が違うことを強調した。
田村一博
前ラグビーマガジン編集長。鹿児島県立鹿児島中央高校→早稲田大学。早大GWラグビークラブでラグビーを始める。ポジションはHO。1989年、ベースボール・マガジン社に入社。ラグビーマガジン編集部に配属される。1993年から4年間の週刊ベースボール編集部勤務を経て、1997年からラグビーマガジン編集長に就く。2024年1月に退任し、現在は編集者、ライターとして活動。
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