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横浜キヤノンイーグルス vs. 埼玉ワイルドナイツ
ストーリーは昨シーズンから続いている。
昨季(リーグワン2022-23)の第6節で戦った時は21-19と埼玉パナソニックワイルドナイツが勝った。
しかし追い詰めた横浜キヤノンイーグルスが、初の4強入りを果たした勢いを持って挑んだプレーオフトーナメント準決勝では、51-20とワイルドナイツが完勝する。
イーグルスの指揮官、沢木敬介監督はその試合後、「このステージになるとギアをひとつ上げてくる相手と戦う時、自分たちに何が足りないか分かったと思う」と話した。
そして今季の開幕戦で戦った両者。結果は53-12と、またもワイルドナイツが大勝する。敗れた沢木監督は、今度は「ボコボコにいかれた」と語り、完敗を認めた。
5月4日(土)、大分・レゾナックドーム大分でおこなわれる今季2回目の対決は、その続きである。
ワイルドナイツはレギュラーシーズンの1位通過を早々に決め、イーグルスは4位以上を確定しており、2季連続でプレーオフトーナメントに進出することが決まっている。
そのままの順位なら、2週間後のプレーオフトーナメント準決勝でも顔を合わせる。
ただ、イーグルスは勝てば3位浮上の可能性もある(そうなると、2位の東芝ブレイブルーパス東京と準決勝で戦う)。いずれにしても、今回の結果により、今季クライマックスで戦うカードが決まる。
そんな状況でのレギュラーシーズン最終戦ではあるが、沢木監督は、星勘定をせず「勝利を追求するだけ」と話す。
「コンディションの整っている選手は(ベストメンバーを)出します」とキッパリ言い切る。
再戦を念頭に、手の内を隠すとか、そういった小細工をする気はない。理由は、「目の前の試合に勝って成長し続けることが何より大事」という信念を持っているからだ。
今季開幕戦を振り返って、「あの頃は、心身ともに、自分たちをコントロールできていなかったと思います。そこから試合を重ねて改善してきました」と手応えを感じている。
2シーズン続けての4強入りは地力がついた証拠だ。
勢いでつかんだものではない。苦労した時期がありながら、這い上がり、他チームとの競り合いに勝った。南アフリカ代表の大駒2人を欠いた時期も長かったけれど、地に足をつけて戦った結果の上位進出だ。
5か月前の開幕戦で完敗した時、FL嶋田直人は、「(前年3位になった)自分たちを見る周囲の目が変わったように感じました。ヘタなことはできないぞ、と思う気持ちがどこかにあったかも」と話し、挑む気持ちを強く持って戦いに臨めなかったことが悔しそうだった。
善戦した後に2回、こてんぱんにやられたイーグルスにとって、ワイルドナイツは、自分たちの現在地を教えてくれる最高の相手だ。今回の大分での戦いは、自分たちが以前とは違うマインドセットを持った集団になっていることを示す場にもなる。
その一戦でゲームキャプテンを務めるのはHO中村駿太。2節前の三菱重工相模原ダイナボアーズ戦ではプレーヤー・オブ・ザ・マッチに選ばれるなど、新天地で体のキレが増したように見える。
アーリーエントリーでチームに加わったSO武藤ゆらぎのパフォーマンスとポテンシャルにも注目だ。
前節に続いて2戦連続の先発。初先発のトヨタヴェルブリッツ戦では個人の才能は発揮したけれど、チームを勝利には導けなかった。
その学びを今節に生かす。
対するワイルドナイツは、今季開幕から15連勝中と、その歩みは順調なままだ。
前節の花園近鉄ライナーズ戦では、今季のプレータイムが短い選手たちを起用したものの(33-24)、選手層の厚みをあらためて感じさせた。
今回のイーグル戦の先発には、プレーオフトーナメントを戦うチームのスターターに名前が並びそうな選手たちが揃った。
こちらも、勝利しか考えずに挑む姿勢を貫く。進化の著しい相手の頭は、何度でも叩いておくべきだと分かっている。
昨シーズン王座から陥落したワイルドナイツ・選手たちは全員、それ以来、その時の屈辱を忘れたことはない。
シーズン前の合宿。シーズンに入ってからの試合前。そして日常の練習時でも、「悔しさを忘れるな」の言葉が途切れることはなかった。
過去15戦、危なげなく勝ち続けているのも、そんな毎日を過ごしているからだ。
PR稲垣啓太の鮮烈復帰はまだも、10戦続けて出場中のダニエル・ベレスが成長中だ(5戦先発)。
FW、BKとも、密にコミュニケーションを取りながらプレーするいつものメンバーばかり。死角はない。
目の前の一戦に集中しながら、その結果が、この先のストーリーにどういう影響を及ぼすか知っている集団は手強い。
田村一博
前ラグビーマガジン編集長。鹿児島県立鹿児島中央高校→早稲田大学。早大GWラグビークラブでラグビーを始める。ポジションはHO。1989年、ベースボール・マガジン社に入社。ラグビーマガジン編集部に配属される。1993年から4年間の週刊ベースボール編集部勤務を経て、1997年からラグビーマガジン編集長に就く。2024年1月に退任し、現在は編集者、ライターとして活動。
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