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ラグビー コラム 2024年3月31日

【ハイライト動画あり】春の王者は大阪桐蔭。ともに切磋琢磨してきた石見智翠館に勝利。全国高校選抜ラグビー大会 決勝

ラグビーレポート by 斉藤 健仁
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2度目の優勝を果たした大阪桐蔭

今年の春の王者が決まった。3月22日(金)から始まった第25回全国高校選抜ラグビー大会、30日(木)に埼玉・熊谷ラグビー場で決勝戦が行われた。

大会最終日まで勝ち進んだのは、2度目の決勝で初の日本一を目指す中国王者・石見智翠館(島根)と、11年ぶり2度目の王者を狙う近畿王者・大阪桐蔭(大阪)の2校だった。

天候は快晴、24度と春の陽気の中、11時に試合はキックオフされた。先手を取ったのは「バテたら勝てる!」をキーワードに臨んだ「白い旋風」大阪桐蔭だった。

ボールキャリーで光った大阪桐蔭NO8大門

FB(フルバック)菅原幹太(2年)のキックカウンターから攻め込み、FW(フォワード)、BK(バックス)が一体となってボールを継続し、ゴール前まで攻め込む。前半6分、最後はNO8(ナンバーエイト)大門一心(2年)が力強いランで左中間にトライ。SO(スタンドオフ)上田倭楓(2年)がゴールを決めて、7点を先制する。

智翠館FB新井のPG

13分、石見智翠館も得意とするワイドアタックで攻め込み、相手の反則からPG(ペナルティゴール)のチャンスを得ると、FB新井竜之介(2年)がPGを沈めて3点を返すが。続く19分のPGのチャンスは外してしまった。

ハットトリックを達成した大阪桐蔭WTB水島

すると再び流れは大阪桐蔭へ。20分、相手のミスから再び攻めこんで、最後はSH(スクラムハーフ)川端隆馬(2年)から、WTB(ウィング)水島功太郎(2年)へと渡り左隅にトライ。さらに28分には、SO上田が落ち着いてPGを決め、15-3とリードして前半を折り返した。

後半、先手を取ったのも、やはり大阪桐蔭だった。後半2分、相手のパスミスにつけ込み、キャプテンCTB(センター)名取凛之輔(2年)が、SH川端につないで、そのまま右中間にトライ。さらに6分には、SO上田の好タッチキックからFWがモールを形成し、PR(プロップ)原悠翔(2年)が押さえて29-3と大きくリードした。

ディフェンスが光った大阪桐蔭

その後は4試合で失トライ2という、新チームになって鍛えてきた大阪桐蔭のディフェンスが機能し、ミスを誘ったり、ジャッカルしたりとゴールラインを割らすことはなかった。

第25回全国高等学校選抜ラグビーフットボール大会

【ハイライト動画】決勝 石見智翠館 vs. 大阪桐蔭|大阪桐蔭が猛攻で勝利

14分にはWTB水島が2本目のトライを挙げると、19分には途中出場のCTB竹之下誠仁(2年)がトライ。さらに最後まで攻める姿勢を崩さなかった大阪桐蔭は、25分、30分とWTB水島、CTB竹之下がトライを重ねてノーサイドを迎えた。ディフェンスからリズムを作った大阪桐蔭が、攻めては8トライ、守っては相手をノートライに抑えて55-3で快勝。2014年大会以来、11年ぶり2度目の頂点に立った。

智翠館の出村監督(中央)、安藤部長(左)

2度目の挑戦も勝利できなかった石見智翠館の出村知也監督は、「相手の方が1枚も2枚も上だった。ここで2トライ差、10点差で負けるより、これが僕らの実力だし、追いかける背中は遠くて大きい方がいいと思う。冬(=花園)までまだまだ時間はある。(島根に)帰ってしっかり走って鍛えて、大阪桐蔭の背中に追いつけるようにがんばりたい」と前を向いた。

大阪桐蔭のCTB名取にタックルされる智翠館NO8祝原

決勝戦ではノートライに終わったキャプテンのNO8祝原久温(2年)は「(大敗で)悔しいという言葉も出てこなかった…。大阪桐蔭が強かった。60分、ずっと同じディフェンスだったので、すごいなと思った。でも、前半は手応えあったので、それをどうつなげていくかだと思う」と悔しそうに話した。

2度目の春の王者に輝いた大阪桐蔭の綾部正史監督は、「しっかりと身体を当てていたし、受けるのではなく、攻撃的にディフェンスをしよう、チャンスがあればどんどん仕掛けていこうと話していた」。

大阪桐蔭の綾部監督(中央)

「後半の最初のトライがうまいところで取れたので、自分たちの形を出せれば取れるとわかったのではないか。活きた球をBKに提供するのがFWの仕事ですし、スクラム、ラインアウトで後手にならず、今日はブレイクダウンだという話をした。FWががんばってくれればBKが活きる。今日もFWがバテてくれて良かった」と選手たちを称えた。

優勝して喜ぶ大阪桐蔭の名取主将

気合いを入れるために坊主頭で臨んだキャプテンCTB名取は、「春、日本一というタイトルが取れてうれしい。5試合通して、今日が一番前半の入りが良くて、ボールを大きく動かすことや、FWの走りなど、自分たちの強みが一番出せた試合だった」。

「全員がディフェンスで、60分フルファイトできた。過信せず、まだまだ僕たちはチャレンジャーなので、花園の切符を取って、花園でも優勝できるように、1つ1つ積み上げていきたい」と胸を張った。

49歳の大阪桐蔭の綾部監督と、その1つ上の石見智翠館の安藤哲治部長(元監督)は同じ大阪府出身。大学を経て高校のラグビー部の指導者となり、20年以上切磋琢磨してきた。毎年、合宿では練習試合を行い、選抜大会前も、決勝戦前も合同練習を行った。

両校が揃って記念撮影

そのためノーサイド後は両チームの選手、そしてコーチ陣は一緒に写真に収まった。大阪桐蔭の綾部監督は「2度目の優勝の実感は何もない。最後、智翠館とやったので、この舞台でやろうと安藤先生と20数年やってきて、昨季も花園でも対戦させてもらって、上を目指してやってきたことが今日実現したので、すごくうれしかった」としみじみと話した。

両校の監督・コーチ陣も一緒に記念撮影

すでに両チームとも気持ちは次に向いていた。熊谷ラグビー場を去るときも、大阪桐蔭の綾部監督は、石見智翠館の出村監督と安藤部長に「(一緒に)合宿しよ!」と声をかけていた。春の王者となった大阪桐蔭、追いかける石見智翠館。ライバル同士であり、リスペクトする間柄である両校は冬の花園での再戦を心待ちにしている。

文/写真:斉藤健仁

斉藤健仁

斉藤 健仁

スポーツライター。1975年生まれ、千葉県柏市育ち。ラグビーと欧州サッカーを中心に取材・執筆。エディー・ジャパン全試合を現地で取材!ラグビー専門WEBマガジン「Rugby Japan 365」「高校生スポーツ」の記者も務める。学生時代に水泳、サッカー、テニス、ラグビー、スカッシュを経験。「エディー・ジョーンズ 4年間の軌跡」(ベースボール・マガジン社)、「ラグビー日本代表1301日間の回顧録」(カンゼン)など著書多数。≫Twitterアカウント

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