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長崎北陽台フィフティーン(写真提供:長崎北陽台ラグビー部)
3月23日(土)から、埼玉・熊谷ラグビー場で開催される高校ラグビーの選抜大会。注目校の1つが県立高校ながら「花園」こと、全国高校ラグビー大会で準優勝1回、4強1回、ベスト8が4回の「公立の雄」長崎北陽台(長崎)だ。
昨季は花園の県予選決勝で、前半リードしながらも長崎南山に追いつかれて26-26の引き分け。抽選の末、花園出場を逃したが、九州新人大会で決勝に進出し、6大会連続10回目の選抜大会出場を決めた。
オンラインでの取材に答える品川英貴監督(長崎北陽台)
長崎北陽台を指導するのは、赴任して15年目を迎えている品川英貴監督(48歳)だ。長崎RS(ラグビースクール)、長崎北陽台のOBで、日本体育大学、東芝府中(現・東芝ブレイブルーパス東京)でプレーした名BK(バックス)だった。30歳で現役を引退後、郷里で高校の指導者となった。
「昨季の花園予選決勝では、やはり高校ラグビーは3年生の力が大事だとすごく感じた。1年通して鍛えてきたが、長崎南山の3年生に個の力があり、後半流れが悪くなった時に跳ね返す力がなかった」と悔しそうに振り返った。
昨季の中心選手が残る(写真提供:長崎北陽台ラグビー部)
ただ、昨季は1・2年生主体のチームで、今季は中心選手が10人以上残っており、昨季の悔しさをバネに、県の新人大会決勝では長崎北に、64-0で圧勝して優勝。九州新人大会(Aパート)では優勝した東福岡(福岡)に、決勝で26-38で敗れたものの、前半は12-12、後半も残り5分ごろまでは7点差という好ゲームを演じた。
品川監督は「今年は2年生も18人と多く、昨季試合に出た選手も残っていて、花園に出場できなかったこともあり意識が高く、『全国制覇』を目指すと打ち出してスタートした。まだまだ、成長しないといけないところはたくさんあるが、例年に比べて春の段階では力のあるチーム」と手応えを感じている。
長崎北陽台の持ち味は伝統的に「堅守速攻」であり、キャプテンNO8(ナンバーエイト)下田秩(2年)が、「コミュニケーションがよく取れていて、FW(フォワード)とBK(バックス)が一体となった展開ラグビーができている」と胸を張るように、今季もボールを動かすラグビーが持ち味だ。
BKは副キャプテンFB(フルバック)山口幸信を筆頭に、右足のケガから復帰したSO(スタンドオフ)田崎果、突破力の高いCTB(センター)陣は新垣勇人と、FWから転向した中田悠太(いずれも2年)、スピードと決定力のあるWTB(ウィング)は白丸暖人(兄は筑波大1年のLO智乃祐)と、梁瀬爽太(ともに1年)の2人。さらに品川監督の息子であるCTB品川鉄心(2年)と有能な選手が揃う。
今季は強力なFW(写真提供:長崎北陽台ラグビー部)
ただ、今季はNO8下田主将、U17日本代表のLO(ロック)田崎凛太郎(ともに2年)という身長180cm、体重100kgを超える2枚看板がおり、PR(プロップ)田中俊毅(1年)、PR相川謙心(2年)らも体重100kgを超え、前監督である浦敏明HC(ヘッドコーチ)が指導するFW陣にも力がある。品川監督は「FW陣も大きいし、ラインアウトを安定させてほしい」と期待を寄せる。
また、北陽台のチームカラーとして部員29人(2年生18人、1年生が11人※その他に女子マネージャー3人、女子選手も2人も在籍)の全員が、長崎県内のラグビースクール(長与YR、大村RS、諫早RS、長崎RS、時津RS)出身で、現在の高校2年生は中学3年時に長崎県選抜として全国ジュニアで準優勝を経験している世代だ。
NO8下田主将(左)とFB山口副将(長崎北陽台)
長与YR(ヤングラガーズ)出身の下田主将と、時津RS出身の山口副将は「スクールの先輩たちが、青いジャージーで活躍している姿を見て憧れた」と声を揃えた。また、長崎北陽台は長崎県内でも有数の進学校であり、スポーツ・文化推薦で入学する選手も一定数いるが、入試で落ちてしまう選手も多いという。
今年の2年生こそ、長与YRから入学した選手が多く18人もいるが、毎年、伝統的に少数精鋭である。朝練習は1時間あまりで、ウェイトトレーニングとユニット練習をFWとBKで日によって交互にやり、放課後は午後5時から1時間半ほど全体練習をしている。
品川監督は「公立の進学校で、部員が少ないことを逆に強みにするしかない。勉強をしっかりやることも北陽台のプライドの1つだし、部員が多ければいいというものでもない。少ないからこそ、全員自分がレギュラーだと当事者意識を持って頑張らないといけない」と語気を強める。
選抜大会でベスト4を目指す(写真提供:長崎北陽台ラグビー部)
下田主将も「公立高でずっと人数が少ない中で、練習時間も少ないが、量より質を大事にしている。1つ1つの練習に対する意識も高く、北陽台にしかできないラグビーができている」と言えば、山口副将は「練習時間と人数は少ないが、1回の練習でやれる量が多い。人数が少ないので自分がやらないといけないという自覚が出るのが強み」と話す。
ラグビー部も当然、一般の生徒と同じ勉強をやらなくてはならず、両立は入学当初はやはり大変のようで、山口副将は「要領がわかると両立できるようになっていった」と振り返る。
自身もOBである監督は「宿題を提出しないと、練習に参加できなかったりするので、僕から見ても厳しい環境の中でよくやっている。すべては生活から来る、グラウンド内外でどれだけ努力するかが、プレーに響くとずっと言っています」と目を細めた。
花園こそ、決勝進出経験のある長崎北陽台だが、春の選抜大会の最高成績は2回戦進出。昨季も初戦敗退したが、今季の目標はベスト4に掲げている。ただ、1回戦は昨季王者の桐蔭学園(神奈川/関東新人大会準優勝)と激突し、勝利しても2回戦では、優勝経験のある東海大大阪仰星(大阪)と、仙台育英(宮城)の勝者と対戦する。
品川監督は「九州新人大会で東福岡をターゲットにして負けたが、十分通用した部分があった。このブロックに入ってしまった、という気持ちは微塵もない。春の時期に桐蔭学園と対戦できるのはワクワク感しかない。選抜大会は花園でどれくらい上がっていけるかの指標になる」と自信をのぞかせた。
下田主将は「桐蔭学園に勝つには、規律を守ることが大前提。積極的にボールキャリーして、FWとBKの間のNO8として、チームの柱として、ひたむきに60分間走り続けたい」と言えば、山口副将は「桐蔭学園に名前負けせず、勝つことだけを考えたい。15番として攻守ともに後ろから声を出して、チームに勇気を与えたい」と意気込んでいる。
「我が身を挺してボールを生かせ」「鉄になれ」が伝統的なスローガンである長崎北陽台。今季は長崎県勢初の日本一を目標に掲げている。「全国優勝は高いハードルかもしれないが、他の強豪よりも1ヶ月はやく準備ができている」と下田主将が話すように、昨季花園に出場できなかった悔しさを糧に春から「青い旋風」を巻き起こす。
文:斉藤健仁/写真提供:長崎北陽台ラグビー部
斉藤 健仁
スポーツライター。1975年生まれ、千葉県柏市育ち。ラグビーと欧州サッカーを中心に取材・執筆。エディー・ジャパン全試合を現地で取材!ラグビー専門WEBマガジン「Rugby Japan 365」「高校生スポーツ」の記者も務める。学生時代に水泳、サッカー、テニス、ラグビー、スカッシュを経験。「エディー・ジョーンズ 4年間の軌跡」(ベースボール・マガジン社)、「ラグビー日本代表1301日間の回顧録」(カンゼン)など著書多数。≫Twitterアカウント
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