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トヨタヴェルブリッツ vs. 埼玉ワイルドナイツ
埼玉ワイルドナイツ(埼玉WK)が強すぎる。これほどまでに差があるのはなぜだろう。両チームのメンバー表を眺めて首をかしげる人も多かったのではないか。4月20日(土)、名古屋市のパロマ瑞穂ラグビー場は、満員御礼の9,129人の観衆が集った。リーグワンのディビジョン1(D1)第14節、トップ4入りへわずかに可能性を残すトヨタヴェルブリッツ(トヨタV)が、首位を走る埼玉WKを迎え撃つ。期待感が高まるのも当然だった。
午後2時30分、埼玉WKのSO松田力也のキックオフで試合は始まった。開始4分、埼玉WKはハーフウェーライン付近のスクラムから連続攻撃。WTB竹山晃暉からパスを受けたNO8大西樹が右タッチライン際を抜け出しトヨタV陣深く入ると、ラックからこの日LOに入ったジャック・コーネルセンが縦に突進。次のラックからSH小山大輝が少しボールを持ち出し、飛び出したトヨタVのディフェンダーをあざ笑うかのようにLOルード・デヤハーがまっすぐ走り込んで、そのまま先制トライをあげる。
勢いに乗る埼玉WKは、前半8分、トヨタV陣中盤のラインアウトから攻め、コーネルセンがディフェンスラインを突破し、ゴール前で密集サイドを我慢強く攻め、最後はデヤハーがトライ。15分には、ゴール前のラインアウトからモールを組み、右隅のインゴールには届かなかったが、左オープンに展開し、SO松田からのロングパスを受けたWTBマリカ・コロインベテが瞬時の加速でタックラーを振り切ってトライ。すべてのゴールを松田が決めて、21-0とした。
トヨタVも前半31分、モールからFLウィリアム・トゥポウがトライを返したが、埼玉WKのNO8大西樹がゴール前のスクラムからサイドアタック。最後はコロインベテがトライして、前半を26-7で折り返した。後半はトヨタVが60%のボール支配率で攻撃を続けたが、埼玉WKは何度も激しいタックルで押し戻し、ターンオーバーを勝ち取った。後半15分にはワンチャンスをものにして、交代出場のPRクレイグ・ミラーがトライ。33-7と引き離すと、20分、同じく交代出場のPRヴァル アサエリ愛がトライしてダメを押した。
ジャパンラグビー リーグワン2023-24 D1
【第14節ハイライト動画】トヨタヴェルブリッツ vs. 埼玉ワイルドナイツ
堅守速攻のプレースタイルは残しながらも、前半は先手必勝とばかりアグレッシブに攻めた。タックラーを引き付ける走り、味方をスピードに乗って走らせるパス、低い姿勢の強いタックルなど、質の高いスキルが的確な判断で繰り出される。スキは見えない。トヨタVのFB高橋汰地は「ラッキーでしかトライが取れないような、圧を感じました」と素直な感想を口にした。
試合後、埼玉WKのロビー・ディーンズ監督は「ヴェルブリッツが必死で挑んでくるのはわかっていた中で良い試合ができました」と笑顔で語った。坂手淳史キャプテンは「準備していたものを出せた試合でした。トヨタにはジャッカルの強い選手が多く、ディフェンスも前に出てくる。密集に近いところを攻撃しました」と話し、激しく前に出てくるトヨタVのディフェンスを利用して、SH小山のところでタメを作りギャップを突いて攻略したと明かした。埼玉WKは次節(4月27日)、本拠地・熊谷ラグビー場での最終戦で花園近鉄ライナーズと戦う。
敗れたトヨタVのベン・ヘリングヘッドコーチは「シンプルにパナソニックが上でした」とコメント。「パナソニックのブレイクダウンへのプレッシャーが強く、それによってラックスピードが落ちました。学びの多い試合でした」と埼玉WKを称えた。姫野和樹キャプテンの表情は険しかった。「いまの自分たちの力がわかった試合でした」。この日の負けで、トップ4入りの可能性はついえた。ヘリングヘッドコーチは、残り2試合をどう戦うのか報道陣に質問されて答えた。「残念ですが、最後の2試合はファンへの感謝を示す機会にもなる。来季のプレシーズンと考えて気持ちを込めてプレーしたいと思います」。トヨタVは次節(4月27日)、パロマ瑞穂ラグビー場で横浜キヤノンイーグルスと対戦。これが今季最後のホストゲームとなる。応援し続けてくれるファンの皆さんを喜ばせたい。
村上 晃一
ラグビージャーナリスト。京都府立鴨沂高校→大阪体育大学。現役時代のポジションは、CTB/FB。86年度、西日本学生代表として東西対抗に出場。87年4月ベースボール・マガジン社入社、ラグビーマガジン編集部に勤務。90年6月より97年2月まで同誌編集長。出版局を経て98年6月退社し、フリーランスの編集者、記者として活動。
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