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ラグビー コラム 2024年3月22日

初出場の成城学園、自由奔放なパス&ランニングラグビーで全国を驚かせる。全国高校選抜ラグビー大会

ラグビーレポート by 斉藤 健仁
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選抜大会初出場の成城学園

3月23日(土)から埼玉・熊谷ラグビー場で開催される高校ラグビーの選抜大会。青森山田(青森)、四日市工業(三重)、興国高校(大阪)と並び、うれしい初出場を決めたのが、幼稚園から大学まで私立の一貫校である成城学園(東京)だ。

1928年創部の古豪で、全国高校ラグビー大会は1935年、1946年に2度経験しているが、一時は部員数が足らず合同チームで大会に出場したこともあったという。

都立豊多摩高校、東海大学ラグビーOBで、1995年に成城学園に赴任した仲西監督がラグビー部以外の部活の顧問も担当した後、「(高校を強くするためには)中学校から強くしていく流れを作っていくしかない」と中学校のラグビー部の顧問も兼ねて中・高連携で強化を勧めた。

現在の高校2年生は、2021年に東日本中学生大会で準優勝を果たすと、高校は一昨季、昨季と花園予選決勝で2度決勝に進出。そして2月の東京都新人大会で3位に入ったこともあり、大会実行委員会に推薦されて初出場を決めた。

東海大OBの仲西監督。中学から成城学園を強くした

仲西監督は「推薦されてビックリしました。1回戦で対戦する石見智翠館さんは花園では1・2回戦を勝たないと当たらないような相手ですし、菅平合宿では同館なので楽しみです。誰も成城学園のジャージーを知らないと思いますが、多くの人に見られるのがうれしい」と目を細めた。

高校から入学してくる生徒は8割が女子ということで、高校からラグビー部にはほぼ入部しないという。もちろんスポーツ推薦などの制度もなく、現在の部員は2年生14、1年生5人の計19人(マネージャーは2年生2人、1年生1人の計3人。すでに中学3年生も練習に参加)と決して部員数は多くない。

ただ、人工芝のグラウンドもあり、人数が少ない分、練習に集中できる環境にある。練習は月・木が休みだが、朝は1時間弱ウェイトトレーニングをしてフィジカル強化にあてている。

成城学園の全員ラグビー歴は長く、半数ほどが成城学園初等学校でタグラグビーを通して楕円球に触れ、中には小学校4・5年生からスクールでラグビーを本格的に始めている選手もいる。そして、半数が成城学園中学から競技を始めており、少なくとも全員が5年以上一緒にプレーしている。

PRからNO8に転向した染谷主将

今季、PR(プロップ)からNO8(ナンバーエイト)に転向した染谷昌宏主将(2年)は「チームメイトの性格、プレースタイルなどを全部知っているからこそのアプローチがあります。推薦で高校から集めるチームとは違う」と話した。

また、副将のSH(スクラムハーフ)黒尾洸太(2年)は、「幼稚園から一緒にいる選手もいて、何をしたいか、どういうプレーをするのか、アイコンタクトでわかるのが自分たちの強み」と胸を張った。

成城学園OBの佐藤HC

仲西監督と二人三脚で、フルタイムで指導にあたるのが、幼稚園から大学まで成城学園でプレーした佐藤政HC(ヘッドコーチ/49歳)だ。他にもOBの中山匠(早稲田大学→JAL)、榎本大輝(慶應義塾大学出身)や、今年1月からは元東芝ブレイブルーパス東京のバックスリーだった大島脩平さんらもコーチングしている。

「15人制でも7人制のようなラグビーをしてほしい」と仲西監督が言うように、個を活かしつつ、ボールを展開するラグビーが成城学園の持ち味だ。染谷主将も「いい経験に終わらせずに、勝つための準備をしてきている。まだ納得する形ではないが、FW(フォワード)がハードワークしてBK(バックス)で取り切るのが成城ラグビーです」と語気を強めた。

左から近藤、仲西、染谷、黒尾、川村、荒川のリーダー陣

リーダー陣は染谷主将、黒尾副将を筆頭に、他にもスクラムリーダーのPR(プロップ)荒川豊和、ラインアウトリーダーのLO(ロック)近藤裕太、部代表のPR川村巧、BKリーダーのFB(フルバック)仲西祐太(いずれも2年)がいる。仲西は監督の息子で、昨夏に「Bigman&FastmanCamp」にも参加した。CTB(センター)井出晴太(2年)も縦に強いランナーでチャンスメイクをする。

ランが持ち味のFB仲西は「父と一緒のチームにいるのは最初はやりにくかったが、今は慣れてきた。チームメイトとの上下関係や距離感はまったくありません」とコメント。

親子鷹で初の全国大会に挑む仲西監督とFB仲西

副将のSH(スクラムハーフ)黒尾は「自分たちの強みはアタック。(SHの)自分がうまくできるかがチームのアタックにそのまま影響する。相手より一テンポ速く、相手を遅らせるというプレーを全国レベルの相手にやりたい」と意気込んだ。

また、今回の全国大会の出場は、成城学園ラグビー部にとって大きな意味を持つ。この2月に88歳で亡くなった世界的指揮者である小澤征爾さんは、成城学園中学ラグビー部OBとして知られ、元気だった頃は自転車でふらっと来ては、グラウンドでよく見学していたという。

仲西監督は「(小澤征爾さんには)ここに来ると元気がもらえる、俺も頑張るよ、とよく言っていただきました。今回、推薦されたのは何かの縁かもしれません」。

また、征爾さんの息子で俳優・小澤征悦さん(49歳)と幼なじみの佐藤HCは「どこかのタイミングで、全国大会に出場して恩返しがしたいと話していましたが、こんなに早くその機会が来るとは思っていませんでした。喜んでくれると思いますし、征爾さんも着た成城ジャージーで全国大会に出るのはうれしい」としみじみと話した。

ボールを動かす展開ラグビーで勝負する

今季のスローガンは『我』と定めた。染谷主将は「今年のチームは個性があり、我が強い選手が多い中でも、規律を守りつつ自由を突き詰めるのが最終的なテーマです」と話した。

佐藤HCは「一番資料の少ないチームなので全国を驚かせたい。他のチームではやってはいけないことをある程度許しているので、ボールがつながったらうちのペースになる。全国の舞台は甘くないですが、可能性にかけたい」と話した。

昨季の花園予選決勝

成城学園は選抜大会の出場の勢いを春季大会につなげて、3度目の花園出場も目指している。初となる選抜大会の1回戦は中国ブロックの王者・石見智翠館(島根)と対戦する。

「良い勝負になる可能性もあるし、大差になる可能性もある。チャレンジします」(仲西監督)。小さい頃から一緒にプレーしている成城ラグビーの絆と、個性を活かした自由奔放なパス&ランニングラグビーを武器にアップセットを狙う。

文/写真:斉藤健仁

斉藤健仁

斉藤 健仁

スポーツライター。1975年生まれ、千葉県柏市育ち。ラグビーと欧州サッカーを中心に取材・執筆。エディー・ジャパン全試合を現地で取材!ラグビー専門WEBマガジン「Rugby Japan 365」「高校生スポーツ」の記者も務める。学生時代に水泳、サッカー、テニス、ラグビー、スカッシュを経験。「エディー・ジョーンズ 4年間の軌跡」(ベースボール・マガジン社)、「ラグビー日本代表1301日間の回顧録」(カンゼン)など著書多数。≫Twitterアカウント

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